ならず者国家・中国、アレコレ!(43)

要は、特効薬のような今すぐ処方できる薬はない、ということなのであろう。根本的な解決策しかないということ。完全な構造改革が必要、そんなことを頭において次の成長要因がらみの問題に移ろう。

 

それは都市化が問題ならば、何も都市だけにこだわらずに地方で産業の発達させればよいのではないか、そうすれば経済成長は続けられるとの考えもある。

 

それには都市部から内陸部へ産業を移転させればよい。そんな発想も生まれてくると予想されるが、それは果たして可能なのかはなはだ疑問でもある。内陸部が都市部のように経済発展をしてくれればこの上もないことだが、そうは問屋が卸してくれないのだ。

 

 

(2)内陸部への産業移転

 

中国は広大であるので、都市部が飽和すれば内陸部へ産業を移転させれば経済成長は維持できるのではないか、と言う発想が生まれてくるのは自然のことである。

 

これも津上俊哉氏は、楽観を許さないと結論づけている。

 

その理由の第一は、いくら沿岸部が飽和したからといってもまだまだ都市部の強力なインフラ資産には利用価値があるのだと言う。「今日発注すれば明日には届く」と言った物流ネットワークなど、無形だが強力なインフラは相当魅力な資産なのだという。

 

第二には、内陸部や東南アジアにはそんなインフラはまだ整備されていないうえに、法治・社会制度の不備や意識・文化の遅れや違いなども、移転の妨げとなる。

 

第三には、たとえ移転できたとしても移転してできたその穴はどのようにし埋めてゆくのか、と言った政策が見当たらないことだ。加工貿易で栄えた華南の東莞市などは、今は軒並み空き家が連なっているという。空洞化するのだ。そこへ何の産業を持ってくるか地元政府がおせっかいしても、結局はうまくゆかないので、地元政府は企業が動きやすい環境を作ってやることが第一だと述べている。しかし地方政府にはそんな考えは持ち合わせていないようだ。

 

だから産業移転による経済成長の牽引は、あてにはならないということ、しからば今の中国では、企業による「技術革新」による経済成長はありうるのか。

 

 

(3)自主創新・イノベーションに頼れるのか。

 

習近平は、2014.11APECの商工サミットの場で、すでに新常態の説明でイノベーションによる成長の必要性に言及している(2015.12.22NO.26参照のこと)し、更には2015.10の第18期中央委員会第五回全体会議(五中全会)で、第13次5か年計画の目標として2020年「小康社会」の達成させるとして、そのため5つの原則を示している。それは次の5つ、イノベーション革新的発展)」、第2「釣り合いのとれた発展(協調)」。以下、「環境に配慮した発展(緑色発展)」「開放的発展」「共に享受する発展(共亨)」と続く。その第一に「イノベーション」が必須だと宣言している(2016.1.13NO.33参照のこと)。

 

だから中国は、これからの経済成長にはイノベーション・技術革新が絶対に必要だと判っているようだ。「ルイスの転換点」を通過し、「中進国のわな」にハマっている中国にとっては、このわなから脱却する手段としては技術革新・イノベーションしかないことは、重々理解している。

 

中国は「世界の工場」と煽てられているが、これは反面、多国籍企業の下請け的存在でしかないのである。例えば、「中国の台頭の終焉」の223頁では、津上俊哉氏はiphoneの例を挙げての次のように記述している。

 

中国で行われるiphone組み立て工程に支払われるコストは6.5ドル分、1179ドルの製品原価の3.6%分しかない。製品原価の34%に相当する61ドル分を日本の電子部品が占めるのに比べて、何と割の合わない「世界の工場」であることか。こんな付加価値の低い組み立てをいくらやっても、うだつが上がらないが、中国の輸出額の半分はこういう(賃)加工貿易なのである。

今後の成長にとって必要な生産性向上と同じ意味合いを持つのが、付加価値の向上だ。中国は「世界の下請」から脱却するために「自主創新」を国策とし、科学技術研究や研究開発(R&D)助成への予算投入を急激に増加している。

 

 

しかしこの中国の国を挙げてのR&Dや科学技術研究には、少なからずの違和感があるとと言っている。

 

その一つは、この「上からの」予算投入には、中国社会の実情から逃れられない致命的な問題点が存在するのではないかと、言っている。

 

それは、巨額の金が動くところには、必ずや利権や情実が伴う、ということだ。必ずや官民の癒着が起こり、腐敗の温床となりやすく、効率的にことが運ぶには難関が多すぎるのだという。

 

その二つ目は、いま中国にとって必要なことは、本当に「自主技術」なのかということである。「自主技術」向上以外に付加価値を向上させる術はない、と言うことではないのではないか。

 

事実、韓国や台湾は「自主技術開発」で成長してきた訳ではない。ハイテクでない技術でも、自主製品を持つことで、成功する余地は大いにある。

 

と言うことは、営業部門顧客のニーズを正確にくみ取り、それを迅速かつ正確に生産に反映でき、顧客の望む製品をいち早く市場に投入することができれば、これはこれで付加価値を多く得ることが出来るのである。いわゆる商売の王道を全うすれば、自主創新に頼らずともおのずと経済は大きくなってゆくのである。

 

要は民間企業の活力を活発にすることである。企業の取り分を増やして資本の蓄積を促し、私有財産保護への不安をなくせば、中国経済ももっともっと大きくなってゆくはずである。

 

しかし国有企業が幅を利かせている中国の現状では、これも詮無きことかもしれない。

(続く)