車載式排出ガス測定システム(PEMS)を用いた路上走行等における排出ガスサンプリング調査対象車種について
平成27年12月22日
http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha10_hh_000158.html
実際の試験は、上記の対象車種の発表が年末(H27年、2015.12.22)なので、今年(H28年、2016年)になって行われたのであろうが、その結果が(http://www.mlit.go.jp/common/001121838.pdf)で発表されている。
結果は、台上試験ではNOxの排出量は基準値以内であったのであるが、路上試験の結果では
基準値の2~10倍の排出量であり、かなり基準値を上回っているもののこの場合の基準値がないので、不正ではなく違法なソフトウェア(defeat device)の搭載もなかった。
しかしマツダのディーゼルだけは路上試験でも基準値以内を守っているので、大したものである。
NOx排出、走行中も規制 屋内基準超えで
毎日新聞2016年3月3日 22時27分(最終更新 3月4日 01時44分)
国土交通省と環境省は3日、国内メーカーのディーゼル車の走行中の排ガス検査で、3社の計4車種が屋内検査基準の最高10倍の窒素酸化物(NOx)を出したと発表した。現在は、走行中の排ガス規制の基準はないため、違反にはならないものの、国交省などは今後、走行中の基準も作り、規制に乗り出す方針だ。
ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題を受け、国が走行中の排ガス検査を初めて実施した。トヨタ自動車、日産自動車、マツダ、三菱自動車のディーゼル車計6車種を2015年12月〜今年2月に調べたところ、トヨタ、日産、三菱自動車の計4車種で、走行検査のNOx排出量が屋内で台上に車体を固定して行う検査での基準を2〜10倍上回った。
NOxを減らす装置は、外気が低温の状態で作動させるとエンジンを傷める恐れがあるため、装置が自動的に停止する仕組みになっている。国交省は今回の走行検査が冬場に行われたため「低温で装置が停止したためとみられる」と説明している。また、渋滞時や急発進時でも、排出量は増えた。屋内検査だけ排ガス装置を動かす違法ソフトを使っていたVWのケースとは異なり、欧州当局が行った屋外試験でも、VW以外の車で基準を上回るNOxが出ていた。
走行中でも屋内基準の水準をおおむねクリアしていたマツダの2車種は、NOx削減装置だけでなく、エンジン内の燃料の燃焼段階でNOxを減らす独自技術を使っているという。
今回基準を上回った3社については、走行中の規制基準がないため排ガス規制違反にはならないものの、国交省は走行中に多くのNOxを排出することを問題視。今後は走行中の基準も作る方針で、メーカー側も対応を迫られそうだ。欧州当局は走行中の排ガス規制基準を、屋内検査での基準の1・5倍で新設する方針を決めており、国交省も同程度の基準を検討する。【山口知】
http://mainichi.jp/articles/20160304/k00/00m/020/076000c
そしてその結果は
資料1-2
排出ガス路上走行試験等結果取りまとめ
(国産自動車)
http://www.mlit.go.jp/common/001121838.pdf
として発表されている。このpdfには日付が入っていないのが残念であるが、その2ページのグラフを示す。
見事マツダの2車種、CX5とデミオだけは路上走行試験でもNOxの排出はほゞ基準値以内にとどまっている。大したものだ、だからトヨタもマツダとテーマを定めない包括的な業務提携関係を結んだものであろう。
さて少しわき道にそれてしまったが、この章のテーマは「VWはなぜ排ガス不正に手を染めたのか」であった。
2005年頃には、VWもディーゼルエンジンの排ガス対策に相当手を焼いていたようで、対策を施すととても高価になってしまう。そのため対米向けは(と言うよりもディーゼル全般は)違法ソフトで対処しようと言う気になっていったらしい。ディーゼルエンジンの場合、排ガス対策を実施するとコストがアップししかも燃費が悪くなり、燃費をよくしようとすればNOxの排出が多くなる、と言うジレンマが生ずるのである。VWはコストをケチり燃費を取って排ガス対策を捨てたようなものだ。はなはだ環境によろしくない。
そして実際にその不正に着手したのは、2007年にマルティン・ヴィンターコーンが社長に就任した後のことであったようだ。
それと言うのもマルティン・ヴィンターコーン社長は、就任早々拡大路線を打ち出していたからである。当時のVWの販売台数は、2007年、2008年と600万台強であった。それを2018年には一千万台と言う目標を設定してトヨタを抜いて世界一になる、と宣言したのである。
ご承知の通り、VWのアメリカでの販売は2%そこそこで、Audiを含めても高々3%であった。VWの販売台数は、中国とEUでそれぞれ4割前後を稼ぎ、アメリカでは数%しか販売されていない。だから米国での販売増は、当時としては至上命題並みの必達目標であったのではないのかな。
(続く)