尖閣諸島問題その2(98)

習近平の第1期の5年間では、これを見る限りにおいては、尖閣諸島問題は激しくこそなれ、落ち着くことはな

い、と考えねばならない。何はともあれ常務委員には、5人もの高齢者が腰を据えており習近平がいくら頑張っ

て政治改革に取組もうとしても、無理である。だから当分は、中国尖閣問題については、強硬姿勢を貫かざ

るを得ないであろう。いくら胡錦濤派が過半数を占めたとはいえ、場合によっては人民解放軍の暴走もあるかも

しれない。当分は経済格差バブル崩壊インフレ昂進などや政治腐敗などの国内矛盾を解決方向に政治を

向わせる事にはならないと、覚悟しなければならないのであろう。それにも増して、これらの国内問題
捌け口

を外に設けるために、尖閣諸島への侵略を強めることになる筈ではないか、と考えられる。


習近平は必ずしも「反日」的でもないようなことが書かれている。しかし如何せん中国の江沢民派の人間であ

る。中国の根本的な問題を解決するためには、先ずは政治改革が必要であろうが、それに習近平を向わせるに

は取り巻きが悪すぎると言っている。そのうえ内政問題を解決するには、どうも能力的には荷が重過ぎる感じが

(小生には)するのである。だから何かあった場合には、習近平国内問題捌け口を必ずや尖閣諸島

けてくる
筈である。日本は早急に対中国対処の体制を整えなければならない。衆議院議員選挙の投票日まで、

あとわずかだ。

序に次の遠藤誉氏の分析も参考になる。彼女も福島香織氏と同じ考えのようだ。

 
 

中国国盗り物語~九つの椅子の行方を追う
新たなチャイナ・セブンに隠れた狙い-実は胡錦濤の大勝利
2012年11月29日(木)  遠藤 誉

http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20121126/240074/?mlp

 江沢民派の大勝利、胡錦濤は完全引退――。
 中国の指導者の交代について、日本のメディアは一斉にこうした見方を報じていた。
 と、書き出すと、お付き合いの長い日経ビジネスオンラインの読者の方々は次の台詞の予想がついているかもしれない。そう、私の意見はこれとは正反対。
 「完全引退と、チャイナ・ナイン(9)をチャイナ・セブン(7)に持っていくことができたことこそが、胡錦濤の大勝利」。これが私の見解だ。

Cover
『徹底予測 中国ビジネス2013』 


 中国の中枢トップ「チャイナ・セブン」「チャイナ・ナイン」(どちらも、もともと今年出版した拙著における私の造語

なのだが、最近はずいぶんと他の方にも使っていただけるようになったものだ)を見つめてきた、私の読み筋をご

紹介しよう。なお、この話は『徹底予測 中国ビジネス2013』でも論じているので、興味がおありの方はご一覧い

ただきたい。

 2012年11月15日一中全会第18回党大会第一次中央委員会全体会議)が開催され、ついに中国新指

導部のメンバーが発表された。予測通り、習近平中共中央総書記に選ばれ、中枢トップは9人から7人

った
。つまり、「チャイナ・ナイン」は「チャイナ・セブン」となった。

 「ナイン」になったのは2002年第16回党大会胡錦濤体制が誕生した時だ。前任者の江沢民が強引に

7人から9人に増やしたのである。自分の配下2人を中枢トップに入れることによって多数決議決の時に自分に

有利なように画策し、「チャイナ・ナイン」体制が形成された。

 それを元の「チャイナ・セブン」に戻し、江沢民が増やした二つの椅子とその役割の権限を低くすることに

錦濤は成功
している。また前回の記事でも述べたように、中国人民解放軍をも掌握している。

 しかし、一中全会で新しく公表された「チャイナ・セブン」の布陣は、あまりに中国人民の期待を裏切るもので

あり、政治体制改革に関しては「後退」したとしか言いようがない。人選も、胡錦濤寄りのメンバーが極端に減っ

ているのも事実だ。

 これを捉えて、江沢民派の勝利という見方も出てくるわけだが、一中全会のこの布陣をどう判断すべきなのだろ

うか?


チャイナ・セブンの顔ぶれから何が見えるか


 念のため復習すると、「チャイナ・セブン」とは「中国共産党中央委員会中共中央)政治局常務委員会委員

7名」という意味である。これまでの「チャイナ・ナイン」のうち、年齢的に留任が可能な習近平李克強以外、新

たに入った5人のメンバーは「張徳江、俞正声、劉雲山王岐山張高麗」。7つの椅子の順番である党内序列と

一中全会時点における役職および派閥は以下のようになる。

表:「チャイナ・セブン」の布陣

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 色分けにはあいまいな部分もあるが、しかしどう見ても江沢民派の色合いが濃いのは明らかだ。トップの習近

平こそ、薄熙来事件以来胡錦濤と仲が良く対立してはいないものの、完全な胡錦濤派閥(共青団派)は李克強

一人しかいない。

 11月8日、第18回党大会初日に行われた胡錦濤の演説には
政治体制改革という言葉が何度も出てきた。

貧富の格差軽減」と「党幹部の腐敗撲滅
を強化しなければ「党は滅び国も亡ぶ」とさえ言っている。

 その中国共産党のトップに立つ7人のほとんどが、なんと、古い体質を持ち、利権を追い求める集団のトップで

江沢民の流れを汲むとなると、「政治体制改革など、望みようがない。

 「
政治体制改革」や「民主化の先鋒になるであろうと中国の庶民が期待した共青団派李源潮汪洋は、

二人とも「チャイナ・セブン」から外されているその代わりに、落選と思われていた俞正声や張高麗が入った

のだ。拙著『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』で詳述したが、例えば
張高麗は東アジア一の華人

閥である李嘉誠江沢民を結びつけた石油閥の人間だ。彼はたしかにここ2,3年、天津市の経済発展を押し上

げてはいるが、しかし代表的な利権派の人間と言っていい。

 中国の一般庶民の間では
一習両李体制と称して、「習近平李克強李源潮」が核となって動かしていくで

あろう新政権に大きな希望を持っていた。2011年11月2日から始まった第18回党大会代表選びの際の民意調査

でも、李源潮や汪洋への期待は大きかった。

 それだけに「チャイナ・セブン」の布陣を見て
中国の庶民も失望しただろう。筆者もこの結果に関しては非常に

失望している。

5年後を見据えたグランドデザイン

 しかし
見るべきは5年後だ。その時点での中枢を想像してほしい。

 表からも明確に分かるように、習近平李克強以外はすべて「定年引退」となる。となると5年後には又もや「5

つの椅子」が空く。

 そこに誰が座るのか。

 原則として「25人(政治局委員)-7人(政治局常務委員、「チャイナ・セブン」)=18人(常務委員以外の政治

局委員)」から選ばれる。

 では新たに決定された政治局委員には誰がいるのか。

 まさに国民が期待している李源潮(62歳)や汪洋(57歳)、あるいは胡錦濤が10年後の総書記と心に決めてい

る意中の人・胡春華(49歳)など、共青団派が10名ほど控えている。政治局委員の中には胡錦濤の腹心である

中共中央軍事委員会副主席2名も入っている。胡錦濤を支えてきた温家宝が10年後の国務院総理として育てて

いる孫政才もその中にいる。

 これらの胡錦濤を支持する一派によって、2017年に開かれる第19回党大会の「チャイナ・セブン」のほとんどが

占められる。

 そして2022年に開かれる第20回党大会では、いよいよ胡春華総書記に選ばれる運びとなるだろう。その布

石がしっかり打たれているのが、今回の人事の正体なのだ。

 2013年3月に開催される全人代では
習近平国家主席に、李克強国務院総理になるということは確定し

ている。党規約に違反した者を取り締まる中共中央紀律検査委員会の書記もすでに決まった
王岐山だ。これ

は中央委員会委員によって選出されるので、一中全会の前に決まっている。

 残る「チャイナ・セブン」の4つの役割(国家業務分担)は「全人代全国人民代表大会)(日本の国会に相当)委

員長」、「中国人民政治協商会議全国委員会(全国政協)主席」、「国家副主席」および「国務院副総理(第一副

総理)」などがある。誰がこの4人になるか。それは今から検討されていく。

 注目すべきは「国務院副総理」は4人いるということだ。その内の1人は「第一副総理」で、現在の李克強と同

じように常務委員が担うのが通例だ。したがって「チャイナ・セブン」の誰かが担う。

 しかし残り3名は、一般に「政治局委員」の中から選ぶ。

 すなわち現時点で18人いる「政治局委員」のうち3名が
国務院副総理になるのである。その中に李源潮

入っても何もおかしくはない。

 いや、もっとすごいことが待っているかもしれない。

 つまり、「チャイナ・ナイン」時代に習近平が担ってきた
国家副主席の椅子が、李源潮に渡されるかもしれな

いのだ。その場合は、本来だったら中共中央政法委員会とともに中枢から去るはずだった中共中央精神文明建

設指導委員会主任が「チャイナ・セブン」に残り、国家副主席を政治局委員が担う形になる。異例だが、前例が

なかったわけではないので、実は可能性が高い。

 国家副主席というのは、国務院副総理のポストよりもランクが上だ。

 となると、来年3月の全人代で「国家主席、国務院総理、国家副主席」という
三頭馬車が「習近平李克強

李源潮
によって占められる可能性が出てくる。

 なんと、「一習両李」体制が健在であることになるのだ。

 実際にどうなるかは2013年3月5日(全人代開催の日)までには判明するだろう。

 もし現実となれば、胡錦濤の大勝利は疑問の余地無く証明され、胡錦濤習近平がしっかり連携していたこと

も確定する。ひいては10年後に関する「密約」を胡錦濤習近平が交わし
胡春華総書記にする筋書きも実現

する可能性がぐっと高くなるはずだ。

(続く)