次世代エコカー・本命は?(78)

なんと言っても昨年2014年の12月15日トヨタが、世界に先駆けて燃料電池車「ミライ」を発売した事である。トヨタが何故FCVを造ったのかに対しては、いくつもの理由があるが、その最も重要なものの一つは、この2018ZEV規制対応であったと小生は思っている。

 

ZEV規制については当ブログの2014.12.1NO.5~などを参照願いたいが、現在は、自動車メーカー各社のこのZEV規制対応が、すこしづづ日の目をみることになりつつある時期ではなのいかな。BMWの「iシリーズ」などは、一つにはこのために開発してきたモデルであろう。BMWも日本のスバルも、加州のこの2018ZEV規制の対象となってくる。

 

そのために各社は必死に電気自動車などを開発してきたのであるが、先の「世界のEV大図鑑」の記事の中に、スバル富士重工の名前がなかったことが気に掛るのである。BMWの名前もなかったが、BMWはすでにi-3などのEVを発売している。スバルは現在アメリカでは人気の車種で、大いに売り上げを伸ばしているというので、なんと言う車でこのZEV規制を乗り越えようとしているのか、いささか気になるところである。ひょっとしたらスバルのレガシィなどに、トヨタ燃料電池を積んでアメリカで売り出されたりして、なんて想像もしたくなる。当然それにはFCスタックの絶対的な生産能力が足りないのだが。

 

それともレガシィLIBリチウムイオンバッテリーなどを乗せて、売り出されることになるのかな。目が離せないところだ。

 

もう一つ目が離せないことは、トヨタ電気自動車だ。i-ROADなどのシティコミューターは、盛んに記事となっているが、いわゆる近中距離タイプのEVトヨタは持っていない。トヨタ燃料電池車一本槍で、この手のEVに対しては本当に開発する気もないのかな。

 

トヨタは、エコカー燃料電池車だけとするならば、「ミライ」よりも一回り小型の「昔で言うならばコロナ、今アリオン」「カローラ」クラスの車にも燃料電池を搭載してもらわなければならないことになる。FCスタックがそれだけ小型でコストを抑えることが出来ているか、という事になる。

 

それにはまだまだ時間が掛りそうな感じがするので、その内にEVも出すのではないのかな、などと思っているのであるが、案外そんな風になるのかもしれない。

 

昨年2014年の七月の記事なのだが、今から思うと燃料電池車の開発も一段落して、トヨタとしては相当先も見えてきた頃なので、少し余裕も出てきた時であろう。そして、FCVの普及までの(トヨタとしては)過渡期となる時期のエコカーに目が行き始めた、というところか。

 

NEWS REPORT
燃料電池車に懸けるトヨタエコカー戦略に変化の兆し

201478

http://net.keizaikai.co.jp/archives/9657


ハイブリッド車(HV)に次ぐ、次世代エコカーの本命は電気自動車(EV)ではなく燃料電池車(FCV)」と明言してきたトヨタ自動車に変化が表れている。拡大の兆しが見えてきたEV市場に対し、同社がどのようなアプローチをするかが、大きな焦点となってきている。

加藤光久

2014年度内に発表予定のFCVを披露する加藤光久・トヨタ副社長(Photo:時事)

エコカー戦略にEVを追加か

 6月25日に東京都内で開いたFCVの発表会後に、トヨタ小木曽聡常務役員が記者団の取材に応じ、「FCVは、次世代エコカー主流のひとつ」と発言した。FCVを次世代エコカーの「本命」としてきたこれまでのスタンスから、微妙にニュアンスが変わり始めたとも取れる。

 「FCVが普通の車になるための、長いチャレンジの始まりだ。水素社会の一翼を担っていきたい」

 トヨタの加藤光久副社長は、発表したFCVの市販モデルの前で、普及に向けた決意をこう述べた。当初、2015年中としていた発売時期を「今年度中」に修正するとともに、「1千万円を切るレベル」としていた価格も同社の高級車「レクサス」並みの700万円まで下げた。トヨタの本気度、野心を内外に示した形で、世界初の市販化を実現させ、これからのFCV市場をリードしたい思惑も透けてみえる。

 トヨタは、年間100万台を超えるレベルにまで販売を成長させたHVと同様に、自ら主導する形でFCV市場を引っ張っていきたい考えで、世界で「エコカートヨタ」のイメージを定着させていく。今後、各国政府からの補助金などの支援を受けながら、徐々に、価格を下げ、本格普及に乗り出す戦略だ。

 一方で、トヨタにとって〝目の上のたんこぶ〟とも言えるのが販売面で出遅れたEVだ。

 トヨタは、これまで、1回の充電での走行距離が200〜300キロ程度のEV普及は限定的として、販売に力を注ぐ日産自動車の動きとは対照的に、力を入れてこなかった。

 走行距離もさることながら、普通充電時の充電時間が3時間以上と長いこともネックで、「マンションなどで充電設備を作っても奪い合いになる。現実的には普及が難しい」(トヨタ幹部)としてきたことも大きい。何より、売れているHVを押しのけてまでEVを発売するメリットは薄いと判断してきたからにほかならない。

 ところが、ノルウェーでは、手厚い税制優遇の恩恵もあってEVがブームになっている。今年3月には、新車登録台数における電気自動車の割合は5台に1台に達した。微粒子状物質PM2・5が拡大し大気汚染が深刻中国も、EVの普及に本気で、大連市は日産自動車の中国合弁会社、東風日産が9月に発売する「e30」を年末までに1千台を一気に調達し、公用車やタクシーとすることを決めている。独ダイムラーや米テスラ・モーターズが中国でEV販売に本格参入するのも、「中国政府の本気度をかぎ取ったため」(専門紙記者)とされる。

 小木曽常務が、FCVを「主役」でなく、「主流のひとつ」と〝下方修正〟したのも、「EVの将来性について少しばかり見誤った反省」(同記者)との見方もできそうだ。

部品メーカーとの関係はどうなるか

 では、トヨタのEVへの本格参入は、もはや時機を逸したと言えるのか。日産が、苦労してEV市場が何とか形成されたため、イメージという点では多少の出遅れ感も否めないが、答えは「NO」である。

 トヨタがこれまで手掛けてきたHVのハイブリッド技術は、FCVのみならず、EVの基礎技術をすべて網羅するコア技術である。いわば、他社を凌駕するEV技術は既に確立しており、「EV市販はしようと思えばいつでもできる」(証券アナリスト)。

 既に昨年3月には、子会社の日野自動車ヤマト運輸と協力して、商用EVの実証実験を開始。走行距離が予測しやすい業務用途には、一定の需要が見込めると判断し、実用時期を見定めている。小木曽常務も「PHV、EV、FCVに応用できるバッテリーの開発は、かつてない投資規模で進めている」としている。

 ただ、本格参入しようにもできない理由は別にある。取引先との関係が崩れるという点だ。

 約3万点の部品で構成される複雑な構造のガソリンエンジン車に対し、EVは電池とモーターがあれば基本は動く。安全性は大前提だが、部品点数も少ない。しかも、心臓部である電池は自動車メーカーではなく、パナソニックなど電機各社が技術を保有しているケースが多い。電機メーカーとの取引が増えれば2万6千社前後ともされる取引先の部品メーカーとの関係が成り立たなくなり、部品メーカーの多くの経営が立ち行かなくなる恐れがあるからだ。

 もちろん、FCV内燃機関がないという点で構造は同じだが、2030年かけて普及をもくろむ間に、部品メーカーに徐々に構造転換を求めればよく、それまでにはまだ猶予がある。

 とはいえ、エコカーの絶対的な主導権を握りたいトヨタが、想定以上に拡大する可能性も出てきたEV市場に対し、何も手を打たず、指をくわえてみているはずもない。

 特に国内での充電インフラ整備も、政府の支援も手伝って整ってきた。「近い将来、トヨタEVを本格発売する時期が来る」とみる業界関係者は決して少なくない。

(文=ジャーナリスト/原田浩一)

http://net.keizaikai.co.jp/archives/9657

(続く)