続・戦後70年談話はヒストリーで!(26)

(3)自主核の保持と同盟の多角化の必要性

 

国際政治での現実の考え方(リアリスト学派)には、四つの重要なポイントがある。米中露英仏5ヶ国の国家戦略もこれを基礎としている、と言う。反対に日本政府だけが、単純で小児的な「友好と信頼と協調」外交、「謝罪と反省」の外交を繰り返して、米中露からは玩具のように弄(もてあそ)ばれているのである。

1.一つ目のポイント

 

「国際社会は、本質的に無政府状態である」と言うことが、大前提である。

 

現在の国際社会には国際法国連と言う物が存在するが、強国が弱小国を攻撃したり、占領・併合しても、弱小国は無き寝入りするしかないのが現実である。強国は、残虐な侵略戦争や犯罪行為を実行しても処罰されないのである。

 

例えばソ連共産党中国共産党は数千万人以上の民間人を無差別に虐殺しているし、米国もメキシコ、キューバ、フィリピン、日本、ベトナムイラクアフガニスタンなどで450万人以上の非武装の民間人を殺害しているが、一度もその戦争犯罪行為を処罰されていない。国際社会には強国を罰する力がないのである。今年1月のイスラエルのガザ侵攻では、600人以上の民間人が殺害されていると言う。この「パレスチナ問題」では、ここ60年間で誰もイスラエルを処罰することが出来なかったのである。

 

要するに、「強い国は何をしても処罰されない。弱小国が強国の犠牲となっても、誰も助けてくれない」と言うのが、国際社会の特徴である、と結論付けている。

 

即ち「国際社会は無政府」なのである。協調性と依存心が強く、「他国の善意を信ずる」などと言うことは、自国を滅ぼしてしまうことの何ものでもないのである。要は、国際社会には、真の正統性(正当性)を持つ権威や権力や統治機構は存在しないのである、と結論付けている。そしてそのために何をしなければならないか、を考えなければならない。このことが大切なのである。

 

2.二つ目のポイント

 

国際社会の無政府性から当然の帰結として行き着く原則は、

「国家にとって、サバイバル生き残ること)が最も大切な仕事」と言うことである。

 

国際政治学者の研究によると、過去2世紀間に他国からの攻撃や侵略によって消滅したり併合されてしまった国は、51ヵ国あるという。

 

そしてその間の「国家の死亡率」は、24%になると言う。現在の日本は、核武装国に包囲されている。中国、ロシア、北朝鮮アメリカである。そして特に米中のパワー・バランスは、近年頓(とみ)に中国に有利となる方向へ傾いている。そのためこの24%と言うサバイバル率は、既にもっと縮小しているのではないかと、この筆者(伊藤 貫氏)は懸念している。そしてそのために、「国家にとって最も大切な義務はサバイバルである。したがって国家にとって最も大切な政策は国防政策である。」と、シカゴ大学の国際政治学者のジョン・ミアシャイマー氏の論を引用している。そして近代的な国民国家の誕生も、自国を守り自国を存続くさせる為に形成された物である、と論じている。

 

国家にとっての最初の義務はサバイバル、そのために最も重要な仕事は国防政策、そして、国防政策は経済政策よりも優先順位が高いのである。「国防よりもカネ儲けに専心していれば良い」とする「吉田ドクトリン」は、最大の間違いである。そのため国防政策を重視しなくなった日本にたいして、中国の李鵬元首相は、「日本などと言う国は20年くらい後には消えてなくなってしまう国だから、まともに相手にする必要はない」と、オーストラリアの首相に述べている。このことを筆者は、中国の指導者は将来を見通すリアリスト的な戦略性が備わっている、と表現している。

 

李鵬は、1988年から1998まで、趙紫陽の後をついで中国国務院総理(首相)を勤め、1989年と2002にも来日している。Wikipediaによると、1995年頃、日本について、オーストラリアのポール・キーティング首相に、

 

日本と言う国は40年後には無くなってしまうかもわからない(☆1)、あるいは「30年もしたら日本は大体つぶれるだろう(☆2)と言った内容の発言をしたとされている。また、1995年に「日本などと言う国は20年後には消えてなくなる」と発言したと、テレビ番組「TVタックル」(テレビ朝日系)で紹介された、と言う。

 

(☆1)平成7年(1995年)11月8日、第134回国会、国際問題に関する調査会 第2号

自民党の笠原潤一氏の質問

 

「この前、ちょうどAPECを控えて、我が自民党で御承知のようにAPECの問題でアメリカとオーストラリアに行ってもらったんです。そのときに、オーストラリアのキーティング首相がこう言ったんです。中国の李鵬さんと会ったらどう言ったかといいますと、日本とのいろんな話をしたら、いや日本という国は四十年後にはなくなってしまうかもわからぬと、そう言ったというんです。これはうそじゃありません、これはほかの先生みんな行って言っているんですから。」

 

(☆2)平成9年(1997年)5月9日、第140回国会、行政改革に関する特別委員会 第4号

武藤国務大臣の回答の一部で

 

「・・そのオーストラリアへ参りましたときに、オーストラリアの当時のキーティング首相から言われた一つの言葉が、日本はもうつぶれるのじゃないかと。実は、この間中国の李鵬首相と会ったら、李鵬首相いわく、君、オーストラリアは日本を大変頼りにしているようだけれども、まああと三十年もしたら大体あの国はつぶれるだろう、こういうことを李鵬首相がキーティングさんに言ったと。」

 

もう一つの事実を紹介しよう。

(続く)