追記1: Well-to-Wheel評価 – JHFCとトヨタ自動車の効率値を比較する
一次エネルギーとして天然ガスのみを用いた場合の次世代自動車のWell-to-Wheel(総合)効率の比較評価としては、本文に記載のJHFCの評価のほかに、総合資源エネルギー調査会・第28回基本問題委員会(2012.7.5)にトヨタ自動車が提出・説明した資料の中の図(p.12、下記転載)がある。 ↓
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http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1195971/www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol06_01/special/p12.html
この図では、燃料電池車(FCV)と電気自動車(EV)の総合効率の値がJHFCの評価結果と全く逆になっている。
すなわち、JHFCの評価結果(10.15モードの場合)ではEVの総合効率がFCVの約1.3倍となるのに対し、トヨタ自動車の資料では逆にFCVの総合効率がEVの約1.3倍となっている。
(この”水素とFCV”の総合効率は、水素56%とFCV60%の積となる筈なのであるが、それなら33.6%とならなければならないものが36%となっているが、これはどういう訳であろうか?正しくは34%ではないのかな。)
トヨタ自動車によるCNGV-HV、FCV、EVの「燃料の効率」、「車の効率」、「総合効率」の値とJHFCによるこれらの効率の値を比較して下の表に示す。
(注、FCVトヨタの総合効率は36%ではなくて、33.6%で34%ではないのか?)
この表のJHFC欄の効率値はJHFC報告書に記載されている評価結果から次のようにして求めた。
① JHFCの圧縮天然ガスハイブリッド車(CNG-HV)の値はJHFCの評価データを参考に推算(推算方法は本文の「一次エネルギーを天然ガスのみに固定した場合」に記載)した値から算出
② JHFCのTank-to-Wheel評価値はMJ/kmで示されているので、効率値にするためにトヨタ自動車のCNG-HVの「車の効率」34%を基準としてJHFCのMJ/km評価値 (10・15モード)から算出
③ 「総合効率」欄のJHFCの値はJHFCの評価値から算出した「燃料の効率」と「車の効率」の積として計算
この表から、FCVとEVの総合効率におけるトヨタ自動車の試算とJHFCの評価の間の差は、それを構成する「燃料の効率」と「車の効率」における以下に示すような両者の評価値の差に起因していると推測する。
① FCVの「車の効率」はJHFCの49%に対してトヨタ自動車は60%になっている。トヨタ自動車のFCVの「車の効率」の60%の値は、燃料電池での発電効率とそれ以降のインバーター・モーターなどの効率を含んだものとしては大きい値である。インバーター・モーターなどの効率から逆算すると燃料電池の発電効率は70%以上になり、現状の燃料電池効率がトップランナーでも60%程度(LHV)なのに対して大きな値を想定している。
② EVの「燃料の効率」はJHFCの40%に対してトヨタ自動車は32%になっている。トヨタ自動車のEVの「燃料の効率」32%の値は、天然ガスの「採掘・液化・運搬」効率85%、「送電」効率95%および「充電」効率86%を用いて「火力発電」の発電効率を逆算すると46%となる。この46%の値は現在発電効率57%(LHV、送電端)の天然ガス火力発電プラントが既に導入されているのに対して小さい値を想定している。
③ 上記の差に加えて、FCVの「燃料の効率」とEVの「車の効率」における其々約6%の差が両者の評価の差を大きくする方向に働いて、「総合効率」がJHFCの「EV:FCV=1.31:1」に対してトヨタ自動車の「EV:FCV=1:1.38」という全く逆の評価になったと推測する。
同じ天然ガス起源の燃料電池車とハイブリッド車・電気自動車の総合効率評価値にこのような大きな差があることは議論・憶測を呼ぶので、試算・評価の条件や根拠などが公開されていることが望ましい。
(2013.10.26)
関連ブログ:
●『「水素社会」は来るか? 今後の水素エネルギー利用の方向』
●『低温ガソリンSOFCで自動車が変わる?』
●『自動車メーカーによる燃料電池車の国際共同開発、「バスに乗らない」フォルクスワーゲン社』
http://hori.way-nifty.com/synthesist/2013/08/jhfcco2-854a.html
なお現在ではこの論考に、次のものが挿入されているので、序に紹介しておこう。
(続く)