ならず者国家・中国、アレコレ!(39)

しかし、事はそんなに簡単な事ではなさそうだ。中央と地方の政府での「一人っ子政策」に対する考え方が、一致していないようだ。そのため「一人っ子政策」を撤廃しても、それがすぐには効果に結びついていかないと言われる。中国政府は一人っ子政策の抜け道を沢山設けているが、出生率は想定以上には上がっていないのが、実情のようである。

 

だから、致命的な労働力不足と言う状況に突入してしまっている現在、一人っ子政策を撤廃してもすぐには出生率が上がると言うものでもないようだし、ましてや出生率がたとえ上がったにしても労働力の解消には20年はかかるものと覚悟する必要がある。

 

だからこの中国の景気後退は長引くものと小生には感じられるが、先ずは次のFINANCIAL TIMESの記事を見るとよい。


 

[FT]遅すぎた中国の一人っ子政策廃止

2015/10/30 14:00
ニュースソース   日本経済新聞 電子版
 

Financial Times FT_ft_both_col

 中国が「一人っ子政策」の廃止を決定した。同政策は数十年の間、海外から批判され国内でも反感を買った近代史の中で最も過酷な社会実験だ。

 中国が国の大半で子どもを1人までしか認めない政策を導入してから30年余りたった29日、国営新華社はすべての夫婦に第2子の出産を認めるという1行の短信を流した。

 

北京市街で子どもにミルクを与える父親。中国は「一人っ子政策」を撤廃し、すべての夫婦に第2子の出産を認める方針を示した=ロイター
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 期間やその他の詳細についての言及はなかったが、4日間の日程を終えた中国共産党中央委員会全体会議を受けての発表だと記されていた。

 同政策によって中国では高齢化が進み、同国経済が減速する中で労働者不足につながっているため、国内では廃止への圧力が高まっていた。

 だが、人口動態の専門家はこの廃止によって人口への大きな影響は出ないだろうと警告した。出生率向上を目的として最近導入した政策もベビーブームにはつながらなかったためだ。

 一人っ子政策はおそらく中国共産党が本土の市民生活に対して数十年行った最もあからさまな日常生活への侵害だろう。就労や居住の場所、その他の事柄について制限を解くという方法で他の私生活への締め付けが緩められているこのときに、一人っ子政策は引き続き厳格に、時に残酷に実施された。

 同政策の廃止の決断は重要かつ象徴的な譲歩であり、中国の多くの一般市民がその決断を歓迎するだろう。それでもはやり、人口の半数以上が人口過多の大都市に住む中国では子どもの養育費が主な理由で、市民の大半が第2子を持たないという選択をするかもしれない。

最近では例外だらけ

 物議を醸した一人っ子政策は、中国共産党が人口が増加の一途をたどるのを恐れて1979に導入した。だが、この政策も最近では例外だらけになっており、人口統計学者はもはや一人っ子政策という呼び名自体が誤りだと考えている。

 2年前、中国政府は夫婦のどちらか一方が一人っ子なら第2子まで出産を認める緩和政策を導入した。それ以前は両親がいずれも一人っ子の場合に2人目が認められていた。また、ほとんどの農村地帯では、もし女児や障害児が生まれた場合には男児か健常児を持つために2人目までの出産を認めていた。

 少数民族も多くの子どもを持つことが認められている。

 中国政府は2013年の政策緩和で約100万人の出生を見積もっていたが、最近の統計はその半数足らずしか生まれていないことを示している。

 一人っ子政策が及ぼす影響について研究する人口動態の専門家、ワン・フェン氏は同政策は不要だったと言う。というのも、実のところ、経済的余裕がでてきたこと、結婚前出産の最低年齢制限、出産間隔の制限などを背景に、中国の出生率が最も低下した時期は一人っ子政策導入前の10年間だったからだ。1970年に5.8人だった出生率79年には2.8人と、半分以下に低下していた。

 ワン氏は「今回の発表は人類史上最も長く実施され、最も代償の大きかった産児制限政策を正式に終わらせるものだ。しかしながら、遅すぎた」とした。その上で、「中国社会全体がこの先数十年間この政策の代償を払い続けることになる」と述べた。

夫婦、申請する義務は残る

 中国人夫婦は依然として子どもを産む前には申請する義務があるため、今後も国による生殖に関する権利への制限は続く。

 現在まで同政策が廃止されなかった主な背景には、政策を実施していた中央と地方の巨大な官僚制度がある。出生計画の担当役人は罰則に関して幅広い裁量が認められていることが多く、住居を破壊したり、違反した夫婦の子どもをとりあげたりすることもできたのだ。

 近年でも多くの農村地帯での一人っ子政策の実施状況はひどいままだ。多くの女性が妊娠検査を義務付けられたり、中絶手術や妊娠後の避妊手術を強要されたりしている。子どもを産みすぎた場合の罰金は世帯年収の3~10倍になることもあり、地域によって大きく異なる。

 今月「フィナンシャル・タイムズ」が訪れた2つの省の村人たちは、国家レベルの緩和政策が発表されても、家族計画に対する規制は厳しくなったと話した。

 2012年には、出生計画を担当する役人がある中国の郡で妊娠7カ月の女性を強制的に中絶させた。生々しい胎児の画像が中国のネット上に広まり、激しい怒りを引き起こした。

By Patti Waldmeir

20151030日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

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http://www.nikkei.com/article/DGXMZO93439720Q5A031C1000000/

(続く)