次世代エコカー・本命は?(89)

燃料電池車の開発はホンダも行っている。そろそろホンダの燃料電池の開発も佳境となっていることであろう。2015年発売を2015年度中に発売すると、燃料電池車の発売時期を延期している。しかも2014.11.18トヨタFCVMIRAI」の記者発表の前日に、ホンダはわざわざ自社の燃料電池車を公開している(当ブログの2014.11.28,NO.4参照のこと)。しかも試作コンセプト車だ、まあこんな姑息な手段をとってくると言うことは、ホンダも相当あせっているものと見受けられたのだが、それでもそろそろホンダの燃料電池車の顔を拝んでもよい時期だと思うが、ホンダもこの金属電池の開発には相当力を入れているようだ。


リコール問題で車両開発のペースを少し落としているホンダであり、そんな中でF1への参戦も果たしているのだが、(小生はホンダのF1参戦は一年ほど早まってしまったと思っているが)、燃料電池車やリチウム・金属電池の開発にはそれなりの遅れが出ていることは、やむをえないのであろう。

 

しかしホンダとしては「リチウム・空気電池」の開発には相当力を入れているようで、関連の特許件数ではトヨタを凌駕していると言う。

 

ホンダがトップ トヨタ3位に、金属空気電池の特許競争力 民間調べ

小川 計介=日経Automotive Technology

2014/07/25 18:10

 

 日本の特許庁が公開した「金属空気電池」の特許競争力を、特許分析サービスのパテント・リザルトがまとめた。1位がホンダ2位が米Eveready Battery3位がトヨタ自動車となった。4位以降、パナソニックキヤノンが続く。

 ホンダは正極にイットリウムY)やマンガンMn)を含む複合酸化物を用いた電池の評価が高かった。Eveready Battery社は電池の耐久性を保つ技術に注力する。トヨタは充放電時の電池性能の低下を抑制する技術や高効率の放電特性の技術を有する。パナソニックは酸素還元用の電極、キヤノンは結晶の発生を抑えた長寿命な電池の開発に力を入れる。

  

 金属空気電池は、正極の反応材料に空気中の酸素、負極の反応材料に金属を用いる電池の総称。現在普及しているリチウムイオン電池よりもエネルギー密度が高いことから、電気自動車EV)やプラグインハイブリッド車PHV)など向けの次世代電池として期待されている。 

 パテント・リザルトは「この数カ月で金属空気電池関連の公開特許が急に増えている」と述べる。国内では特許の出願から公開までに16カ月かかる。2012年ごろからこの分野の特許出願が増えたことになる。金属空気電池関連の公開特許は今後も増え、特に今回3位だったトヨタの公開件数が急増することが予想されるという。

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20140725/367280/?ref=RL3


 

この「リチウム・空気電池」は、かのIBMも開発を進めているようで、IBMはこのリチウム・空気電池で800kmの走行を実現したいと言っている。しかもその重量は精々300kg程度の重量ですむのではないかとも言っている。

 

ちなみに日産リーフの「リチウムイオンバッテリー」 重量は294kgで、大きさは1,188mm×1,570.5mm264.9mmとなっており、この図体でカタログ値228kmしか走行が出来ない

2015.2.12NO.54参照の事)。

 

これに対してリチウム・空気電池は、多分同程度の大きさのリチウムイオン電池の比べれば、5,6倍の走行距離が実現できるようだ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%81%E3%82%A6%E3%83%A0%E3%83%BB%E7%A9%BA%E6%B0%97%E9%9B%BB%E6%B1%A0

 

しかしIBMはこの「リチウム・空気電池」の実用化の時期は、2020年から2030年の間と言っているので、まだまだ先の技術であろう。文字通り「次世代電池」なのであろう。次に掲載するのは2012年の論考ではあるが、「リチウム空気電池」が何たるかの理解に役立てるために是非ご一読願う。

 

IBM電気自動車用リチウム空気電池を開発中。1回充電で走行距離800キロめざす

201237

IBMが、電気自動車リチウム空気電池の開発プロジェクトを進めているとのこと。プロジェクトの名称は「バッテリー500」。1回充電で800km500マイル)走行可能な車載バッテリーの実現をめざすとしています。

 

開発中のリチウム空気電池の電解質IBM Research

現在、リチウムイオン電池を搭載した電気自動車1回充電で150km程度と短い距離しか走れません。走行中のバッテリー切れに対する利用者の不安が、電気自動車普及の大きな妨げになっています。

電気自動車の走行距離が短いのは、ガソリンやディーゼルなどの化石燃料に比べて、リチウムイオン電池エネルギー密度(貯蔵可能なエネルギー量を電池の質量または体積で割った値)がかなり低いためです。既存のリチウムイオン電池は、容量50kWh500kg程度の重量になります。800km走行するためには150kWhのエネルギー量が必要なので、電池の重量は1.5トンとなってしまい、自動車用としては明らかに非現実的です。

一方、大気中の酸素を反応物として利用するリチウム空気電池は、既存のリチウムイオン電池と比べるとエネルギー密度を高くできるという特徴があります。容量150kWhとしたときの電池重量も、150300kgで済みます。「バッテリー500」では、現在のリチウムイオン電池よりエネルギー密度が10倍以上高いリチウム空気電池の開発をめざすとしています。

理論的に達成可能なリチウム空気電池のエネルギー比率は11kWh/kgより大きいとされ(大気中の酸素の重量は除く)、実際のエネルギー比率は理論値の10分の1程度になると予想されています。また、電気モーターの効率が85%と非常に高いため、内燃機関と電気モーターの相対的効率を考慮に入れた場合、電気モーターとガソリンエンジン(またはディーゼルエンジン)の実用上のエネルギー密度の差は非常に小さくなります。このことから、リチウム空気電池は、これまで研究されてきたすべての種類の電池の中でも潜在的能力が最も高いといいます。

 

リチウム空気電池の電極構造は、負極側金属リチウム正極側空気極とします。空気極には、酸素を通しやすい軽量の炭素材料を用います。放電時には、負極側のリチウム原子が電子を放出してリチウムイオンとなり、電解質を通って正極に移動。正極で大気由来の酸素と反応。反応生成物が正極に堆積します。充電時には、酸素が放出され大気に戻ります。比喩的に言えば、電池は放電時に酸素を吸い込み、充電時にそれを吐き出すということです。

IBMで開発を進めているのは、電解質に有機溶媒とリチウム塩を用いる非水系リチウム空気電池。放電時には過酸化リチウム(Li2O2)が生成され、正極に蓄積されます。充電時には過酸化リチウムが分解して酸素とリチウムに戻り、酸素は大気に放出され、リチウムは負極に蓄積されます。

 

スーパーコンピュータによるシミュレーション (IBM Research

(続く)