尖閣諸島問題その3(19)

【10】「カイロ密談」の真実!蒋介石が『尖閣領有を断った』

 

先の論考で言及されていた ”日経ビジネスオンラインNBO)で連載させて頂いた『中国国

盗り物語』で、今年
214に「中国共産党も知っていた、蒋介石が『尖閣領有を断った』

事実
” については既にご承知のことと思うが(2013.6.15,NO.15)、今一度精査してみよう。

尚この論考については、
ワック出版の月刊誌「
WiLL」の2013年4月号にも、掲載されてい

る。全く同じ文章ではないが、掲載された題名は『
中国最大の弱点「カイロ密談」の真相

で、内容的には次のものと同じである。

 

将に『カイロ密談』は中国最大の弱点なのである。次の遠藤誉氏の論考をご一読願う。

 

中国国盗り物語~9つの椅子の行方を追う        日経ビジネスONLINE
中国共産党も知っていた、蒋介石が「尖閣領有を断った」事実

 

2013年2月14日(木)  遠藤 誉
http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130208/243504/?mlp&rt=nocnt

 中国が尖閣諸島の領土主権を主張する最大の根拠は何か。

 一つは日本が日清戦争時代(189495)に、清王朝が弱体化したことを良いことに、

「ドサクサ」にまぎれて釣魚島(尖閣諸島)を清国から
不当に奪ったというものである。

 もう一つは2012927に中国の外交部の楊潔篪部長(外相)が、国連総会で述べた

根拠である。それは「第二次世界大戦後、
カイロ宣言』と『ポツダム宣言などの国際文書

に基づいて、釣魚島を含む島嶼は、日本に占領されたその他の中国領土と共に
中国に返

還された
」というものだ。中国共産党の機関紙「人民日報」の日本語版が伝えている。この

表現は同紙のウェブサイトからダウンロードした(リンクは
こちら)。

http://j.people.com.cn/94474/7965863.html この内容そのものは当ブログの2013.5.16(5)で、既に紹介しているので 参照願う。

 ところが、この二つとも事実とは全く逆であることを証明する決定的な情報があった。

 

 しかも、その情報は中国共産党の「中国共産党新聞網」(網はこの場合ウェブサイト)、

および中国政府の新聞である新華社の「
新華網」が載せていた(リンク先参照)ことを、この

たび発見した。現在の中国政府の主張と、彼らが(と言っていいだろう)自らのウェブサイト

に載せている情報は完全に相反し、
決定的に矛盾する

中国共産党新聞網」http://cpc.people.com.cn/GB/68742/114021/114023/6771000.html (中国語)

 

「新華網」http://news.xinhuanet.com/politics/2008-01/16/content_7428667.htm (中国語)

 

 記事のタイトルは「蒋介石后悔拒収琉球群島」(蒋介石琉球群島を領有するのを拒ん

だことを後悔した
)で、発表されたのは2008116。中国の雑誌「各界」に王幸福という

人が書いたものを転載したようだ。その評論を胡平という人が隔週の雑誌「中国人权双周

刊」第86期(
2012824日-96)に出していることから、筆者はこの情報を知るに至

った。

 

 


「カイロ会談」での蒋介石ルーズベルトの密談

 

 この記事で語られているのは、19431123日から25にかけて行われた「カイロ密

」の内容とその舞台裏だ。

 

 今回は、ここに書かれている「カイロ密談」の舞台裏を読み解くことによって、尖閣問題の

解決を握るカギを模索したい。

 1943121に日本の戦後処理を巡って連合国側から「カイロ宣言」が出されたことは

周知のとおり。後のポツダム宣言のひな形はここで作られた。しかし、その宣言が出される

前に当時の中国、すなわち「中華民国」の蒋介石主席とアメリカ合衆国ルーズベルト

統領との間に交わされた機密会談を知る人は、戦中・戦後史の研究家を除けばそう多くは

ない。イギリスのチャーチル首相は参加せず、
蒋介石ルーズベルトの二人だけによる、

完全な密室会談だ。

 

 中国のウェブサイトの記事の内容は「アメリカのルーズベルト大統領が中華民国国民政

府の蒋介石主席に『日本を敗戦に追いやった後、琉球群島をすべて中華民国(中国)に

あげようと思うが、どう思うか』と何度も聞いたのに、蒋介石が断った
」というものである。

 

琉球群島を巡る権力者の生々しいやりとり

 現在の日本人にとってはルーズベルトの発言はショッキングだろう。「戦後の体制を、米

英中ソの四カ国で固めよう」と考えたルーズベルトが、中国の大国化を支援するために気

前の良い提案をした、とされるが、ここでは置く。この記事の前半、「米中で琉球群島を共同

管理しよう」という提案の部分までは一定程度知られている内容だ(※『日米戦争と戦後

日本』五百旗頭真著、講談社学術文庫などを参照)。

 

 しかし、中国のこの二つのウェブサイトに掲載された内容には「蒋介石ルーズベルト

オファーを断り、断った後に、ひどく後悔し、絶対に口外するなと部下に口止めをした
」とい

った内部情報が生々しく書いてある。この「
拒絶と後悔」および口止め」の部分は、私が知

る限りこの時点までは公になっていなかった。中国国外でも、これに注目した動きはなかっ

たようだ。

Book01

『チャイナ・ギャップ 噛み合わない日中の歯車』  

 

 今回の「カイロ密談の舞台裏」に基づいて今日の尖閣問題を読み解く試みは、何よりもこ

の情報が中国共産党と中国政府のウェブサイトに書いてある、ということがキーポイントだ。

 

 詳細は2月20日に発売される『チャイナ・ギャップ 噛み合わない日中の歯車』で述べて

いる。版元の都合を言えば発売後に公開したいところではあろうが、尖閣諸島を中心とした

東シナ海情勢が危険な水域に達し始めたので、思い切ってここで公開させていただく。

 

 以下、二つのウェブサイトに載っていた内容をご紹介する(訳は筆者)。

(続く)