次世代エコカー・本命は?(98)

しかしながらこの「リチウムイオン電池」は、何を言おう日本の発明品なのである。だからと言うわけでもないが、是非ともこの「未解決リスク」は、日本人の手で解決してほしいものである。

 

ノーベル賞有力候補、リチウムイオン電池の「未解決リスク」

2014/12/25 7:00
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 2014年のノーベル賞が、日本の技術者や産業界に大きな活力を与えている。

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青色LEDの開発で、201412月にノーベル物理学賞を受賞した3人の日本人技術者(共同)

 従来は基礎研究を重視する傾向があったが、青色LED発光ダイオード)の受賞のように、実社会への影響度などを考慮する傾向が強まっているからだ。ノーベル財団は「世界の電力消費の4分の1は照明用に使用されているので、LED照明は地球資源の節約に貢献している」とのコメントを発表した。技術の実用化が得意な日本で“受賞ラッシュ”が起きるのではという期待が高まっている。

 その点で、注目度が高いのがリチウム(Li)イオン電池だ。日本の技術者たちが基本原理を発明しており、長らく「受賞の可能性あり」とみられている。20142ソニー技術者西美緒氏旭化成フェロー吉野彰氏4名は、「工学分野のノーベル賞」と呼ばれる「チャールズ・スターク・ドレイパー賞」を受賞した。

 実際、リチウムイオン電池の実用化なくしては、小型のノートパソコンやスマートフォンスマホ)の普及、そして電気自動車EV)の台頭はなかったと言える。EV専業の米テスラ・モーターズイーロン・マスクCEO最高経営責任者)は、「当社のEVには日本の心が入っている」と日本の電池技術への賞賛を惜しまない。

繰り返されるトラブル

 ただ、そんな雰囲気に水を差すのが発火などのトラブルだ。「ノーベル賞の審査委員たちも未だにトラブルが続く技術に賞を与えづらいのではないか」との声が、電池業界関係者の間で上がっている。もちろん実際の審査過程に影響があるのかは分からないが、トラブルがつきまとう技術に賞を与えることは、ノーベル賞の信頼性にも関わってきそうだ。

 リチウムイオン電池ソニー旭化成などによって初めて実用化されたのは1991。繰り返し充放電できる2次電池として、従来のニッケル・カドミウムNi-Cd)電池ニッケル水素(Ni-MH)電池よりも高いエネルギー密度を持つため、携帯機器を中心に採用が広がった。しかし、その高いエネルギー密度は、異常発熱発火といった“負の側面”ももたらした。

 2006には携帯電話やノートパソコンに搭載されたリチウムイオン電池のトラブルが相次いだ。例えば、ソニーエナジー・デバイス製の電池を搭載したノートパソコンが発火事故を起こし、同社が世界で約960万個を回収する大きな事態に発展した。

 最近では、米航空機大手ボーイングが鳴り物入りで投入した新型機「787」に搭載したジーエス・ユアサコーポレーションGSユアサ)製リチウムイオン電池が、20131発火事故を起こした。

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2013116高松空港緊急着陸したANA692便のボーイング787型機山口宇部空港を離陸して羽田空港に向かっていたが、リチウムイオン電池から煙が上がって緊急着陸した

 20136には、三菱自動車プラグインハイブリッド車PHV)「アウトランダーPHEV」のリコールを実施した。同車に搭載したリチウムイオン電池で不具合が発生したためだ。

 また201411には、ノートパソコンに搭載されたパナソニックリチウムイオン電池で発火事故が報告され、同社はリコール(回収・無償修理)している。

本当の事故原因が分からない

 大規模な調査からも、リチウムイオン電池の扱いの難しさが分かる。米運輸安全委員会201412月、ボーイング787の発火事故の最終報告を発表した。セルの1つが内部でショートし、連鎖的に異常な高温となる「熱暴走」を起こしたと指摘した。それでも、ショートが起きた原因は特定できていない201412月に発表した国土交通省の調査結果でも、ショートの詳しい原因を明らかにしなかった。

 規格はどうなっているのか。日本には電池工業会が定めたSBA規格と日本工業規格JIS)などがあるが、事故原因の一つと考えられているショートを評価する試験は少ない。

独自に安全認証を取得するメーカーも

 こうした状況から、規格以上の安全性を追求するメーカーもある。

 電池専業のエリーパワーは、規格では求められていない電池への釘差しや銃撃などの過酷な試験を実施し、安全性を確かめている。電子機器などを認証するドイツの機関、テュフ・ラインランドの安全認証を取得している。

 エリーパワーも、実験段階では自動車に載せた蓄電池の火災などを経験した。そうした経験から、電極材料にリン酸鉄リチウムを選ぶなど安全性を最優先する設計を確立した。河上清源取締役は、「電池システム全体で安全性を確保する考え方があるが、電池セル単体から安全性を確保することが大事だ」と指摘する。

 エリーパワー製よりもエネルギー密度が高い製品はあるが、同社製は安全性が評価され、米ナスダック上場の米エンフェーズ・エナジー(カリフォルニア州)と戦略的提携を結んだ。

 2015年以降、欧州自動車メーカーなどがPHVの投入を増やし、それに搭載されるリチウムイオン電池の出荷量は増えていく見込みだ。EVPHVが普及すれば、自動車の環境負荷は確実に低減されるが、リチウムイオン電池の「発火リスク」がなくなったわけではない。業界を挙げてより一層安全性を高めることが、普及を拡大する条件になるし、それがノーベル賞受賞という福音をもたらすかもしれない。

(日経エコロジー 大西孝弘)

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO81190890S4A221C1000000/


 

あのテスラ電気自動車には、すべて日本の開発した「18650」と言う民生用(ノートパソコン用)のリチウムイオンバッテリが搭載されている。その搭載本数はテスラロードスター6,831個、450kgほど搭載している。テスラ・モデルSでは公表されてはいないが、推定で8,000から10,000個ほど搭載されているものと思われる。少なくてもバッテリの重量は500kgから650kgほどになろう。小さなクルマ一台を余分に積んで走っているのと同じ重さになろう。

(続く)