次世代エコカー・本命は?(43)

パナソニックがEV電池工場 テスラと共同で米に建設へ

近藤郷平

2014740716

 パナソニックは、電気自動車(EV)向け事業を強化するため、米テスラ・モーターズと共同で米国に大規模EV電池工場を建設する方針を決めた。7月中にも同社と契約し、パナソニックの投資額は200億円以上になる見通し。テスラとの共同工場で、自動車向け電池事業を5年後に3倍以上に伸ばす計画だ。

 テスラの新工場は年内に米国内で建設を開始。2017年に電池の生産を始め、20年に全面稼働させて年50万台分を生産する。テスラは新工場に最大50億ドル(約5千億円)を投じる計画で、電池材料メーカーなどに工場建設への参加を打診。パナソニックはその柱との位置づけだ。

 パナソニックは、テスラが12年に量産を始めたEV「モデルS」(米国で約7万ドル~)に、パソコンでも使われる円筒形リチウムイオン電池大阪市の住之江工場などから供給。14年3月期、リチウムイオン電池部門が黒字転換する原動力になった。モデルSの世界販売は今年、前年比55%増の3万5千台が見込まれ、来年には多目的スポーツ車モデルX」発売を控えており、共同工場でさらなる納入増を図る。

http://www.asahi.com/articles/ASG7244C2G72PLFA001.html


 

馬鹿電池」と呼ばれようが、石油がなくなるか相当高価になってからでは遅いのである。またいつまでもCO2を排出している余裕はないのである。地球環境が坂道を転がり落ちるように悪化してゆく、その時に果たして電気は、何から作られるのであろうか。もちろん再生可能エネルギーも大事ではあるが、今のうちに安定的に電力を供給する術を準備をしておかなくてはならないのである。だから「究極のエコカーなのである。トヨタ燃料電池車「ミライ」を一般販売したお陰で、その準備が始まるのである。

 

これはすばらしい事だと、思わなくてはならない。電気自動車は電気を消費するだけで作り出すことはしない、しかし燃料電池(車)は水素(と酸素)で電気を作り出すことが出来るのである。しかもCO2フリーの可能性があるのである。再生可能エネルギーも重要ではあるが、電力を作り出す事の出来る燃料電池はもっと可能性が感じられる。だから水素社会と言うのであり、すばらしいのである。

 

似たよう論調があったので掲載しておく。ここでも画期的なイノベーションに言及している。


トヨタの「MIRAI」は未来をひらくか 編集委員 後藤康浩
2015/1/11 7:00
ニュースソース 日本経済新聞 電子版

f:id:altairposeidon:20150128001203j:plainトヨタ自動車燃料電池車「MIRAI(ミライ)」(東京都江東区

 水素を燃料とする燃料電池車の世界初の一般向け市販車が発売されました。トヨタ自動車の「MIRAI(ミライ)」です。自動車は過去20年近くの間で大きな変革期に入っています。なかでも最も大きな変化は、動力を生み出す部分で起きています。1997年にトヨタが発売したハイブリッド車はエンジンと電動モーターを組み合わせて最適化して走る仕組みで、ブレーキをかけたときに失われるエネルギーの回収・再利用も含め自動車の効率を劇的に改善しました。トヨタとホンダがハイブリッド車では先行しました。さらにエンジンを持たず、モーターだけで走る電気自動車が商品化されました。三菱自動車富士重工業が軽自動車で実用化し、日産自動車が本格セダン「リーフ」を世界で発売しました。米国では電動スポーツカーでのし上がったテスラ・モーターズもあります。中間的な車では、ハイブリッド車でありながら外部の電源で充電もできるプラグインハイブリッド車もあります。

「C」と「H」の組み合わせ

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後藤康浩(ごとう・やすひろ) 84日本経済新聞社入社。バーレーン駐在、欧州総局(ロンドン)駐在、中国総局(北京)駐在、編集委員兼論説委員、アジア部長などを経て現職。アジアの産業・経済やモノづくり論、資源・エネルギー論などが専門。亜細亜大学大学院で「アジア産業論」を教える。著書に「強い工場」「勝つ工場」「アジア力」「ネクストアジア」など。

 

 こうした動力の変化をさらに推し進めるのが燃料電池です。燃料電池は一般の住宅で都市ガスや灯油などから水素を取り出し、空気中の酸素と反応させて発電し、排熱もお湯として利用する「エネファーム」がこの数年、勢いよく普及しています。発電する仕組みは燃料電池車も変わりありませんが、車のうえで都市ガスや灯油から水素をつくるのが難しいため、燃料電池車はあらかじめつくった水素を積んで、燃料にします。電気自動車はバッテリーに電気としてエネルギーをためて走りますが、燃料電池車は水素をタンクに積んで走り、水素と酸素を車の上で反応させて発電してモーターで走るわけです。

 従来のエンジンだけの自動車はガソリンや天然ガスを燃料にしますが、燃料を構成する原子で考えれば、炭素の「C」水素の「H」の組み合わせです。石油やガスが「炭化水素」と呼ばれる理由です。そのなかで水素の「H」だけで走るのが「MIRAI」のような燃料電池電気だけで走るのが電気自動車ですが、電気の”原料”には発電所で使う天然ガスなどの「C」と「H」が込められています。つまり、最近の自動車動力の進化は実は元は同じものの使い方の違いにすぎません。食べ物にたとえて言えば、お店が「おコメ」で売るか、「炊いた白米」で売るか、「おにぎり」で売るかといった違いなのです。

燃料供給に大きな弱み

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JX日鉱日石エネルギーが開設した水素ステーション(神奈川県海老名市)=共同

 さて、売り出された「MIRAI」は700万円を超えるような”高級車”です。しかも燃料の水素を補給できる拠点はわずかしかなく、かなりの期間は、実用上はとても不便な車になるでしょう。官民あげて、水素ステーションを増やす計画ですが、今、全国に3万5000カ所もあるガソリンスタンドのようにはならないでしょう。ガソリンスタンドは30年先、50年先もガソリンや軽油を売り続けなければならないので、水素ステーションに簡単に商売替えはできませんし、水素だけではなかなか商売にはなりません。電気自動車の充電は実はお店やオフィスの駐車場、家庭など様々な場所で可能で、電気そのものは全国どこでも簡単に手に入ります。将来的には非接触方式の充電で、道路の路面から電気を供給するアイデアもあります。燃料電池車は現状では燃料の供給に大きな弱みを抱えています。

 その点は世界で売ることを考えると、さらに大きな課題になります。今、世界で自動車販売が伸びているのは新興国と成長を始めた途上国です。自動車販売台数(2013年)ではトップは中国、4位がブラジル、6位がインド、7位がロシアです。途上国ではガソリンスタンドすら圧倒的に不足し、道路沿いに並べたドラム缶から給油するような場所すらあります。ガソリンの供給網が整い、自動車が生活に根付いた後に人々の目が環境性能のよい車に向くとすれば、現在の新興国、途上国燃料電池車が売れ始めるのは遠い先の話でしょう。

 技術を進化させていくことは企業にとっても社会にとってもとても重要です。まだ大きな需要を期待できない燃料電池車を商品化し、燃料電池車関連の特許も無償公開したトヨタの英断は歴史的にも高い評価を受けるでしょう。それを名誉だけでなく、現実のビジネスに変えていくには、水素の供給システムの画期的イノベーションと需要が成熟化した先進国で広く売れる水準まで車両価格を下げることが必要です。「MIRAI」の発売は千里の道の第一歩にすぎません。

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO81760470Z00C15A1I00000/

(続く)