尖閣諸島問題その3(41)

だからこのNHKの記事は、この会談に(影響したかどうかは知らないが)ある程度の効果

はあったかも知れない。オバマはもっと厳しく習近平に言うべきだったと感ずるが、少なくと

オバマはこの事実を弁えて、習近平と対峙したのであろう。

 

米、尖閣で自制要求 中国は領有権主張 首脳会談
産経新聞)2013年6月10日(月)15:34

 【パームスプリングズ=山本秀也、佐々木類】米カリフォルニア州の保養地で2日間にわ

たって開かれたオバマ米大統領と習近平・中国国家主席の会談は8日、金融・経済問題を

議題とする2度目の会談を終え、終了した。7日の夕食会では、中国が領有権を主張し挑

発活動を繰り返す尖閣諸島沖縄県石垣市)問題を協議。習主席が領有権を主張して

日本を牽制
(けんせい)したのに対し、オバマ大統領は対話による解決を目指すべきだ

の考えを示した。

 米ホワイトハウスのドニロン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)によると、オバマ

統領は夕食会の席上、尖閣諸島の領有権について特定の立場をとらないという従来の米

側の立場を説明。その上で「(日中)双方の当事者は事態を悪化させるのではなく、外交チ

ャンネルを通じて対話を目指すべきだ。東シナ海で(挑発的な)活動を行うべきではない

などと語った。

 一方、パームスプリングズ郊外で記者会見した中国の楊潔チ国務委員(外交担当)は「関

係方面が責任ある態度をとって挑発行為をやめ、対話を通じて妥当な問題処理と解決の

軌道に立ち戻るよう望む」と主張。日本などへの名指しは避けながらも、中国との領土交渉

に応じるよう求めた。また、習主席の発言として、国家主権と領土を断固として守るととも

に、対話を通じて問題の処理と解決を図る
との原則を米側に伝えたことを明らかにした。

 このほか、会談では、米中両国関係の重要性を確認し、対話を通じた問題解決を強調。

中国側がオバマ大統領の訪中を招請し、中国の外交、国防両閣僚の訪米を確認した。軍

事交流では、米海軍の主導する2014年の「リムパック(環太平洋合同演習)」に中国海軍

が参加することも決まった。

 個別の分野では、サイバー攻撃の防止に向けた合同での取り組みや、北朝鮮問題での

協力を確認。米国が進める「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)」交渉への参加問題も

取り上げられ、米側によると、中国は関心を表明したという。

http://news.goo.ne.jp/article/sankei/world/snk20130610001.html

 

まあ問題は日本政府の態度である。明らかに尖閣諸島は日本固有の領土であり、あれだけ

客観的に資料があるのであるから、もっともってどぎつく、大々的に、世界に「尖閣諸島

日本領である
」ことを、宣伝し広報すべきなのである。

中国は(2012年9月)27日国連総会で、「釣魚島およびその付属島嶼は古来より中国固有

の領土であり、争う余地の無い歴史的・法的根拠がある。
」と、虚偽の演説をしている。


このことは2013.5.16のNO.5で説明しているが、核を持ち国連の常任理事国で、しかも世

界第2位のGDPを有する中国が言うことは、世界は場合によっては、ご無理ご尤もと、認め

てしまう可能性がある。日本はすぐさま反論しているが、それだけでは足りない。非常に不

満である。もっともっとどきつくしっかりと客観的な資料を提示して、しつこく説明する必要が

ある。

中国は、「古来より中国の固有の領土で、歴史的・法的根拠がある。」とまでほざいている。

ならばその歴史的・法的根拠を示してもらおうではないか。しかし今まで一度も示されては

いない。あえて言うならば、「嘘でも百回述べれば真実になる」と言うことを実践しようとして

いるとしか思えないのだ。国連の場でも、堂々と嘘偽りの演説をする程なので、きっとそうで

あろう。


であるが、一応中国の言う論拠をおさらいしてみよう。これは2012.11.5の尖閣諸島問題そ

の2(82)で紹介した「福島香織」氏のチャイナゴシップス「
棚上げ論はもう限界、日本がな

すべきことは?国際社会を日本の味方に引き込む
」と言う論考で紹介しているが、その主

要な一節を次に載せよう。

 

 

米国がどさくさに紛れて日本に与えた

 では、いっそ、尖閣諸島は係争地域であると認めてしまって国際法廷に提訴するか。

人民解放軍の理論派、羅援少将は意外なことに「国際法廷への提訴」も支持している。多く

の日本人は国際法廷で絶対勝てると思っているかもしれない。私も日本側の主張の方に

理があると思っている。だが、世界は腹黒く、正義は欺瞞に満ちている。100パーセント、

必ず勝つ保障はない。正直、外交力や国際社会における存在感や影響力で結果が変わる

ことはあるのではないかと思う。

 ところで、中国の釣魚島(尖閣諸島領有権主張の論拠を日本人はきちんと知っているだ

ろうか。簡単におさらいしておくと。

・1582年(明朝)から島は中国の版図にはいり福建省管轄となり清朝末まで島の領有権は

明確であった。日本海防論者の林子平が1785年の「三国通覧図説」で中国大陸の一部と

して色分けしている。

・1879年に日本が琉球を併呑したさい、琉球諸島は36の島があると中日双方で確認した

が、釣魚島は含まれていない。

・1885年日本が釣魚島を拡張目標とし、清朝が反対するも効果なく、1894年の甲午海戦

日清戦争)で清朝が敗北。1895年に島は強行占領された。不平等な馬関条約(下関条

約)で台湾とその付属島嶼を日本に割譲される。

・1900年に日本政府が釣魚島を尖閣諸島と改名。

・1945年に日本敗戦、台湾島が祖国に戻り、台湾および周辺島嶼が中国に返還される。

このとき釣魚島は含まれなかった。

・1951年のサンフランシスコ平和条約で、日本政府は主権を取り戻すが、釣魚島を含む沖

縄は米国の戦略的管理下におかれた。このため釣魚島は米軍の射撃場として管理される。

・1971年、沖縄返還協定。この時、釣魚島も日本に「与えられる」。中国は抗議声明を出

し、台湾愛国青年および海外華人が釣魚島防衛運動を展開。米国は釣魚島の行政管轄

権は日本に委譲するが、これは主権と関係ない、紛争は当事者で解決したまえ、というあ

いまいな態度を貫いた。

・1972年、中日国交正常化の際、島の領有問題について、時期が熟した時に解決するとの

一点で合意。

・1978年、中日平和友好条約締結の際、鄧小平氏が、棚上げ論を提唱。子孫に解決を託す。

1992年日本青年社の灯台建設(1990年)を受け、島領有問題が再燃。中国は「領海及

び隣接区法
」を制定、釣魚島は中国に属すると宣言


 という流れになる。中国に言わせれば、清朝末期のどさくさにまぎれて日本が島を盗ん

だ。そして第二次大戦の敗戦処理過程で米国がどさくさに紛れて尖閣諸島を日本に「与

えた」。


 ちなみに、カイロ宣言のとき、蒋介石ルーズベルトに沖縄を管理しないかといわれて断

ったというエピソードが2008年1月以降、中国のメディアで何度も紹介されている。


 こうやって歴史をたどると、尖閣問題は米国が恣意的に日中間に残した対立と見えなくも

ないし、実際中国メディアには、今に至るまでの尖閣問題は米国が黒幕という論評も散見

する。羅少将は、国際法廷の相手は「日米2国」としている。
日本が国際法廷で確実に勝つ

には、
米国の真意や国際世論の行方を見極める必要はある。

(続く)