次世代エコカー・本命は?(91)

 同電池は端的に言えば、絶縁膜(絶縁性樹脂または無機絶縁物)で覆ったn型金属酸化物半導体〔例えば、二酸化チタン(TiO2)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛ZnO)など〕の微粒子を充電層に用いたものである。製造の過程で、同充電層に紫外線をある条件で照射しておくことで、n型金属酸化物半導体のバンドギャップ(価電子帯と伝導帯の間の幅)内に新たなエネルギー準位が多数形成される。充電によってそれらの準位に電子を入れ、放電時にはそれらの準位にある電子を放出させることで、二次電池として機能する。

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図●新原理二次電池battenice」の試作品によるデモの様子

このデモで使用している試作品は、100mm角、厚さ11μmのシート状のもの。

 

エネルギー密度では及ばないが

 日本マイクロニクスによれば、新型電池は次のような長所を持つ。(1)全てが固体からできた電池であるため液漏れの心配がない、(2)可燃性の材料を使わないので熱暴走による発火の心配がない、(3レアメタル/レアアースを使わないので資源調達にも不安がない、(4環境負荷の高い物質を使っていないので環境にやさしい、(5)充放電サイクル寿命が長い(加速試験では1万回以上を確認済み、現在10万回以上を目指して試験を継続中)ので廃棄物の低減につながる、(6)出力密度がキャパシタ並みに高い、などだ。

 では、同電池はリチウムイオンニ次電池を置き換えるものなのか。この点については、現時点では一概にはそうとは言えないと考えられる。なぜなら、同電池の場合、電極当たりのエネルギー密度の点で高性能なリチウムイオン二次電池に劣っている上、技術的なブレークスルーがなければエネルギー密度を大幅に向上させることは難しそうだからだ。

 現在の民生用リチウムイオン二次電池では、「18650」と呼ぶ円筒型セルでエネルギー密度が650Wh/Lを超える。これに対して、新型電池は前述のように初期生産品の目標値が500Wh/Lである。さらに、新型電池の場合、現状では1枚の基板に形成できる充電層は薄いものに限られ、しかも最大で2層(両面形成の場合)までとなる。充電層の厚みを増したり、充電層を電極などを介して多層化したりすると、紫外線照射によって充放電機能を持たせる充電層の厚さ方向の均一性を保ちにくくなるためだ。現時点では、一つの基板に分厚い充電層を設けたり、何層もの充電層を積層したりすることは難しい。そのため、両面に充電層を形成した基板(シート)を積層することで、容量を大きくしたり、出力電圧を高めたりすることになる。

 実際、先述した試作品では厚さ10μmのステンレス箔に厚さ1μmの電池の層を形成している。これを厚さ10μm未満のアルミ箔にし、両面に電池の層を形成することで500Wh/Lの実現を狙っている。充電層の厚みに対して基板の厚みを大幅に薄くできれば電力密度を大幅に向上できる可能性もあるが、そこには基板のハンドリングという課題があるという。

新市場の形成に期待

 もっとも新型電池には、リチウムイオン二次電池よりも優れた点が幾つもある。出力密度が非常に高いことと、液漏れや熱暴走による発火の心配がないこと、資源調達に不安がないこと、充放電サイクル寿命が長いことなどだ。これらの長所を生かすことで、リチウムイオン二次電池とは違った用途で有効な使い道があると考えられる。そのため、従来のような積層してバルク型の電池にするという使い方にこだわらず、薄いシート状である特徴を生かしてウエアラブル機器向けや薄膜太陽電池との組み合わせ、基板内蔵電池などといった、フレキシブルな薄膜電池の用途として新市場を形成していくことに期待したい。

 日本マイクロニクスは、前述の試作品の他に、300mm角で厚さ11μmのシート状電池(電池層は片面)や、100mm角で厚さ11μm(電池層は片面)のシートを32枚重ねた電池などの試作品を既に作製済み。2014年内には、用途開発のためのサンプルを出荷する計画としている。

 製造技術については未公表だが、グエラテクノロジーが出願している特許(WO2012046325A1)によると、例えば次のような造り方が一つとして推定できる。まず、基板にマイナス電極〔スズをドープした酸化インジューム(ITO)〕とn型金属酸化物半導体層(TiO2)を順にスパッタリングで形成。次いで、脂肪酸チタン、シリコーンオイル、溶媒を混合して攪拌し、それをTiO2層上にスピンコートする。これを50℃10分間乾燥し、300400℃10分~1時間焼成する。それにより、脂肪酸チタンを分解し、シリコーンで覆われたTiO2の微粒子層を形成。そこに、波長が254nmの紫外線を強度20mW/cm2で約40分間照射し、TiO2のバンドギャップ内に電池としての充放電に寄与する新たなエネルギー準位を多数形成させる。p型金属酸化物半導体NiO)とプラス電極はスパッタリングで形成する。

 電極は金属電極(銅、銅合金、ニッケル、アルミ、銀、金、亜鉛、スズなど)でもよい。スパッタリングの他にも、イオンプレーティング、電子ビーム蒸着、真空蒸着、化学蒸着、電解めっき法、無電解めっき法などの形成方法が考えられるとしている。これらの造り方は特許に書いてあるものであり、実際にはより効率のよい量産技術があるとみられる。

 日本マイクロニクスによれば、同電池をロール・ツー・ロールで造ることは可能。しかも、化学電池では12週間掛かるエイジングの工程も不要という。こうした量産性の高さを生かせれば、外形寸法の多品種化に対応できる上、ロール上で直列や並列の接続を実施することで、出力電圧の多様化への需要にも応じることができるだろう。

 基板に樹脂は使えないのか--。この点については不明だ。ただ、日本マイクロニクスは「特許では焼成温度が300400度(セ氏)となっているが、実際にはこれより焼成温度を下げる方向で取り組んでいる」としている。

 なお、日本マイクロニクスは「第5回 [国際]二次電池展」(201422628日、東京ビッグサイト)に出展し、新型電池のデモ映像などを紹介する予定である。

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20140221/335603/?ref=ML


 

次に紹介する電池は、一応試験車に搭載されて走行試験が行われている。

これは負極にアルミ板、正極に空気、そして電解液には水が使用されて、電気を発生させると言うものらしい。


だからこれは、先に紹介した「リチウム・空気電池」と同じ類のもののようだが、電解液に水と言う普遍的なものを使うところが味噌であるらしい。

(続く)