ならず者国家・中国、アレコレ!(40)

このいびつな政策とそれによる人口構成のいびつさは、人手不足を招きだした。賃金の上昇とそれによる企業の撤退。次の一文はそこらへんの内容を簡潔にまとめている。

 

いびつな人口、成長の足かせ 中国が一人っ子政策廃止

2015/10/30 0:15
ニュースソース
日本経済新聞 電子版

 【北京=山田周平】中国共産党29日、全ての夫婦が2人目の子供を持つことを認める方針を決めた。1979年に導入した「一人っ子政策」のため、近年は高齢化が想定以上に進行していた。いびつな人口構成が労働力不足社会保障費の増加を招き、中長期の成長の足かせになりかねないと判断した。

 共産党は中央委員会第5回全体会議(5中全会)が同日採択した次期5カ年計画の草案に「一組の夫婦が2人の子供を産むことができる政策を全面的に実施し、高齢化に積極的に対応する」と盛り込んだ。実施の時期は明らかにしていない。

 中国では70年代にかけ、人口の多さを国力ととらえた当時の最高指導者、毛沢東氏が多産を奨励し、全土で食糧危機が広がった。毛氏の死後にその反省から、産児制限という世界でもまれな政策を導入していた。

 多産で増えた内陸農村部の割安な労働力90年代には沿岸部の工場に流入し、輸出産業の繁栄を支えた。しかし、2010年ごろからは人手不足から賃金上昇が続き、12年には就業年齢人口(1559歳)が初めて減少するなど、人口構成のマイナス面が目立ち始めていた。

 当局は出生数が少ない地方から一人っ子政策を段階的に緩和していたが、1311月には夫婦のどちらか一方が一人っ子なら第2子まで出産を認めることを決定。当時は年間200万人の出産増につながるとの予測が出ていた。

 しかし国家統計局によると、14年の全国の出生数は1687万人と13年比で47万人増えるにとどまった。このため、当局は次期5カ年計画の策定に合わせ、一人っ子政策を完全に廃止することを決めた。

 中国メディアは今回の措置で「出生数は年間300万~800万人増える」と報じている。ただ、中国も都市部の人口が全体の5割を超え、教育費の高騰などに悩む夫婦も多く、今回も予想に達しない恐れがある。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM29H88_Z21C15A0FF1000/

 

 

ただしこの「一人っ子政策」の撤廃は、夫婦が自由に子供を生むことが出来る、と言うものではない。「一人っ子」が「二人っ子」に変わっただけで、出産を国家が管理していることには変わりはない。なんとまあ、むさくるしい国であることよ。

 

当然ここにも既得権益からの抵抗も激しかったようだ。

一人が二人に代わっただけで、計画出産には変わりはない。そのため罰金を取り立てる「計画出産委員会」と言う既得権益組織は存続している。状況には変わりはないのである。中国には自由はないのである。だから、「そのうち二人目出産が義務化される」「二人目を出産しないと罰金が科されるんじゃないか」と揶揄する声がネット上には散見されるようなことになる。

 

 

中国「二人っ子政策」、それは“朗報”ではない「国家管理出産」では経済減速を乗り越えられない

2015114日(水)福島 香織

 

 中国でおよそ35年間続いていた"一人っ子政策"が廃止された。これからはどんな夫婦も二人まで出産してもいい"二人っ子政策"になるという。これは目下、目立った成果が報じられていない五中全会(18期中央委員会第五回全体会議)で決定されたほぼ唯一の"朗報"であり、とりあえず歓迎の声で迎えられている。

 早速、"ご近所で子づくりに励む声が聞こえる""二人目解禁になってから、夜の微博の書き込みが減った"といったつぶやきがネットの上で散見され、東京株式市場でも紙おむつや粉ミルクなど新生児関連の株価が上昇した。来年は中国でベビーラッシュが起きるであろうと言われている。なので、ポジティブなニュースとしてとらえられるべきなのだが、ここであえて懸念もあることをまとめておきたい。

五中全会「唯一の朗報」が抱える懸念

 五中全会は25日から29日まで開かれ、最終日にコミュニケが採択された。蛇足ながら中央委員会全体会議は中国において毎年秋に開かれ、翌年以降の重要政策および人事を決める党中央の最重要会議である。毎年春に行われる国会もどきの全人代全国人民代表大会には実は政策も法案も決める実質的権限はなく、中央委員会全会の決定をなぞるだけである。五中全会の最大の注目点は第13次五か年計画の内容と政治局人事であったが、人事も経済成長目標も打ち出されなかった。おそらくは人事と経済数値については議論が紛糾したまま、まとまらなかったのだろう。

 だが、その代わり、「人口バランスの発展を促進し、計画出産育成の堅持を基本国策とした上で、人口発展戦略を完璧なものとするために、一組の夫婦に二人の子供を出産育成する政策を全面的に実施し、人口老齢化に積極的に対応していく」という一文がトップニュースになった。

 これを受けて、国内外メディアは一胎化政策(一人っ子政策)廃止と大きく報じた。

 一人っ子政策問題は1970年代末に段階的に導入され、80925日の「人口増加抑制に関する問題で全共産党員・共青団員に対する公開書簡」の発表をもって正式に全国での導入が推進された。

 中華民国時代4億人であった人口が1980年にはおよそ10億人に急増し、60年代からすでに人口急増は中国政府の課題であった。この人口の急増が食糧不足を引き起こし、社会の現代化を大幅に遅らせるという問題提起が70年代からさかんになり、文革終了とともに試験的に導入が始まっていた。


(続く)