次世代エコカー・本命は?(100)

EV「リーフ」などで試作済み

f:id:altairposeidon:20150417000131j:plain

3 日産自動車EV「リーフ」を用いた試作車

 過去を振り返ると、日産自動車はこれまでに、「ハイパーミニ」と「リーフ」によるワイヤレス給電システムの実験を報道関係者に公開している(関連記事2、関連記事3)。展示車両で想定したシステムの最大出力は3.3kW。満充電までは240V8時間とした。地面側のコイルは、公共の場所ではなく、車両所有者の自宅駐車場に設置するという。

 地上側のコイルと車両側のコイルの位置ずれを防ぐため、アラウンドビュー・モニターを使った自動駐車システムを採用し、駐車する車庫の位置をナビゲーションシステムに登録しておくことで、車庫に入った際に自動駐車システムが起動する。

 取り組みを強化しているのは日産自動車だけではない。トヨタ自動車は、電動車両向けのワイヤレス給電の実用化を目指して20142に愛知県豊田市実証実験を開始した(関連記事4、関連記事5)。同社は、プラグインハイブリッド車PHEV)「プリウスPHV」をベースに磁界共鳴方式のワイヤレス給電システムを組み込んだ車両を開発済み。搭載するワイヤレス給電システムの出力は2kW。使用する周波数帯域は、国際標準規格としてほぼ合意の得られた85kHz帯を採用した。電力伝送効率は80%程度である。

f:id:altairposeidon:20150417000202j:plain

4 ワイヤレス給電機能を組み込んだトヨタ自動車の「プリウスPHV

 トヨタ自動車によれば、「実証実験では、(地面に設置した)送電コイルと(車両の底部に設けた)受電コイルの距離(コイル間ギャップ)は15cm程度離れている。水平方向の位置ずれは、左右にはタイヤ1本分弱(20cm程度)を許容している。前後方向の位置のずれはカーナビの支援によってほとんど出ない想定で開発した」という。

ホンダは自動駐車と組み合わせ

 ホンダも開発を進めている。同社は2014616にワイヤレス給電システムを搭載した「フィットEV」の実験車両を公開した(関連記事6)。埼玉県さいたま市で実証中のスマートハウス(次世代省エネ住宅)の取り組みの一環として開発を行っている。実用化の目標時期は2016ごろという。

 特徴的なのは自動駐車システムと組み合わせた点だ。自動運転によって精度よく駐車するシステムを用いることで、「駐車精度は縦方向に±5cm、横方向に±10cmの幅で、送電コイルの上に自動的に駐車できる」(ホンダ)という。これにより、8090%の電力伝送効率を維持できるようにした。

 (次回の中編は【3/11公開予定】、最終回の後編は【3/13公開予定】です)

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20150309/408100/?n_cid=nbptec_tecml&rt=nocnt

 


 

日産が登壇★韓国KAISTが来日★
【自動車向け】ワイヤレス給電シンポジウム2015
EV充電が実用フェーズに、その先には走行中給電も~

電力を無線で伝送するワイヤレス給電技術に関するセミナー「ワイヤレス給電シンポジウム 2015」を、3年ぶりに開催します。自動車向けにフォーカスし、間もなく実用化が始まる定点充電と、将来技術として期待の大きい走行中給電という、ワイヤレス給電の2大トピックの最新動向を、業界第一線で活躍する講師陣に解説していただきます。
日産自動車が国際標準化動向を解説
Qualcomm社が開発技術や欧州の動向を詳報
・韓国KAISTが走行中給電システムの詳細を披露
など全6講演!詳細は、こちら

日時:2015320日(金)10:0016:45(予定)
会場:JA共済ビル カンファレンスホール(東京・永田町)
主催:日経エレクトロニクス/日経Automotive

 

動き出した自動車向けのワイヤレス給電(中編)

エレクトロニクス業界も巻き込んだ開発競争に

久米 秀尚

2015/03/11 03:20

 無線で電力を伝送するワイヤレス給電技術。既にスマートフォンなどの携帯機器では製品化済みだが、自動車でもいよいよ実用化のフェーズに突入する(関連するセミナー)。国際標準規格化の議論が大詰めを迎えており、201556月にも方向性が固まるためだ。

 これにより、自動車が止まった状態でのワイヤレス給電技術を用いた充電(定点充電)機能を市販車に搭載する環境が整う。本稿では、自動車向けのワイヤレス給電技術を巡るここ数年の動きを振り返ることにする。

 自動車メーカーの動向を中心にまとめた前編は、こちら。

 ワイヤレス給電システムの開発に注力するのは、電気自動車EV)やプラグインハイブリッド車を開発する自動車メーカーだけではない(図1、関連記事1、関連記事2)。自動車業界に身を置く多くの企業だけでなく、エレクトロニクス企業も巻き込んだ開発競争に発展しているのだ。

f:id:altairposeidon:20150417000348j:plain

1 Audi社が開発した電動車両向けのワイヤレス給電システム

 エレクトロニクス系の企業の中で、特にワイヤレス給電システムの研究開発に力を注いでいるのがQualcomm Technologiesだ。同社は201111に、電磁誘導方式のワイヤレス給電技術に関する特許を多数保有するニュージーランドUniversity of Aucklandから、同技術の関連資産を買収することを発表した。

(続く)