次世代エコカー・本命は?(13)

(かなり長い論考となりますのでご容赦を。)

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PHEV用に設置した充電器。立派に見えるけど、容量は実は3kWでしかない。ケーブルの太さから見れば当然だけれど。  


C先生:日本の200Vのコンセントだとそんなものだ。モデルSの説明に使われている200Vのコンセントは米国版か??
 実際、プリウスPHVは、ハイブリッドモードで走っている状態から上の写真の充電器でフル充電をすると、3.5kWhぐらいの電力量が入る。所要時間だけれど、3kWhぐらいまではほぼ理論値で速いのだけれど、満充電に近くなると、かなり慎重に充電をするので、1時間45分といったところだ。これで、季節にもよるが、平均的に21kmちょっと走ることができる。

A君:それにしても、7倍の違いは誤差(85km/hr÷12km/hr=7.08)とは呼べないですね。20kWなどという電力を供給できるコンセントがあるとは思えないのだけれど。
 ということでTeslaWebサイトを調べました。米国のコンセントの規格が多数あって、こんなことになっていました。


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図1 米国のコンセントの規格  


B君:なるほど。NEMA14-50というコンセントは、キャンピングカーなどに使われるもので、240V-40Aで10kWも取れるのだ。待てよ、それでも20kWは取れないが。

A君:その通りですね。テスラがオプションで提供しているデュアル・チャージャーというものを付けケーブルを2本つなげば、合計20kWということのようです。

B君:これが日経の「充電時間:200Vのコンセントでは、1時間で85km走行分を充電」の実態

A君:どう考えても、日経のこの記者は自分自身で何も調べていない。いや、取材した内容に疑問も持てないのかもしれない。あるいは、聞いたことを正確に伝達しているから、「記事としては正確だ」と主張する典型的文系の記者か。そろそろ、読者に誤解を与えないような情報伝達のみを正確な記事と定義しなおす時代になったと思います。それでやっと、偽情報が溢れるインターネットと新聞との差別化が可能になって、新聞というメディアの生存のための必須条件だと思いますね。

C先生:電気自動車が売れるかどうか。それは、いつも議論しているように、その車で、年に1回の家族揃っての遠出、特に、暮れの渋滞の中で里帰りをする気になるかどうか。その根拠は、普段1人で乗っているのに、ワンボックスを買う家庭が多いこと。モデルSは、5人乗りではあるけれど、オプションで5+2にすることが可能らしい。2はトランクの場所に後ろ向きのチャイルド用シートが付けられるとのことなので、乗車定員的には条件を満たすけど。

A君:車の値段からみれば、ユーザの層は全く違いますね。まあ、それは、良いでしょう。

B君:高い方の85kWhモデルの実走行距離を320km(=4km/kWh×85kWh)と推定した。

A君:冷房は比較的効率が高いので良いのですが、暖房を入れた瞬間に、日産リーフもかなり航続距離が減ると言われていますね。

B君:暖房はどうやるのだろうか。調べても分からない。厳冬下の暖房をヒートポンプでやるのは結構厳しい。まだ、電気ヒーターを使う方がまし。

A君:しかし、空気を電気ヒーターで暖めるというのは、簡単なのですが、相当な電力消費になってしまう。

B君:テスラ社のページを色々と調べてみた。そして、見つけた。
http://www.teslamotors.com/it_CH/forum/forums/climateheating-system-cold-weather
 
これによれば、ヒートポンプ型のエアコン暖房らしい。しかも、シートヒーターも使えるようだ。

A君:寒くなれば、当然、バッテリーが弱ってきて、航続距離も下がりますね。

B君:モデルSのレビューの記事がある。
http://www.greencarreports.com/news/1077706_2012-tesla-model-s-will-winter-weather-ruin-its-range
 まず、この記者がもっている情報では、シボレー・ボルト、日産リーフは、冬になると40%ぐらい航続距離が下がる。
 もしも0℃付近以下になると、25%ぐらい航続距離が短くなるという推測が正しいという記事があった。
http://www.teslamotors.com/it_CH/forum/forums/model-s-performance-winter-canada

A君:大型で4km/kWh程度と電費があまり良くないモデルSですけど、冷蔵庫は大きくなるほど消費電力が下がるという特性があるので、車の暖房についても表面積と体積の関係は同様だろうから、暖房の影響は小型の車よりも少ないのかもしれない。

B君:それにしても25%減れば、240kmが最長の航続距離だということになる。急速充電はフル充電しないだろうから、この80%で192kmになる。山形までにやはり2回の充電が必要。

A君:いまさらですが、そう言えば、米国EPAは、車の燃費を発表していますよね。電気自動車についてもあるのでしょうか。調べてみましょう。ありました。これです。
http://www.fueleconomy.gov/feg/Find.do?action=sbs&id=32557
 数字は、89マイル/Geですね。Geというのは、電気ガロンで、33.7kWhのことのようです。4.23km/kWh(=89mile×1.6km÷33.7kWh)となって、我々の推論4km/kWhとそれほど変わらないですね。

B君:EPAが公表しているの車の燃費は、日本のJC08などと違って、その気になれば出すことができる実用燃費だ。いつだったかヒュンダイソナタの燃費を過大に発表したのがバレタが、このEPAの燃費は、かなり正確な実用燃費だと言える。

A君:いつもの”仮想ケース”は、暮に東京から山形まで里帰りをする。大体400km。1回のフル充電で可能なら行けるかもしれないけれど、モデルSの場合には2回の充電(60kWhタイプで240km航続距離のため)かなり微妙な性能で不安が大きい
(続く)