米軍は自国の空母の弱点を中国に明かしていた
中国が「秘密裏に行った」というのがなおさら気になります。
ピルズベリー:秘密裏に、というのは各国に事前通告もしなければ、撃ち落とした意図についても一切説明をしていない、ということです。この気象衛星を撃ち落としたことについては話したいことがありますが、その前に米軍の由々しき事態をもう一つお話しましょう。
中国軍の人たちが、米海軍との交流の一環で米空母を訪問した時のことです。その時、米軍側は「米国の空母はどれも4つの原子炉で動いていて、時速30ノッチと非常に速いスピードで進む。100機の飛行機を搭載できるので、どこへでも行けて、爆撃しようと思えばいかなる国、場所に対しても攻撃することができる」と説明しました。
すると、空母内を案内されていた中国軍の将校が「素晴らしいですね。私たち中国軍には決してこんなものを造ることはできないでしょう」と言ったうえで、「ただ、もしこの空母にあえて弱点があるとすれば、何でしょうか」と聞いてきた。
これに対し、米軍将校は「問題はあります。空母の側面は非常に厚みがあるので、いかなる攻撃にも耐えられるが、底が薄い。私たちの空母は、爆弾をすべて底に保管しています。空母には5000人近くの乗員がいるため、そのスタッフから少しでも距離を置くためです」と回答したというのです。
その後、中国はロシアが「船跡追尾魚雷」という特殊な魚雷を造っていること突き止めたといいます。これは発射されると、空母が通った跡の波である船跡を感知して、その空母の下に入ってから上に向きを変え、攻撃するという魚雷です。
今の話が何年前のことだったのか分かりませんが、中国は旧ソ連製の空母を購入し、これを改修して2012年に「遼寧」と名付けて配備しただけでなく、同年、上海の造船所で国産空母の建造にも着手し、2020年までに就役させる計画といいます。軍事的脅威は高まるばかりです。
ピルズベリー:確かに米国でも中国軍に対する認識は変わりつつあります。特に今年、中国からの数度にわたる大規模なサイバー攻撃により一般米国民の間でも、警戒感が出てきています。
ハリウッド映画にまで影響を与え始めた中国
6月と7月の米人事管理局(OPM)へのサイバー攻撃では、計2500万人の連邦政府職員(退職した職員も含む)の社会保障番号などの個人情報が盗まれたと報道されました。
ピルズベリー:私の情報も流出したということです。さて、先ほど中国が気象衛星を撃ち落とした件について話しておきたいことがあります。
あの実験により、3000片を超える破片が発生し、それが今後何十年も低い軌道上を周回する、と言われています。2013年に公開された映画『ゼロ・グラビティ』をご覧になりましたか。あの映画では、ロシアが用済みになった衛星をミサイルで爆破し、そのために生じた大量の破片がジョージ・クルーニーらが演じる宇宙飛行士の乗ったスペースシャトルにぶつかったという設定になっています。おまけに、最後、サンドラ・ブロックが演じる女性宇宙飛行士は中国の無人宇宙ステーションに保管されていた補助燃料タンクを借りてなんとか地球に帰還するというストーリーになっていて、ロシアが「悪者」、中国が「英雄扱い」されています。
しかし、ロシアが自国の衛星にミサイルを撃ち込んだことは過去、一度もありません。あの映画の脚本家たちは、宇宙で起きたことと起こり得ることをあえて歪めた、ということです。なぜか。世界一の人口を有する中国では、莫大な数の人が映画を観て、それがハリウッドの映画会社に巨利をもたらす。ビジネスならば当然なのかもしれませんが、こういうケースが蓄積していくことに懸念を覚えます。
米国のビジネス界では中国の市場の大きさゆえに、中国にマイナスになることを控える自主規制が働いているということでしょうか。しかし、こういう話が増える、あるいは今回のピルズベリーさんの本を多くの人が読めば、たとえそれがピルズベリーさんの意図ではないにせよ、反中の思いを深める人や反中国に転じる人はますます増えることになります。それは決して何かの解決に結びつくとは思えません。どうすればいいのでしょうか。
ピルズベリー:本に米国が取るべき12の方針を書きました。その多くは日本にも参考になります。それについては次回、お話しましょう。
(第4回に続く)
https://www.youtube.com/watch?v=97_SEQmJPfA
キーパーソンに聞く
日経ビジネスのデスクが、話題の人、旬の人にインタビューします。このコラムを開けば毎日1人、新しいキーパーソンに出会えます。
http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/interview/15/238739/091800056/?P=1
中国の思うように進んだ時の2049年にはどんな時代となっているのであろうか。
第九章の「2049年の中国の世界秩序」には次のように記載されている。そこには10の危機が表現されている。
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中国の価値観が、アメリカの価値観に代わって、世界に満ちていることになる。
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中国はインターネットの検閲を全面的に実施している。
このことをスラングで「和諧」と言うらしい。検閲どころか偽情報まで世界に流している。そしてその仕組み(ハードとソフト)を世界各国に供給までしている。 -
中国は民主化に反対し続ける。独裁政権を援助し続けており、アフリカ諸国が格好の支援先だ。
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中国はアメリカの敵と同盟を結ぶ。
中国は、アフガニスタンなどのタリバンや国際的なネットワークのアル・カーイダに各種の援助を与えている。2001年の9.11の一週間後にもタリバンとアル・カーイダに武器を供給していた。イラク戦争の時も、中国はサダム・フセインに光ファイバーシステムや防空ネットワークを提供していた。 -
中国は深刻な大気汚染を広め、世界の終末を早める。
このことを「エアポカリプス」(大気+終末の造語)と言っているようだが、中国の1990年~ 2050年のCO2の排出量は、およそ5,000億トンになり、産業革命から1970年までの全世界でのCO2排出量とほぼ同じ量となる。したがって2049年の世界は、文字通り”死の空気”の中に沈んでいることになる。 -
中国の成長戦略は深刻な水の汚染と枯渇を引き起こす。
中国の地下水の55%が飲用に適していないし、中国の河川の40%がひどく汚染されているという。このことを中国人は知らない。情報統制とネット検閲のせいで、正しい情報が行き渡っていない。 -
中国の工場付近にがん村の存在。
この数十年に中国でがんになった人の数は、他の国すべてでがんになった人より多い。中国での化石燃料、有毒化学物質、その他の汚染物質の使用も、想像できないほど巨大なのだ。しかも市民社会が存在せず、そのことに反対する人々もいない。 -
欺くものが勝つ。中国は世界最大規模の知的財産の窃盗犯となっている。
そして世界が遵守しているルールを何十年も無視し、独自のルールで行動している。中国は海外の技術を無理やり奪うのに加えて、競争の場を国有企業に有利なようにしている。 -
中国は、現在の国際的政治秩序を守ろうとはしていない。
中国が支配する世界では、健康・労働・通信・金融・治安・貿易などを話し合い現在の諸機関や仕組みは存続していない可能性がある。上海協力機構やAIIBなどは、中国流の世界支配の手段となろう。中国は、国連やWTO世界貿易機関までも、自己の支配下に置こうとしている。
(10) 中国は営利目的で兵器を量産する。
中国は弾道ミサイルをパキスタン、イラク、シリア、
リビア、北朝鮮に移送し、核兵器の部品をパキスタン
やイランに売っていた。リビアには核爆発を起こす爆
弾を作る中国語の手順書がが見つかっている。
しかも何年にもわたってパキスタンの核兵器科学者
と協力していることがそれらの書類で明らかになって
いる。
(続く)