ならず者国家・中国、アレコレ!(46)

さて、次は昨年の2015.9.3の「中国人民抗日戦争勝利および反ファシズム戦争勝利七十周年記念式典」の話に移ろう。ここでは、通常は101日の国慶節に執り行われている軍事パレードが大々的に行われた。

 

中国の国慶節は、天安門広場にて、毛沢東により中華人民共和国の成立が1949.10.1に宣言されたことにちなんで、1950.10.1に制定された建国の記念日である。この日を挟み、一週間が連休となる。


 

この軍事パレードは、Wikipediaによれば、1950年の第1回国慶節から1959年の第10回の国慶節までの10年間では、毎年行われていたが、その後中断した。その後第35回国慶節1984年に、中断後の最初の軍事パレードが行われ、以後1999年の第50回国慶節、その10年後2009年の第60回国慶節に、軍事パレードが行われている。だから基本的には、この軍事パレードは10年毎に執り行われてしかるべきパレードなのである。


そうすると次回の軍事パレードは、2019第70回の国慶節となってしまう。

 

これでは、習近平にとっては、困るのである。世界に、中国共産党には習近平あり、と示したくて示したくて仕方がないのである。

 

習近平は、2012.11.14~15、第18期中央委員会第1回全体会議(1中全会)で共産党総書記中央軍事委員会主席に就任し、翌年の2013.3.5~17の第12全国人民代表大会国家主席に、正式に就任している。

 

例の腐敗撲滅運動も佳境に入って、習近平は名実共に中華人民共和国の顔になってきた、と本人も感じているに違いない。ここで一発、世界に「習」ここにあり、と示さなくては、と思ったとしても不思議はない。いくら株価が乱高下しようが、腐敗や貧困が蔓延(はびこ)ろうが、そんなことは知ったことではない。文句を言う奴らは、大半は牢屋にいれてある。後は台湾の蔡英文だ。


 

軍事パレード、習近平の真意はどこに?

遠藤誉 | 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博

201582770分配信

抗日戦争勝利記念日の軍事パレードは中国建国以来初めてだ。狙いの一つは台湾総統選挙への威嚇だが、もう一つは国内統治問題にある。西側諸国のリーダーに参加させて威信を高めようという習近平の狙いは失敗した。

某中国政府関係者に対する取材を通して分析する。

◆最初は中露会談から始まった

201426、ロシアのソチで開催されていた冬季五輪開会式に参加した習近平国家主席プーチン大統領と会談し、2015年の抗日戦争勝利70周年記念式典に関して話しあった。会談後習近平国家主席は「私とプーチン大統領は、2015年に世界反ファシズム戦争ならびに中国人民抗日戦争勝利70周年記念行事共同で開催することを決定した」と述べた。

一方、プーチン大統領は「欧州のナチス勢力によるソ連など欧州諸国への侵略および日本軍国主義が中国などアジア被害国の人々に対して犯した重大な罪が忘れ去られてはならない。中国側とともに努力して世界反ファシズム戦争ならびに中国人民抗日戦争勝利70周年記念表示の成功させたい」と表明した。

筆者が取材した某中国政府関係者によれば、このとき北京における70周年記念日で軍事パレードを催す方針が確認され、201558日にモスクワの赤の広場で催される反ファシスト戦勝70周年記念に行われる軍事パレードを是非とも参考にしてほしいということが話されたという。

習近平国家主席プーチン大統領2014年だけでも10回以上会談している。

ウクライナ問題で窮地に立たされたプーチン大統領としては軍事パレードに関して徹底的に習近平国家主席を支援することによって、中国をしっかりロシア側に引き寄せておきたい思惑があっただろう。

習近平国家主席の野望と狙い

しかし習近平国家主席としては、ロシアもさることながら、日本を含めた西側先進諸国のリーダーたちが93の北京における軍事パレードに参加してほしいという強い渇望があった。

そこで先ずは経済で西側諸国を中国側になびかせようとして、AIIBアジアインフラ投資銀行一帯一路(陸と海のシルクロード)などを全世界に呼びかけて、イギリスをはじめとしたヨーロッパ先進諸国の取り込みを成功させた。

日本とアメリカは参加しなかったので、大きな狙いは叶えられなかったものの、それでもヨーロッパ先進国を含めた世界の数十カ国もの国が、中国の経済力に魅せられて友好関係を保とうとしていることは、習近平国家主席にとっては、非常に心強い踏み台となった。

2015年6月23日、国務院新聞弁公室は記者会見を開き、93の「中国人民抗日戦争と世界反ファシスト戦争勝利70周年記念行事」に関する詳細を説明するとともに、当日、軍事パレードを行うことを発表した。

抗日戦争」の前に「中国人民」を付けたことはいくらか評価できるとしても、それでも「抗日戦争は国民党軍が主として戦い」、「新中国は、その国民党軍を倒して誕生した国」である。

だから抗日戦勝記念日に、「中国共産党政権」が軍事パレードを行うのは適切でない

この点に関して筆者は「おかしいだろう!」と先述の某中国政府関係者に咬みついた。

すると意外にも某氏は「わかっている」と回答したのだ。

これには驚いた。

人生最後の賭けに出て、筆者は真実をすべて明らかにしようと命がけだ。某氏の「わかっている」という言葉に、ある種の感慨を覚えた。 彼らは「わかって」、やっているというのか――?

「それならなぜ、抗日戦勝記念日に軍事パレードなどやるのか?」

筆者は引き下がらなかった。

某氏は声を落しながら、「中国は長いこと欧米列強の植民地だった。だから、今、いかに強大になったかを示したいのだ」と言う。

「それならば、国慶節(建国記念日)にやればいいではないか。抗日戦争中、主戦場で戦っていなかった中国共産党軍が、その戦勝記念日に軍事パレードを強行するのは、何としても適切ではない」と筆者も譲らない。

結果、某氏は、中国の本音を漏らした。

「実は、中国としては、この軍事パレードに日本とかアメリカをはじめとした西側諸国のリーダーに参加してほしかった。そうすれば、中国人民に中国共産党統治能力の高さを示すことができる。世界一流の国のリーダーたちが中国人民解放軍の軍事パレードに参加してくれれば、軍を管轄する中国共産党の権威も高まるではないか……」

(続く)