低いルーフとノーズを実現した4代目プリウス。リッター40kmの燃費をたたき出した
新型プリウスのタイヤハウスとドアの間は驚くほど短い。ペダル配置が心配になってくるが……
新型プリウスのペダル配置。ブレーキペダルのセンターは多少左よりだが、ペダルのサイズでカバーしている
TNGA46のこと
これでは原稿にならないなぁと思いながら念のためにトヨタの企業サイトへ入ってみる。ここには「トヨタの最新技術」という項目があったはずである。そしてここにそのものズバリ「TNGA」の項目があることを発見した(関連リンク)。
http://gazooracing.com/pages/special/tnga/?ptopid=men
このページにはTNGAが取り組んだ46項目の内容が収められている。トヨタはこれまでこういうコミュニケーションのやり方をしなかった。トヨタのプロダクトや技術そのものを饒舌に語ることはなく、むしろレクサスのCMに見られるようなイメージ先行の商品紹介を軸にしてきた。ところがそのコミュニケーション方法が大きく変わった。エンジニアが積み上げた膨大な数の改善をこれでもかというほどきっちりと取り上げているのだ。
この46項目は読んだ方が良い。と言っても面倒臭がって読まない人のためにいくつか内容をピックアップしてサマリーしておこう。
02. 全ての開発はドライビングポジションから
理想のドライビングポジション実現のためにシートとステアリングの関係を徹底的に見直した。
03. 新型シートが生み出す、クルマとの一体感
理想的なドライビングポジションと安全性、静粛性を両立させるためシートを後ろへ40mmズラした。後席の居住性に問題を出さないためにシートを薄型化した。
05. ステアリングが伝えるべきもの、伝えてはならないもの
ステアリングは情報伝達の要だ。タイヤからの情報を残しつつ、不快な振動をカットし、衝突時の衝撃を吸収するためにステアリングを保持する部分の強度を上げた。
18. 小さな心臓?コンパクトパワートレーン?
エンジンなどのパワートレーンを5年越しで設計し直し、コンパクト化。ボディデザインの自由度を高めた。
23. より広い視界を確保するために
ボンネットを下げたことでフロントウィンドーの下端をより低くした。これにより、より広い視界を実現した。
25. 拡幅されたトランクルーム 広がる遊びの可能性
リヤタイヤの位置ギリギリまで横幅を広げたことにより左右幅が115mm広がった。
27. HVバッテリーの移動が可能にしたもの
従来トランクにあったHVバッテリーをコンパクト化し、リアシート下に移動。スペースの拡大と、低重心化に寄与。
31. 床下のデザインが底上げする燃費性能
アンダーカバーの徹底したフラット化と、穴を減らしカバー範囲を拡大することでボディ下面の整流を行い燃費を向上させた。
33. 目には映らないボディの進化
新しい環状構造や溶接、接着などの接合技術の改善によってねじり剛性を60%向上。
40. クルマの慣性諸元から走りを変える
あらゆる部品の重心高、前後左右の重量差などを動的な状態で検討し、最適化させることで走りを向上させて。
41. 「運転、うまくなったね!」
同乗者からそう言われるクルマを目指し、運転しやすく、操りやすいクルマに仕立てた。
この46項目は筆者の目から見る限りほぼ全て正しい。「ほぼ」というのは「開発は喧嘩だ」のような、エンジニアリングの話ではない精神論も織り交ぜられているからで、そこはまあ「広告だから」と見逃すべきところだろう。
しかし、本当にこうなったら喜ばしい限りである。少なくとも、これらを読んでから筆者のトヨタに対する期待は高まるばかりである。かつて「大事なのはスタイルだけだ」とドライな発言をしたトヨタが、あれもこれも欲張って、全てを良くするために人知れず努力を重ね、しかもその努力の中身を広告でぶちまけるとは心底意外である。意外だがとても好もしい。あまりに素晴らしすぎて本当にそんなことができるのかと疑う気持ちがいまだにわだかまっているのも確かだ。
フォルクスワーゲンの敵失で、トヨタは恐らくしばらく王座を維持することになるだろう。TNGAによるクルマ作りが本当にこの46項目を満たすものになるのだとしたら、それは世界一のメーカーにふさわしい。
筆者はトヨタのニューモデルに大いに期待して待っている。そしてもし新型車がそういうものでなかったら、池田直渡がどう騙されたかについて原稿を書きたいと思う。
Toyota New Global Architecture(TNGA)の公式写真はまだこのボディのみ。新時代の幕開けとなるか
http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1511/09/news043_4.html
(続く)