次世代エコカー・本命は?(107)

FCV普及のためには車両の低価格化・インフラ整備が急務

FCVは次世代カーの本命とされているため、多くのメーカーで開発が進行中。前述のとおり、市販直前の段階までこぎつけているメーカーも多いようです。トヨタがハイブリッドカー「プリウス」を発売したときは、他にハイブリッドシステムを本格的に開発しているメーカーはありませんでした。当時の状況とは対照的です。

しかし、開発が進んでいながら、発売に踏み切らないメーカーが多いのが気にかかるところ。むしろ、FCVの普及が困難であることを予感させます。

実際、FCVの普及には車両の低価格化水素ステーションの整備が必須であり、それが非常に難しいこともすでによく知られています。加えて、「MIRAI」の発売によってFCVの経済性についても明確になってきました。

昨年末、石油元売りの大手であるJX日鉱日石エネルギーが、水素の販売価格1kgあたり1,000円(税別)と発表しました。トヨタMIRAI」の場合、満タンにしたときの料金は4,300円になるそうです。

MIRAI」は満タンでの航続距離を650kmとしているので、4,300円を650で割れば、1km走行するのに必要な燃料代を算出することができます。その金額は約6.6円。一方、ガソリン車の場合、燃費を25kmL、レギュラーガソリンの価格を150円とすると、1km走行するのに必要な金額は6.0円となります。

つまり、「MIRAI」の燃料代は、燃費の良いハイブリッドカーと同レベル、ということになるのです。ちなみに、これは偶然ではありません。「MIRAI」は燃料代が燃費の良いガソリン車並になることを目標のひとつとして開発されていますし、水素の価格を発表したJX日鉱日石エネルギーも、ハイブリッドカー並みの燃料代となるように水素の価格を設定したことを発表しています。

しかし、MIRAI」の車両価格補助金を差し引いても500万円前後と非常に高価。燃料代がハイブリッド並でも、あまり経済的な車とは言えません。経済性の良さを考えるなら、現状ではハイブリッドカーに軍配が上がってしまうのです。

FCVと並ぶ究極のエコカーであるEV電気自動車)も車両価格が割高な印象ですが、充電にかかる費用は極めて安価です。1km走るのに必要な費用は約1.3円にすぎません(日産「リーフ」のカタログデータより)。それでも販売は苦戦していることを考えると、FCVの普及はさらにハードルが高くなりそうです。

トヨタFCVに関連する全特許の無償提供により普及を後押し

年明け早々に、トヨタFCVに関して保有するすべての特許を無償公開すると発表しました。自社の利益より環境問題を優先した良識ある決断と言えるでしょう。しかし、裏を返せば、FCVの普及に対して強い危機感を抱いているということでもあります。

公開された5,610件にも及ぶ特許のほとんどは、期限付きの無償公開です。また、主要メーカーはFCVを市販直前まで開発しているので、今のタイミングでの特許公開によってFCVの開発が大きく前進するかについては疑問が残ります。

ただし、水素ステーションの関連特許70件は無期限で無償公開されました。これによって、多くの企業の参入を促し、開発競争を起こす呼び水にはなるかもしれません。

このように、FCVの普及には課題が多く、まさにいばらの道です。しかし、特許公開にまで踏み切ったトヨタや、多額の補助金を出す行政は、そのいばらの道を突き進む覚悟です。その先にあるのは、CO2排出問題石油依存から脱した水素社会。そこまで行き着けるのか、行き着くにはどれくらい時間がかかるのか、注目したいところです。

2015115日掲載

ガイドプロフィール

山田 正昭(やまだ・まさあき)

フリーライター

自動車雑誌、バイク雑誌の編集を経て、フリーランスとして独立。Webに活躍の場を移し、多数のサイトで執筆活動を展開中。自動車、バイクのほかカーナビやデジタルガジェットのインプレッション記事も得意とする。

https://www.zba.jp/car-kaitori/cont/column-20150115/


 

確かにFCV「ミライ」は燃料電池の他に水素タンクを二つも搭載しているので、クラウンよりも大きなクルマとなっているし、当座は4人乗りとしている。そこらあたりを見て、「「MIRAIはシステムをボディのあちこちに分散させてなんとか詰め込んでいる印象で、車内はかなりタイト。乗車定員も4人となっています。しかし、ホンダのFCV5人乗りで登場するようです。」と表現しているのだが、なんと言っても「ミライ」はすでに一般に市販されている。しかもクルマとしての出来も、相当良い様だ。

 

しかし、ホンダのFCVは一年も販売を先送りしてしまった。いくらコンパクトに出来ており5人乗りだと言っても、まだ販売されていない。「パッケージ型スマート水素ステーション」なども売り出そうとしているので、ホンダもFCVには相当力を入れているようだが、なんと言ってもまだ市販されていない。発表したのは「コンセプトカー」だ。誰かが言っていたが、一般に販売しない車なら、なんとしても発表は出来るものだ。未だ販売しないと言うことは、販売できない車の状態にある、と言うことであろう。

 

発売されている車を取り上げて、未発売のクルマの方が良いようだ、などと評論するライターもライターだが、トヨタも言っているように、ホンダのFCVの販売を心から望んでいるのだ。はやくたくさんのFCVが、公道を走る日がきてもらいたいものである。FCV水素ステーションはどちらも早期に必要なものだ。そういう意味でトヨタとしては、ホンダにも日産にも、そしてVWにも、早く燃料電池車の販売を始めてもらいたいのだ。

 

2015.2.4NO.48ではゴルフの燃料電池車、「ゴルフ ハイモーション」について述べているので参照願いたいが、ドイツとドイツ人は狡猾なので、安倍内閣とトヨタ岩谷産業などが必死に作った水素インフラが出来た頃を見計らって、日本に燃料電池車を投入してくるつもりのようだ。だからVWは当てにならない、と思っていたほうが良いであろう。

 

この「ゴルフ ハイモーション」は、新車種ではなくゴルフのボデーを使って作られている。VW得意の「MQB(エムクーベー)」という新世代のプラットフォームで、作られていると言うことか。

 

このMQBは、トヨタの「TNGA」と同じものの様だ。と言っても両社はそれぞれ2012年に公開しだしたので、社内的には10年近く前から煮詰めていたものであろう。そうでなければ早々にMQBベースの車が発売されることはないであろう。と言うことはVWの方が早く量産化しているので、VWの方が早く手をつけたものと小生は推測している。その頃トヨタは生産拡大の一途で、本格的にTNGAに手をつける余裕はなかったものと思われる。概念は相当前から研究されていたものと思われるが、だから豊田章男社長時代となって初めて陽の目を見ることになったものであろう。だから豊田章男社長としては、忸怩たる思いがあったことであろうと推測できる。

 

MQBとは、「Modulare Quer Baukasten」(ドイツ語 モデュラーレ・クヴェアバオカステン)、拙訳すると「規格化した横置き用車台」とでも言おうか、現代風に呼ぶと「横置き用プラットフォームモジュール」とでも言っておこう。この機関には内燃機関FCVEVも含まれるものと思われる。だから、VWは、EVにせよFCVにせよ、同一ボデーで作られているのであろう。

 

ちなみに英語では、「Modular Transverse Matrix(モジュラー・トランスバース・マトリックス」(拙訳、横置き用車台モジュール)である。


しかしVWとしてもこのMQBの採用に際しては、すんなりとはいっていないようだ。

 

独VWの新モジュール生産体制MQBに課題、生産遅れや残業増も

20140730 10:04 JST

 

ウォルフスブルク(ドイツ) 29日 ロイター] - ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW) が打ち出した「ゴルフ・ハッチバック」の国内生産体制強化。VWは、好調な需要に対処するためと説明しているが、複数の関係者が明らかにした話では、同社が導入した新たなモジュール生産体制「MQB」に問題が生じたことが原因の一つだったようだ。

MQBは急増するモデルの共通部品を増やし、コストの大幅削減を図るもので、新興国需要が鈍る中、VWは期待を掛けている。

ところが、一部の組み立てラインで、こうした試みはやっかいな課題であることが判明。生産の遅れや残業の増加を招いているという。

ある従業員は「自ら招いた多くのトラブルに対処している。残業は通常業務となった観がある。一部は全く余計なものだ」と自嘲気味に話した。

VWは2018年までに世界首位に立つ目標を掲げている。生産ペースを加速し、コストを下げつつ、これまで例のない幅広いモデルを製造できる体制を目指しており、MQBはその核心に位置付けられている。

http://jp.reuters.com/article/companyNews/idJPL4N0Q508I20140730

(続く)