VWはその前夜祭で、フランクフルトモーターショーの重点テーマは、「自動車の電動化」だと宣言している。そしてEVやHVを披露したのである。
CAR NEWS 2013.09.12
Volkswagen Group Night|フォルクスワーゲン グループ ナイト
フランクフルト前夜祭
(1)フォルクスワーゲン グループを体感する一夜
国際的なモーターショーの開幕前夜に、フォルクスワーゲン グループの全ブランドを一同に会して催される「フォルクスワーゲン グループナイト」(2013年)9月9日、フランクフルト西部の郊外に位置するフラポート・アリーナという室内競技場を舞台に催された。およそ15年前にバスケットボール用の競技場としてオープンしたこの施設は5,000名の観客を収容できるが、当日は数多くの立ち見を含めて多数の自動車メディアが集結し、世界的な影響力を持つフォルクスワーゲンへの関心が高いことをあらためて裏付けた。
Text by OTANI TatsuyaPhotographs by OTANI Tatsuya & Volkswagen AG
“Electric”ではじまった
イベントのオープニングアクトを務めたのは、今年7月に「Electric」というタイトルのCDをリリースしたばかりのペットショップ・ボーイズ。この点をみても、現在のフォルクスワーゲンがいかに「自動車の電動化」を重要なテーマとして位置づけているかがわかる。
各ブランドの“目玉展示品”を順に紹介するコーナーでは、グループ内のセアト「エステートツアラー」、ブガッティ「ヴェイロン 16.4 グランドスポーツ ヴィテス ジャン ブガッティ エディション」、フォルクスワーゲン コマーシャルビークル「e-load up!」、シュコダ「ラピッド スペースバック」などが手短に紹介されたあと、“本丸”のフォルクスワーゲンはコンセプトカーの「ゴルフ スポーツバン」を公開した。
(2)今日、生産するクルマのEモビリティ化のために
ここでブランドごとの紹介は一休みとなり、グループ全体の今後の方向性をさししめすコーナーとなる。
個々のブランドに割り当てた時間をギリギリまで削ってイベント全体をコンパクトにしようとする(なにしろ合計9ブランドが登場するため、ひとつひとつのコーナーを短くしてもイベント全体としては2時間近くになる)傾向が今回はいままで以上に明確だったが、そうしたなかで独立した時間をもうけて紹介されたのは、グループのEモビリティにたいする取り組みだった。
Volkswagen e-Golf & Volkswagen e-up!|フォルクスワーゲン e-ゴルフ & フォルクスワーゲン e-up!
Porsche Panamera S E-Hybrid|ポルシェ パナメーラ S E-ハイブリッド
ここでステージに登場したのはアウディ「A3 e-tron」(http://openers.jp/article/19389)、ポルシェ「パナメーラ S E-ハイブリッド」(http://openers.jp/article/18874)、フォルクスワーゲン「e-ゴルフ」(http://openers.jp/article/19206)、おなじく「e-up!」(http://openers.jp/article/17190)の4台。
最初のふたつはプラグインハイブリッド、あとのふたつは純粋なEVというちがいはあるものの、いずれも既存のモデルをハイブリッド化、もしくはEV化していることがフォルクスワーゲン グループの特徴である。
カーボンコンポジット製の専用ボディを用意したBMW「i」(http://openers.jp/brand/bmw/2)とはここが決定的にことなる点で、プレゼンテーションをおこなったウルリッヒ・ハッケンベルグが「2、3のニッチモデルだけを生産するブランドとは一線を画す。われわれは明日ではなく今日、生産するクルマのEモビリティ化をはかってゆく」と言明したのが印象的だった。
(略)
http://openers.jp/article/19403
VWもBMWのi3を、ニッチモデルと喝破している。小生もエコカーの「プロトタイプ」的な車ではないか、と推測したのだが、VWでさえもそのような見方をしているではないか。
これに対して、VWは(以前にも指摘しておいたが)ダイムラーと同様に、既存モデルをEV化している。そのため既存モデルと同じの室内空間を確保しているのだ。
それではe-up!,e-Golfとはどんな車であろうか、一寸古いが当時の解説を見てみよう。
VW初の量産EV e-up! 登場|Volkswagen
CAR NEWS 2013.03.16
Volkswagen e-up!|フォルクスワーゲン eアップ!
フォルクスワーゲン初の量産電気自動車
フォルクスワーゲンはフォルクスワーゲングループの年次総会において、航続可能距離150kmをほこる、フォルクスワーゲン初の完全な市販むけ電気自動車「e-up!」を公開した。
Text by SUZUKI Fumihiko(OPENERS)
満を持してフォルクスワーゲンが動く
来るべき、ゼロエミッション時代において、電気自動車(EV)を短距離むけの乗り物と位置づけ、これまでも、ザ・ビートルをベースとした「E-バグスター」やゴルフを電動化した「ゴルフ ブルーe-モーション」を発表しているフォルクスワーゲン。いずれも、このまま市販化できるのではないか? という完成度ながら、発電や送電によってEVが発生するCO2排出量は、化石燃料をつかったクルマよりも多い、という理由もあって、市販化を見送っていた。
そのフォルクスワーゲンが、今回ついに市販化に踏み切ったのが、「e-up!」だ。名前のとおり、同社の最小コンパクトカー「up!」(http://openers.jp/article/15734)をベースに、パワートレーンをモーターに切り替えたもの。
そのモーターは、60kW(82ps)のピーク出力、40kW(55ps)の連続出力と、210Nmの最大トルクを発揮する。0-100km/h加速は14秒、最高速度は135km/hだ。ピュアEVなのでトランスミッションもなく、機械ノイズはほぼゼロだという。
パワーソースは、床下に配される18.7kWhの容量をもつリチウムイオンバッテリー。車両重量は1,185kgで、航続可能距離は150km(NEDC計測値)。ガソリンモデルの給油口とおなじ位置からおこなう充電にかんしては、DC、AC両対応で、市場にあわせて多くの充電方式に対応するという。EVらしく、80パーセントまでの充電なら30分しか要さない。
外観上はLEDデイタイムランニングライトをフロントバンパーに装着しているのが特徴。これは、フォルクスワーゲンのEVに共通の意匠だ。空気抵抗をへらすため、グリル、ボディ下やボディサイドにはカバーを装着しているという。また、15インチのポリッシュ処理されたホイールと、背景がブルーになったVWエンブレムもe-up!ならでは。インテリアは、ライトグレーのトリムカラーと、ブルーのシートで統一されている。
今回は年次総会における限定公開となったが、今年9月に開催されるフランクフルト国際オートショー2013(IAA 2013)で、一般公開し、同時に、予約受付を開始する。
http://openers.jp/article/17190
(続く)