戦後70年談話はヒストリーで!(11)

大沼氏の冒頭発言

支配的慰安婦像とメディアという点についてお話したいと思います。
慰安婦問題というのは、金学順さんのカミングアウトがきっかけで一躍世界的に有名なニュースになったわけですね。その後、韓国でデモが行われ、あるいはナヌムの家というハルモニがいる家が登場したわけです。

このように我々が持っているいわゆる慰安婦のイメージというのは、新聞・テレビで大々的に流布されたイメージであります。しかしながら私が実際にお会いした犠牲者達や、いくつかの研究書、ルポなどで理解している慰安婦の方々というのは非常に多様であるわけです。

わたしたちも多様で、この中にも右寄り・左寄り。男性もいれば女性もいるし、金持ちもそうでない人たちもいる。慰安婦も、我々と同じく多様なわけです。それらがコレまでメディアでは報じられてきませんでした。

我々はどうしても公=Publicというものを、国家と政府と考えて結びつけやすく、政府と関わらないものは民間と考えられやすいです。その典型は、「アジア女性基金」が民間基金として考えられたことであります。 民主主義国家において、その国民が選挙に行って投票する場合、それは民間人として行動するわけではなく、国家の一員として行動するわけです。

アジア女性基金というのは、まさに日本国家を代表して、政府と日本国民を代表して、その予算の大部分は日本政府の予算で充当され、総理のお詫びの手紙を犠牲者にお渡しし、国庫から支出された福祉費用をお渡ししたわけです。 事務局は国庫の予算で運営されている。国庫から支出されていないのは、我々のような呼びかけ人や運営委員に対するもので、ここからは一切受け取っていない。しかし他の点では、国家の性格を体現する機関であったし、広い意味での公的な機関であったわけです。

そういう意味から言うと、メディアも非常に重要な公的存在であり、メディアの活動は公共性の高い活動であります。 政府の行き届かない問題に感心を誘導、報道し、人々にこれは重要な社会的・公共的な問題だと植え付ける、そして問題解決に向け働きかける。これは極めて重要な活動であります。

マスメディアは非常に巨大な影響力をもっております。そのために時として社会の諸国民を抑圧する行動を営むことがあります。メディアの意義は巨大だが、同時にメディアは非常に公共的責任を負っております。ところがメディアやジャーナリストの多くの方々は、政府の権力性に集中して、自らの権力性には鈍感と言わざるを得ません。(会場から笑いが起こる)

特にCNNFOXNew York Timesという、国際的にも巨大な影響力を持つメディアは、自己の権力性、自己の報道がもたらすネガティブな影響にも敏感で謙虚であるべきだと思います。

慰安婦問題は、こうしたメディアの権力性それに随伴するこの当事者個々人を抑圧してしまう、そういうネガティブな機能が典型的に現れた事例であります。

アジア女性基金が償いの事業を開始した時にフィリピンの支援団体はこれに対して批判的な態度を取りましたけれども、被害者自身が受け取りたいという意思を表明した場合、それを尊重しました。オランダのNGO100%慰安婦制度の被害者の意思で受け取るかどうかを決めるべきだという態度でした。

ところが韓国と台湾では、残念なことに元慰安婦の支援団体が強硬に反対して、当事者である被害者が受け取ることを断じて許そうとしませんでした。

私は韓国の挺対協をはじめとする、元慰安婦の方々の支援団体が問題を発掘して公共化した役割を高く評価しますけれども、挺対協その他の支援団体が犠牲者の希望を踏みにじって、償いを受け取るかどうかの判断を妨げたのは非常に大きな誤りだったと思います。

さらに韓国のメディアの責任は重大だったと思います。彼らは慰安婦が受け取るべきではないという挺対協を始めとする支援団体の誤った主張を批判したのではなく、それを大幅に増大して、韓国の社会に徹底させ、そのことによって本当はアジア女性基金の償いを受け取りたいと考えている慰安婦の方々に対する巨大な社会的な権力として、それを抑圧したのです。

当時、韓国には約200名の認定された元慰安婦の方々がおられまして、最終的には61名の方々がアジア女性基金の償いを受け取りました。しかしながら、そのうち7名は最初に公に受け取りましたけれども、その7名が韓国社会で非常に厳しいバッシングを受けたために、残りの54名は全部秘密に受け取りたいという希望を寄せられました。その結果、我々は公に償いの事業を実施することができずに、秘密裏に償い事業を行いました。

熱くなりまして時間をオーバーしてしまいましたが、問題解決に一番重要案なことは、メディアのこれまでの報道姿勢に対する自己反省、これは日本でもそうですし、韓国のメディアにも自己反省が必要だろうと思います。お互いの国に対する世論があまりに硬化しすぎていますが、その責任の多くはメディアにあるわけですね(会場から笑い)

そのことはメディアが努力して解いていかないと、政府だけに期待しているのでは困難だと思います。ご清聴ありがとうございます。

質疑応答

ー秦先生に質問です。この勧告はマグロウヒル社にどのような形で送るのでしょうか。訪問する可能性もあるのでしょうか。また、どのような反応を期待しているのでしょうか。

また、公の場でこの問題を議論することで、かえってこの扇動してしまうおそれや、事態を悪化させるおそれはないのでしょうか。(ブルームバーグ

秦氏:さっき申し上げたように、マグロウヒル社からは非常に好意的な返事を期待しているんですけれども、そうはならないということも予想しております。

これは出来上がったばかりでございまして、明日か明後日にはマグロウヒルに送ろうと。何で送るかきめておりませんけれども、郵便局へ行って、できるだけ安い値段で送ろうと考えております(笑)。

また、扇動的効果があるかどうかですが、それは私にもわかりません。そうなってから考えます。

ー秦先生の主張では、慰安婦は約2万人だったということですが、この2万人全員がキャンプ・フォロワー、売春婦であったと考えているのでしょうかか。(フリーランス

秦氏:これはオフィシャルな統計がないんですよ。1941年までは日本の外務省があちこちにある領事館で統計を取っておりました。中国、満州、日本の国内、朝鮮においては警察がきちんと統計を取っておりました。

1942
年以降、日本軍が東南アジアに侵攻して以降は、軍の占領統治ということになりますので、外務省の統計がそこできれれいてしまうんです。ですから私は外務省の統計を元にして、色々な角度から計算してみて大体2万人という数字を出したわけです、だいたいがキャンプフォロワーだった、そう考えていいと思いますね。トラックで行ったからキャンプ・フォロワー…とか言いだすときりがないですけれどね。

また、強制連行は韓国には無かったけれども他の地域にあった、ということを、これは朝日新聞なんかも言っているわけなんですね。特に朝日新聞は一昨年、チームを作ってインドネシアとかマレーシアに探しにいったんですね。新聞2ページ潰して報告を出してますけど、結局見つからなかったと。10年前に死んだという慰安婦を見つけた、とかそいういう話ですがね、日本のアクティビストのなかに掘り起こそうとする人がいるんですね。しかし、70年前の犯罪事件は警察もやりません。それに意味のある答えが出てくるとは思いません。
(続く)