ならず者国家・中国、アレコレ!(10)

矢板明夫の目】天津大爆発から1カ月 担当者は自殺 中国当局の危機管理能力の欠如を露呈

2015.9.25 06:00

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大規模爆発発生から12日後の8月25日、天津市の窓ガラスなどが破壊された高層マンションの前には、地方政府の幹部らに抗議するため、住民らが集まった(共同)

 中国有数の港湾都市、天津で起きた、死者、行方不明者160人を超える爆発事故から1カ月近くが経つ。現場付近で中国人民解放軍化学戦専門部隊らによる清掃、整理は継続されており、爆発の原因究明はまだほとんど進んでいない。損害賠償をめぐり住民と当局の交渉もまだ続いている。今回の爆発は、中国当局の危機管理能力のなさ、政商癒着など多くの問題を一気に顕在化させ、市民の政府不信をますます募らせる結果となった。

異例の対応長期化

 中国で死者が100人を超える大事故はよく起きる。ほとんどの場合は、当局は迅速に対応し、現場を閉鎖して家族に賠償金を支払う代わりに箝(かん)口(こう)令を敷くなど、情報コントロールを図る。発生から3日ほどですべての処理を終了させるのが通例だが、今回のように対応が長期化したことは異例だ。

 その理由について、天津市当局者はメディアに「生活に影響が出た市民は10万人を超えており、要望を聞くのに時間がかかった。また、現場付近で危険な化学薬品が飛び散っているため、専門家に頼らなければならなかった」などと説明した。しかし、別の市関係者は「縦割り行政で陣頭指揮をとる人がいないのが本当の原因だ」と説明する。

 この件を取材した中国人記者によると、爆発が起きた倉庫は天津市内にあるが、それを実際に管理しているのが交通運輸省の傘下にある天津港務局だ。また、現場に入って救援を担当するのは北京軍区であるため、連携が悪く、意思疎通ができていない。責任を押しつけあう場面も多く、現場は大変混乱しているという。

責任曖昧なまま損害賠償

 中国当局が最も神経をとがらせているのは、自宅が壊れた住民への損害賠償問題だ。爆発が起きた場所は高級住宅地に近く、全半壊した住居は6000戸前後といわれる。彼らは、今回の爆発はすべて政府の責任だと主張し、マンションの買い取りを政府に要求。爆発以降、連日のように対策本部が設けられている天津市内のホテル周辺で、抗議活動を続けている。

 当局は当初、マンションの買い取りを拒否し、見舞金を支払う形で解決を図ろうとしたが、交渉が難航した。その後、住宅を建てた開発業者にマンションを回収してもらう案も浮上したが、これも実現しなかった。9月になってから、ようやく爆発が起きた場所周辺の建物をすべて政府が買い取り取り壊してから記念公園にする方針を固めた。しかし、責任を曖昧にしたまま巨額な税金が使われることに対し、インターネットなどで多くの反対意見が寄せられた。

 また、火の気がないはずの危険物倉庫で火事はなぜ起きたのか。爆発の原因究明はまだ進んでいない。一部香港紙は、共産党内の権力闘争に絡み、テロを含む「人為的な原因の可能性もある」と伝えているが、具体的な証拠はない。

 爆発後、問題の倉庫を所有する会社の幹部と天津市幹部約20人の身柄が拘束された。法令で禁止されている住宅地から1キロ未満の位置にある危険物倉庫の建設許可をめぐり、不正があったかどうかについて調べられているもようだ。

許認可担当者が「自殺」

 共産党幹部の間では、倉庫を所有する企業の背後には地元出身の大物政治家、李瑞環(りずいかん)氏(80=元党政治局常務委員全国政治協商会議主席=の親族がいるといわれているが、責任追及は李氏まで及ばないと見る党関係者が多い。

 行政側の管理、監督責任を問う声はインターネットなどで多く寄せられた。天津市長兼党委書記の黄興国(こうこうこく)氏(60は爆発後の記者会見で「私は今回の事故に対し逃れられない責任がある」と述べ、一時、責任を取って辞任するという噂が流された。しかし、しばらくして、その話は立ち消えとなった。

 黄氏は習近平国家主席62)が浙江省勤務時代の部下で、習主席が信頼できる数少ない側近の中の一人だ。爆発の責任を取って辞めると、政治的に再起は難しいため、習主席が黄氏を守った可能性が大きい。

 826日、倉庫建設の許認可に関わったとされる天津市交通運輸委員会の担当課長が、ビルから飛び降りて死亡した。警察は自殺と発表したが、地元では責任をすべて押しつけられたうえ、口封じのため殺害されたとささやかれている。(中国総局 やいた・あきお)

http://www.sankei.com/premium/news/150925/prm1509250001-n1.html


 

この記事は2015.9.25となっているが、爆発の起こった周辺地域を買い上げて「記念公園」にすることを決めたと書かれているが、例によって、揉み消しではないかとの批判が集中していると言う。

(続く)