ならず者国家・中国、アレコレ!(61)

また2014.3.18に始まったひまわり学生運動」は、香港へも飛び火している。2014.9.26に始まったいわゆる「雨傘革命」(Umbrella Revolution)と呼ばれた反中国政府デモである。

 

ご承知の通り香港は、1997にイギリスから中国に返還されたが、その時に「返還から50年間」は、外交・防衛を除く分野で高度な自治を保障する「50年不変の原則」が約束されている。それが「一国二制度」と言われるものである。

 

1997年から2047年までの50年間は、この「一国二制度」が維持されなければならないことになっている。しかしそれを守らなければならない主体は、共産党中華人民共和国であるので、果たしてそれが忠実に守られてゆくかは大いに疑問のある所でもある。

 

それまでの香港市民の反発を受けて、2017に実施される香港行政府の長官選挙では、18才以上の香港市民に行政長官選挙の投票権を与えることとなったいた。しかし中国政府は2014.8.31に、行政長官への立候補者は中国共産党の意向に沿った「指名委員会」なる組織によって選定されることとし、自由に投票はできるが立候補者は中国共産党の指名する候補者だけとした。この結果事実上自由な選挙が出来なくなることとなってしまった。

 

そのため2011年に設立された1990年代生まれの(当時)中学生を主体とする学生運動組織「学民思潮」などが中心となり、学生を動員して授業のボイコット運動を開始して、「指名委員会」への反対運動を始めた。

 

2014.9.26には学生を中心とする授業のボイコット、並びにデモが行われ、そのうちに香港繁華街が学生団体に占拠された。そのため武装警察は催涙弾など使用して、デモ隊の排除を開始したが学生たちは無抵抗姿勢を示して傘などで催涙弾を防いだために、「雨傘革命」などと呼ばれることとなった。

 

学生、教授、市民、議員など香港全体を巻き込んだこの「雨傘革命」は、2014.12.15銅鑼湾の大通りでのデモ隊の強制排除をもって一応終結したが、行政長官の自由な選挙実施の決定には至らなかった。

 

この運動で注目すべきことは、中国政府による徹底的なインターネットの管理であった。中国政府はあらゆる手段を講じて、ネットによるデモの拡大を阻止したのである。

 

そしてこの結果香港の民主化は遠退いてしまったとの認識が広まってしまったが、2015.6.18に香港議会でのこの「制限選挙法案」が圧倒的多数で否決されたことで、雨傘革命運動の勝利とみる向きもある、とwikipediaには記述されている。しかし共産中国政府のことである、2017年の選挙までに何かをしでかすことに違いないのであろう。

 

香港では鬱積した思いがくすぶっているようで、学生リーダーたちは再度の抗議活動を計画していると言う。http://diamond.jp/articles/-/65558 などを参照のこと。)

 

 

その点、台湾の場合は直接的には支那中国の支配は受けていないが、経済的には中国との関係が強く、各種の制約を中国から受ける可能性があるので、蔡英文も大変である。

 

 

台湾総統選で蔡英文勝利、習近平の次の一手は?

2016129日(金)The Economist

 

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蔡英文氏の勝利は中台関係に何をもたらすのか(写真:ロイター/アフロ )
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 中国共産党の第1世代の指導者たち、つまり「長征」を経験した世代は台湾を「再統一」する日を今か今かと待っていた。中国の内戦は1949年、敗れた国民党が「最後の砦」である台湾に落ち延びることで終結した。このとき中国政府がなし得なかった台湾併合という仕事は、未熟な後継者に任せるのが難しい「聖域」となった。

 長征経験者たちが全てこの世を去った後も、台湾はその名称を除いて実質上の独立国である。再統合する期限も定められていない。2013中国共産党5世代指導者にあたる習近平国家主席は、この件について中国が痺れを切らしており、次の世代まで先送りすることはできないという姿勢を示した。習国家主席は台湾に対して政治対話を求めた。

 だが今年(2016)116に台湾で行われた総統選の結果は、こうした会談――ひいては両者の統一そのもの――の実現がこれまで以上に遠のいたことを示唆するものとなった。現在、中国は過去数百年で見られなかったほどの大きな力をつけている*。習国家主席はここ数十年の中国指導者の中でもずば抜けた権力を持つ人物だ。けれども、その習国家主席をもってしてもこの状況で何ができるかは明確でない。
*
:原文のまま訳した

 中国は今も、台湾が正式な独立を宣言しようものなら力ずくで統一すると威嚇している。中国の指導者にとって、最終的な再統一は決してあきらめることのできない目標だ。習国家主席にとって台湾の再統一は、国家の誇りと名声の完全な回復を目指す「中国の夢」構想の一環でもある。

平静を装う中国政府

 だが中国は台湾に対してときに驚くほど現実的なアプローチをとっている。冷戦時代には台湾への砲撃を一日おきに計画していた。関係が比較的良好な時代には、両者は公式な協定を結ぶことなしに経済関係を発展させてきた。

 ここ数年、中国の台湾戦略は強硬策というより協調路線の色合いが濃かった。とりわけ2008年に馬英九(国民党)氏台湾総統に就いてから8年の間には、中台間の経済統合を進める協定が相次いで成立した。だが台湾経済の活性化を図った国民党の親中路線は台湾の人々の支持を得ることができず、この度の選挙で民主進歩党民進党圧倒的勝利を許す大きな要因となった。民進党は台湾独立運動にルーツを持つ政党である。

 したがって、今回の選挙結果は台湾がいよいよ「中国の一部」になるという可能性を否定するものだ。このため中国は困り果てている。中国がさしあたって見せている公式な反応は、劇的な路線変更をうかがわせるものではない。中国の国営メディアはこの選挙が独立という「妄想」の是非を問うものではないと指摘した。

 実際、台湾の次期総統となる蔡英文民進党)氏状況の安定と現状維持を掲げている。それを受けて中国は、同氏の勝利は自らの政策が成功していることを裏付けるものだとうそぶいている。民進党といえども中台関係の進展を後戻りさせることはできないし、いずれにせよ民進党政権は長続きせず、さながら「流れ去る雲」のごとし、というわけだ。前回、民進党2000年から2008年にかけて政権を握ったが、陳水扁による統治は悲惨な終焉を迎えた。同氏は総統選で馬英九氏に完敗したあと、収賄罪で投獄された。


(続く)