次世代エコカー・本命は?(90)

これまでのプロジェクトの成果としては、リチウム空気電池が二次電池として動作することを実験室レベルのモデルで実証したことなどが挙げられます。これは、コンピュータを用いたシミュレーションと実際の実験を結合させたことによる成果であるといいます。米アルゴンヌ国立研究所にあるIBMのスーパーコンピュータ「BlueGene/P」を使って、リチウム空気電池内部で起こっている分子レベルの反応プロセスを第一原理計算によるシミュレーションで調べる研究も行われました。その結果、従来考えられていたのとは異なり、リチウムイオン電池で使われている電解質がリチウム空気電池では機能しないことが明らかになったといいます。

シミュレーションからは、炭素ベースの電解質と過酸化リチウムが放電時に不必要な反応を起こし、電解質の分解が起こることが実証されました。これは事実上、リチウム空気電気が破壊されてしまうことを意味します。

プロジェクト専用に開発された質量分析装置を使うことによって、シミュレーションで予想された電解質の分解が実際に起こることもラボの実験によって確認されました。「シミュレーションと実験の結果、安定性のある電解質が特定されたことで、充放電プロセスの基本的動作を実証できた」とプロジェクトリーダーのWinfried Wilcke氏は言います。また、非常に高い充電容量についてもラボで実証されているとのこと。

リチウム空気電池研究専用に開発された質量分析装置 (IBM Research

さらに根本的な成果は、反応速度論的には触媒が必ずしも必要ないと分かったことです。これは、電池の動作原理である電気化学反応 2Li+ + O2 + 2- <> Li2O2 における過電圧が、当初考えられていたよりもかなり小さいからです。とは言うものの、過酸化リチウムの伝導性が非常に低いことは問題であり、これから解決していくべきものであるとしています。

リチウム空気電池を実用化し、工業生産が行えるようにするためには、解決しなければならない真の課題が他にもいくつかあります。それらは、IBMが「グランド・チャレンジ」と呼ぶ課題の一部です。グランド・チャレンジは、結果が見えないという点ではリスクが大きいものの、ポテンシャルが非常に高いプロジェクトと位置付けられています。

研究チームは現在、電池のエネルギー密度を増加させることをめざしています。現状のエネルギー密度のままでは、実生活で使用する電気自動車に搭載するには低すぎるからです。また、充電に時間がかかり過ぎることも課題です。しかし、こうした課題に顕著な進展があったとしても、コーヒー1杯飲んでいるうちに終わるような急速充電は難しいと考えられます。研究チームの現在の目標は、効率的な夜間充電が行えるようにすることであるといいます。リチウムが湿度の影響を受けやすいことも問題です。これを解決するため、研究チームでは、敏感なリチウム負極を大気中の蒸気や二酸化炭素から保護する新規なナノ膜の開発も進めています。さらに、電池部材の長期安定性、不要な二次反応の抑制なども課題であるとしています。

バッテリー500プロジェクトでは、現在の研究段階を終えたところでパートナー企業を探し、リチウム空気電池の商用モデルの開発を2020年から2030年の間に行う計画とのこと。

(発表資料)http://ibm.co/yLu4js

http://sustainablejapan.net/?p=1248


 

トヨタとしては、先のホームページの資料によれば、「全固体電池」なる物のほうが先にものになるようなので、これを実用化してEVに載せてくるのではないのかな。「全固体電池」がどんなものかは小生は詳らかではないが、燃料電池の小型化リチウム・空気電池全固体電池の開発実用化と、どちらが先になるかと言ったところであろう。

 

とここまで記述してきたが、考えてみれば燃料電池(車)の小型化よりも、トヨタはこれらのリチウム・空気電池や全固体電池の方が小型車には向いていると考えているのではないのかな、と言う感じがしてきたので(単なる感であるが)、燃料電池車は精々クラウン、マークX辺りまでで、それ以下の車両には(当分の間は)このリチウム・空気電池や全固体電池を載せてくるのではないのかな、と感じている。

 

さて現行の電気自動車ではLi Ionバッテリーが主流であるが、これが馬鹿高くてしかも性能があまりにもよくない。と言っても現在では他に代わるべきバッテリーが見当たらないので致し方ないのであるが、現在のバッテリーの動向としては、リチウムイオンバッテリ充電時間の改善新型電池の開発の二つの流れがあるようだ。


この「金属リチウム・空気電池」などは新型電池の開発の流れのひとつなのであろう。


次に紹介するのは、リチウムイオン電池にない特性を有する不定形な電池であるが、それなりに難しい問題もあるようだが、いろいろな新型電池が考えられているものだ。

 

話題の新型電池「battenice」の正体
リチウムイオン電池にはない特性が魅力

狩集 浩志=日経テクノロジーオンライン、富岡 恒憲=日経テクノロジーオンライン

2014/02/24 07:00

 日本マイクロニクスは、グエラテクノロジー(本社神戸市)と共同で、新原理による二次電池battenice」の量産化技術の開発に成功した。化学電池ではなく量子技術を用いた物理電池に分類されるもので、試作した100mm角、厚さ11μmのシート状電池では、単3形乾電池2本(直列接続)で約1分充電することで、小型のモータによってファンを1分以上回せる性能を実現している(図、「【動画で見る】これが新原理2次電池「battenice」のデモの様子だhttp://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20140224/335843/参照)。

しかも、ファンの回転数はほぼ一定であり、放電特性は電気ニ重層キャパシタのように電圧が放電に応じて比例的に下がるのではなく、化学電池のように一定電圧を維持する。

 同社によれば、電圧が1.5Vでエネルギー密度が500Wh/L、出力密度が8000W/L、サイクル寿命(初期容量の90%以上の容量保持)が10万回、動作温度範囲が-25~+85℃を実現できるとみている。試作品では基板に厚さ10μmのステンレス箔を用い、基板の片面のみに電池となる層を形成しているが、より薄く比重も軽いアルミニウム箔を基板に使い、電池となる層も基板の両面に形成することで、この目標値を達成したい考えだ。

(続く)