なぜ、日本の評判が落ちないのか
朝鮮日報にヤン・サンフンという論説委員がいます。この人のコラム「世界の人々は日本
がいい、と言う」(5月31日付)が印象的でした。
「どの国が国際社会に肯定的な影響を及ぼしているか」と世界の人に聞く英BBCのアン
ケートがあります。これを引用し、日本が世界から高い評価を受けていると指摘した記事で
した。ポイントは以下です。
・日本の政治家の破廉恥な過去の否定により、日本の立場が悪くなる、と(韓国人は)考
えた。しかし、そうはならなかった。
・それは(日本の被害者と主張する)韓国が日本ほど強くもなく、世界から尊敬されてもいな
いからだ。
韓国が尊敬されれば韓国の主張が通って日本の地位を落とすことができる――か、どう
かには疑問が残ります。
ただ、この記事からは「BBCアンケートで日本の人気が落ちるのを見たい」、「何とかして
世界での日本のイメージを悪くしたい」との韓国人の熱望が伝わって来ます。筆者は、そん
な韓国人を冷ややかに見ていると思われますが。
韓国は民主化もしたし、経済成長にも成功した。G20も開催した。それでは不十分なのでし
ょうか。
鈴置:他人に「韓国の栄光」を認めてもらうことが必須なのです。「韓国が日本の上にある」と
世界が認めない限り、満足できないのだと思います。
キムチはワンダフル!
韓国を訪問した世界の著名人は必ず「キムチが好きか」、「韓国が素晴らしい国と思う
か」、「日本は反省が足りないと思わないか」との質問を韓国メディアから浴びせられ、
「YES」と答えることが求められます。
韓国の中には、こうした質問をすること自体を恥ずかしいと考える人も出てきました。
でも、普通の韓国人はそうは思わないのでしょう、韓国紙には「キムチはワンダフル!」、
「韓国は美しい国だ」、「日本は反省しろ」といった「世界の声」が載り続けています。
確かに、韓国紙には「韓国が日本より上にいる」ことを何とか証明せねばならない、という
熱情があふれています。でもなぜ、そこまで上下にこだわるのでしょうか。他の国では見ら
れない特異な現象です。
鈴置:韓国の国教たる儒教では上下の関係――つまり、どちらが上か、が極めて重要なの
です。そして韓国はそもそも日本より上にある国なので、それをはっきりさせねばならない
のです。
ある韓国儒教の専門家は韓国人の日本に対する深層心理を「文明を日本に与えた韓国
は兄だ。日本はいつまでたっても弟で、兄にはなれない」と説明しています(注3)。
(注3)『朝鮮からみた華夷思想 』(山内弘一、2003年)4ページ。
「反日」から「卑日」へ
「韓国が日本より上にあるのに、まだそれが理解されていない」との思い――。だから訪
韓した外国人に対し韓国メディアは「日本は卑しい存在だ」と訴えて談話を引き出し、大統領
は世界を巡りながら「日本の劣後性」を宣伝して回るのでしょう。
最近の韓国の行動を「反日」ではなく「卑日」と私が呼ぶのはこのためです。「反日」は下
から目線の恨み節。一方、「卑日」は上から目線の、世界に向けたプロパガンダです。
この宣伝活動は「韓国が日本よりも上」と世界が認識した、と韓国人が信じるまで続くと
思います。
「卑日」をやって韓国の地位が上がるとも思えないし、韓国にとっても格好いい行動ではない
と思うのですが。
鈴置:何度も申し上げる通り、それは韓国社会では正しい行動です。例えば、夫婦喧嘩し
た奥さんが通りに出て大声で亭主の悪口を叫ぶ。亭主は困って奥さんに譲歩する。この
際、奥さんが恥ずかしい行動をしたとは世間は見ないのです。
夫婦に限りません。政府に要求が入れられなかった野党はしばしば街頭行動に繰り出し
ます。国会前の広場などにテントを張って、党首自らそこに「籠城」します。
労働組合も、経営側というよりも「世間」に訴えるのが目的で籠城します。韓国社会では
「籠城」すれば同情が集まり、相当無理な要求でも通ることが多いのです。
「日韓」より「韓国」の特殊性
韓国国内ではこうしたノリで勝つのが普通ですから、日本に対しても同じ行動をとるのは
当然です。
韓国人や、日本の韓国専門家は日韓関係の悪さを説明する時に「両国関係の特殊性」ば
かりを強調してきました。しかし「韓国の特殊性」を見落とすと物事を見誤ります。
例えば、サッカーのワールドカップの期間中に、必ず韓国の一般紙に登場する見出しがあ
ります。「サッカーしかできない●●に、サッカーも経済も得意な韓国が教えてやる」です。
●●は当日、韓国と対戦する相手で、中南米の国であることが多い。記事を読みますと別段
、そんなくだりはない。典型的な「空見出し」で、日本の新聞は絶対に付けません。
そもそも、こんな上から目線の、品のない見出しは日本では――普通の国なら大問題にな
ります。中国のメディアだって付けないでしょう。
ところが、韓国人に「あの見出しはまずくないか」と聞いても、多くの人の反応が「どこが
?」です。「●●国の経済は非常に悪い。それを指摘して何が悪い」と反論して来る人もいます。
韓国人の頭の中には「国の序列」がある。そして「上の国」たる韓国が「下の国」の●●を
見下し、それを天下に吹聴するのは当然、との意識があるのです。
弱いから日本は譲歩した
確かに「韓国の特殊性」を理解しないと、もう、まずいですね。ワールドカップで思いだした
のですが、2002年の共催で日韓関係はぐんと良くなったと考えていました。
鈴置:それは日本側の思い込みに過ぎません。日本人は「韓国に譲歩すれば相手もそれを
くんでくれ、うまくいく」と考えたのでしょうけど、それは全くの勘違いでした。
韓国では「日本は弱くなった。だから譲歩して共同開催を呑んだ」と受け止めた人が多か
ったのです。韓国は「強い人は譲歩しない社会」だからです。
その後、韓国には、日本には強く出ればいい、という空気が広がりました。「我が国は、五
輪でも万博でも何でも日本の後に開催する運命にある」と韓国人は思っていた。
しかし、ワールドカップでは「日本が先にやろうとしたのを邪魔したら、何と共催にこぎつけ
ることができた」実績ができたからです。
ことに、1997年の経済危機で、韓国はワールドカップ共催を返上せねばならぬかと焦った
時期がありました。それが、経済危機を乗り越えて開催し、なおかつ競技では日本より上の
4位になった。
「もう、日本は怖くないからな」
このコラムについて
早読み 深読み 朝鮮半島
朝鮮半島情勢を軸に、アジアのこれからを読み解いていくコラム。著者は日本経
済新聞の編集委員。朝鮮半島の将来を予測したシナリオ的小説『朝鮮半島
201Z年』を刊行している。その中で登場人物に「しかし今、韓国研究は面白いで
しょう。中国が軸となってモノゴトが動くようになったので、皆、中国をカバーした
がる。だけど、日本の風上にある韓国を観察することで“中国台風”の進路や強
さ、被害をいち早く予想できる」と語らせている。http://business.nikkeibp.co.jp/article/report/20130924/253788/?mlm
このころから明らかに韓国人の対日姿勢が変化しました。例えば当時、突然、韓国人か
ら「もう、日本は怖くないからな」と言われた日本人留学生もいます。
この言葉が象徴するのは「これからは遠慮せず、言いたいことは言うし、やりたいことは
やるぞ」ということでしょう。もう、10年以上もたっているのに、こうした変化を知らないで韓
国に臨む人がいるのは驚きです。
サムスン電子、現代自動車の躍進と、日本経済の低迷も韓国人の自信を大きく強化しまし
たしね。
鈴置:1995年ごろからトヨタ自動車の利益をサムスン電子が抜いたりしていました。韓国の
経済人が自信を持って「日本には追いつけるし、追い越せる」と言うのを私が聞いたのが
1999年でした。
日韓関係は小手先のことでは改善しない、ということですね。
朝鮮人は馬鹿で頓馬なので、「朝鮮・韓国が日本より上に位置している」と思いたくて仕方
が無いらしい。しかし現実は、全くその逆で、「韓国が、はるかに日本より下に位置している」
と言う現実に、相当苛立っているのである。
(続く)