次世代エコカー・本命は?(20)

短期的に見ると、車に限らず燃料電池の普及には水素スタンドの普及が必須である。これも燃料電池(車)が普及しないと、普及しないし、水素スタンドが普及しなければ燃料電池(車)も普及しない、と言う事だろう。お互いが影響しあうことになる。

まあ、燃料電池としては、車だけに使用されるものではない。現在家庭用燃料電池なども市販されている。そんなこともあり、水素社会の到来には各種の技術革新や社会改革と相当の時間が必要となろう。

 

今の自動車だって1886年にベンツが3輪の、ダイムラーが4輪の自動車を開発してから、1908年にヘンリー・フォードT型フォードを発表するまででも、22年も掛っている。しかしT型フォードの累計100万台突破は1915年であるので、その後10年もかからずに100万台には達している。

 

車だからこんな短さで発展したきたとも言えるが、こと化学反応が主となるFCVについては、こんなものではないのではないのかな。

 

だから燃料電池車の普及についても、それ相応の時間はかかって当たり前であろう。

何もすぐにでも燃料電池車が売れ出すとは、トヨタと言えども思ってはいまい。

 

自動車は、馬車の動力である馬をガソリンエンジンと言う内燃機関に取って代わらせたものである。燃料電池車はそのガソリンエンジン燃料電池という化学反応式の発電装置に代えたものである。

 

夫々動力源となるものが、飼(か)い葉(家畜に食べさせる草)から石油に変わり、そして石油から水素に変わろうとしている。これは一種の技術革新イノベーションである。

 

ワットが蒸気機関を発明したのが1765、そして内燃機関としては、1859にフランス人エティエンヌ・ルノワールが電気式点火装置を備えた単気筒のストローク内燃機関を試作したのが最初。4ストロールサイクルエンジン1863にフランス人アルフォンス・ボー・ドゥ・ロシャスが発明している。このときの燃料は水を電気分解した水素ガスが使われた。このエンジンでルノワールが2号目となる自動車を製作して9kmの距離を往復している(とWikipediaに記載されている)。

 

更に洗練されて4サイクル内燃機関を発明することになるドイツ人ニコラウス・アウグスト・オットーは、1864には、2ストロークサイクルの内燃機関製造会社を作っている(現在のドイツAGである、Deutz AG ディーゼルエンジンとガスエンジンの製造メーカー)。この内燃機関はワットの蒸気機関に代わって多くの工場で使われたと言う。その後ゴットリーブ・ダイムラーヴィルヘルム・マイバッハも加わり1876、オットーが4サイクル内燃機関を発明している。これが「オットー・サイクル」と呼ばれる所以である。1884にオットーは低圧電磁点火装置を導入した4ストロークサイクルの内燃機関を製作する。これが液体の燃料を使う事が出来た最初の4ストロークサイクルエンジンである。

 

ダイムラーマイバッハ1885年にオットーサイクルエンジンを積んだオートバイを作り特許もとっている。そして1886に馬車にこのエンジンを載せた車を作っている。1890年二人はドイツAGを退社しダイムラーエンジン会社を設立している。

 

もう1人カール・ベンツ1883に据置型のガスエンジン製造会社を立ち上げ、そして自動車好きだったために1885年に自力走行できる3輪自動車を作り、1886に特許を取っている。そのため自動車の発明者はカール・ベンツと言われている。

 

ちなみに、その後ダイムラー亡き後1926にベンツのガスエンジン製造会社とダイムラーエンジン会社が合併して、ダイムラー・ベンツとなり現在のメルセデス・ベンツとなっているのである。

 

このメルセデス・ベンツが、最初の燃料電池車を走らせている。Aクラスにメタノールを改質して水素を取り出して燃料電池に供給するFCVNECAR3」を、1997に発表しているのである。その後2000年にはもっと洗練された「NECAR5」を発表している。ほぼ実用化に近い車だったようだが未だに市販化の発表が無いところを見ると、いまだ未完といったところか。なんといっても化学反応プラントといった装置なので、アクセルペダルを踏んでも直ぐには反応が返ってこないと言った問題(2次バッテリーを積んでいない)はまだ解決されていないのかも知れない。

 

そのためメルセデス・ベンツ2009年に「Bクラス F-CELL」と言うリチウムイオンバッテリーを搭載した燃料電池車を発表している。(http://jp.autoblog.com/2009/09/01/b-f-cell-2010/

電気自動車としては、2010年にAクラスにリチウムイオン・バッテリーを搭載したEVE-CELL」を発表している。ベンツも全方位式だ。(http://compacteleauto.blogspot.jp/2010/10/blog-post_27.html

 

このように内燃機関1765年のワットから1884年のオットーの4サイクルエンジンまで110の歳月が経っている。そしてその2年後の1886年の自動車が発明されている。ガソリンエンジンが物になるまで、およそ一世紀以上の時間が流れたのである。


このような自動車の歴史を鑑みると、20141215トヨタが始めて燃料電池車ミライを一般販売を開始するからと言って、すぐさま水素社会が来ると言うわけでもないし、また反対に水素インフラが整備されてゆくものでもない。だから燃料電池車なんぞを売り出してどうするのだとか、おいそれと水素ステーションなんぞは整備されるものではないのではとか、水素の製造にはコストなどが掛りすぎて割に合わないのでないかと言った議論は、これを契機とした数十年の技術革新の進展が解決してゆくものであろう。この「MIRAI」が技術革新の契機となって、この環境優先の社会で、水素社会への流れを強めてゆくことであろう。但し道は遠いが、それが「未来MIRAI」なのであろう。

 

とは言っても、水素供給インフラの整備がどの様に進展するかは、非常に大事な話である。一寸古いが次の記事を見て欲しい。

 

究極の燃料電池車、コスト課題 水素ステーション整備急ぐ

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フジサンケイビジネスアイ20131130日(土)08:10(フジサンケイビジネスアイ)  

 「究極のエコカー」と呼ばれる燃料電池車(FCV)の普及に向け、最大の課題となる水素ステーションの整備が動き出した。自動車各社が量産車を投入する2015年には首都圏と中京、関西、福岡の4大都市圏を中心に全国で100カ所程度が建設される見通しだ。

もっとも、3月末現在3万6000カ所にのぼるガソリンスタンド(GS)には遠く及ばず、FCVの本格普及には関連業界が30年をめどとする5000カ所の早期実現が欠かせない。現状では水素供給設備の導入負担は重く、関連各社はコストダウンを急いでいる。

 

コスト削減急務

 

 「インフラの整備には電気自動車よりもコストがかかり2020年までは、どのメーカーも量販できず普及は難しいだろう」。

日産自動車カルロス・ゴーン社長(201311)20日の記者会見でこう述べ、当面はFCVよりも電気自動車(EV)環境対応車の柱とする考えを強調した。

 実際、水素ステーション設置費3億~5億円にのぼり、1億5000万円程度とされる欧州の一部より割高で、1億円弱で済む国内のGSとも開きがある。日本では水素関連の安全規制が厳しく、その分だけコストが膨らんでいるのが現状だ。

 建設費が割高にならざるを得ない事情もある。車両への水素供給が3分で済む規格の下では「FCVに積む水素タンクには700気圧の圧縮水素が充填(じゅうてん)され、ステーション側は820気圧になる計画」(経済産業省高圧ガス保安室の名倉和広技術係長)。820気圧は8200メートルの深海に相当する高圧のため、タンクに使う鋼材や関連機器のコストはかさみがちだ。

 これに対し、水素用の圧縮機や、圧縮機に使う特殊鋼を手掛ける神戸製鋼所は、エンジニアリング部門を持つ強みを生かし「ステーションの使い勝手などを検証しながら、機器や施設全体をコンパクトにすることも進めたい」(営業企画部水素・燃料電池推進プロジェクトの三浦真一担当次長)と意欲をみせる。

経産省も、ステーションに使う鋼材や天然ガススタンドと併設する際の距離などをめぐる規制の見直しに取り組み、コスト削減の後押しを目指す。

 

実験でノウハウ蓄積


 エネルギー各社は当面の目標とする100カ所に向け、13年度中に19カ所を整備し、さらに14、15年度に各40カ所程度の設置を計画している。

JX日鉱日石エネルギーは4月から5月にかけ、ガソリンスタンドと一体型のスタンドを神奈川県海老名市と、名古屋市緑区に相次いで開設。

それぞれ専用トレーラーで運んだ水素をボンベに貯蔵する方式と、ステーションに水素製造装置を設けて液化石油(LP)ガスから水素を作る方式を採用した。実証実験を通じてノウハウを蓄積し、今後の展開に生かす構えだ。

 東京ガスは、天然ガススタンドと併設するタイプ水素ステーションを東京都練馬区と、さいたま市に建設する計画を持つ。担当者は「人員が共通化でき、無駄な人件費を省くことができる」と狙いを話す。

 LPガス最大手の岩谷産業は「15年までに全国20カ所水素ステーションの建設を目指す」といい、圧縮機の内製化でコスト削減を図る構えだ。また、産業ガス大手の大陽日酸は費用を抑えた機器を取り入れた一体型ユニットの水素ステーションなどで建設費の半減を目指す。

FCVは米欧でも導入の動きが高まりつつあり、水素ステーションの国際市場もにらんで、関連業界の開発競争は今後激しくなりそうだ。(兼松康、宇野貴文)

http://www.sankeibiz.jp/business/news/131130/bsc1311300810011-n1.htm

(続く)