続続・次世代エコカー・本命は?(19)

とは言っても、何か始めなければ始まらない。取りあえずと言うわけではないが、4人だけの組織であってもEVの開発は、至急始めてもらいたいものだ。

 

 

時事深層 COMPANY
トヨタ初、「4人だけ組織」の狙い
EV
の開発に動き出す

日経ビジネス2016年11月28日号目次

 

トヨタ自動車12月、EV(電気自動車)の開発に特化した社内ベンチャーを立ち上げる。グループ会社から専門家を集める少数精鋭の組織は、トヨタでは初めてとなる。素早い判断を下し、EVで先行する他社に対抗する。

 「各社からEV(電気自動車)開発のノウハウを持つ幹部クラスを集める」。トヨタ自動車関係者はこう明かす。

 トヨタ1117日、EV開発に特化した社内ベンチャーを立ち上げると発表した。わずか4人の超少数精鋭部隊で、豊田章男社長の直轄下に置く。トヨタに加え、デンソーアイシン精機豊田自動織機のグループ3社がそれぞれ1人ずつ人材を出す。

 外部人材を交えた少人数での社内ベンチャートヨタでは初めての試み。どのような人材が選ばれるかに注目が集まる。関係者によると各メンバーや今後の計画など新組織の具体的な内容を121日にも発表する予定。開発が進むにつれて増員する見通しだという。

開発の短期化が課題に

EV本格参入でエコカー全方位開発へ
トヨタ自動車が持つ次世代エコカーと主な車種

 トヨタは「究極のエコカー」と位置付けるFCV燃料電池車)の「ミライ」201412月に発売。同じ燃料電池システムを使った燃料電池バスを20171月に発売する。HVハイブリッド車)、PHVプラグインハイブリッド車)にEVも加え、次世代エコカー全方位で開発することになる。

 新組織の狙いは開発の加速だ。2018には米国のZEV(排ガスゼロのクルマ)規制厳格化中国でのNEV(新エネルギー車)規制導入が控える。いずれもHVは対象外となり、EVの存在感が高まる可能性がある。豊田社長は「ベンチャー組織としてその分野だけを専門に考え、スピード感のある仕事の進め方を確立する」とコメントした。

 ある欧州自動車メーカーの幹部は「EVでは開発サイクルはぐっと短くなる。トヨタの開発サイクルは27カ月と業界で最も短い部類だが、我々はEV20カ月を達成する」と意気込む。部品点数が少なくなるEVでは、製品の投入サイクルが短くなると予想される。トヨタは最低限の人数で素早い意思決定ができるベンチャー組織で対抗する。

 もう一つの狙いとみられるのが、EVにおけるグループ各社の役割を明確にすることだ。今回、メンバーとして加わる3社はトヨタグループの中核企業で、既にEV分野で実績がある。デンソーはクルマの頭脳であるECU(電子制御装置)EV向けに開発しているほか、トヨタ2012年に限定発売した小型EVeQ」や日産自動車「リーフ」向けにヒートポンプ式エアコンを出荷している。アイシン精機HVトランスミッションなどの実績が豊富。EVではトランスミッションが不要になるとの見方もあるが、「足回りの技術開発のノウハウはEVでも生きる」(アイシン精機広報)。

 豊田自動織機には世界シェアトップのフォークリフト事業で培った電動化技術が眠る。アジア諸国で普及する3EVタクシー向けに超小型インバーターやモーターを納入するほか、三菱自動車の小型EVアイ・ミーブ」や欧米メーカーの各種EVにエアコン用の電動コンプレッサーを出荷する。

 いずれもトヨタ以外のメーカー向けで実績を積み重ねているが、トヨタEV戦略が定まらなくてはグループ内で事業が重複する恐れがある。

グループ内での重複を避ける

 例えば、HVEVに必要なモーター事業をいまだトヨタデンソートヨタ紡織豊田自動織機が持つ。EV向けでも、既にインバーターアイシン精機豊田自動織機で技術領域が重なり、グループ内でも競争している。

 トヨタ2014年以降、シートやトランスミッション、ブレーキなどを対象にグループ内で重複する事業の整理・再編を進めてきた。EVでもグループ各社の役割を明確にして投資や事業の重複という二の舞いを避け、開発効率を高める狙いもある。

 EVの開発は以前よりも水平分業が進むなど、産業構造が大きく変わる可能性がある。独BMWが韓国サムスン電子からバッテリーの提供を受けるなど、異業種との提携も進みつつある。

 新組織は「ケイレツ」の力を最大化する従来型のトヨタ流にも見える。「自前」と「外部調達」のラインをいち早く見定め、グループ外の企業との提携も視野に入れた開発ができるかが次の焦点となる。

(島津 翔)

包括提携結ぶマツダEV本格参入

 トヨタ自動車の新組織設立の発表と時期を合わせるかのように、同社と包括提携を結ぶマツダも、2019年にEVに本格参入することを表明した。

マツダは一時リース販売していたEVに本格参入する

 2021年以降に導入予定のPHVも含め、電動化技術の開発ではトヨタとの協業が視野に入る。しかし、次世代エコカーで全方位の開発を進めるトヨタとは対照的に、マツダ内燃機関にこだわる姿勢を崩さない。

 「まずやるべきは内燃機関で最高の燃費を実現すること」。1115日、報道機関の前で2019EV投入を表明した小飼雅道社長は、内燃機関の重要性を繰り返し強調した。2017年後半には北米市場に、得意のクリーンディーゼル車を投入することも同時に発表した。

 マツダディーゼルエンジンなど一連の低燃費技術「スカイアクティブを原動力に、リーマンショック後の苦境から復活した。その同社がEVの開発を進めている背景にあるのは、米カリフォルニア州ZEV規制だ。2018年からマツダも規制対象となる。さらに、マツダの現行商品の中で唯一ZEVの環境車としてカウントされ得るHVは、同年にその枠組みから外れる。

 一方、ZEVのような車種別の環境規制がない欧州市場について、小飼社長は「(2018年度に導入予定の)第2世代のスカイアクティブ技術で、CO2(ニ酸化炭素)排出量がさらに改善されることが大きく寄与する」と話す。次世代エンジンを導入したHVPHVが欧州の主軸になる。ただ、始動時の燃費の悪さなど内燃機関の弱点を電動技術でカバーするという考え方で、あくまで主役は内燃機関だ。

 国内アナリストは「マツダにはHCCI(予混合圧縮着火)エンジンという切り札がある。これが実現すれば、内燃機関を軸にしてまだまだ戦える」と話す。HCCIは点火プラグを使わず、ガスの圧縮により自然着火させること。マツダHCCIを世界で初めて導入することを目標としている。「究極の燃焼技術」とも称され、実現すれば同社の燃費の平均値は約3割も改善する。

 マツダ内燃機関へのこだわりは「ウェル・ツー・ホイール(油井から車輪まで)」という概念に基づく。EVFCVも電気、水素を作る時にCO2を排出する。走行時以外も含めて排出量を最適化するためには、内燃機関の改良が最優先になるという考え方だ。「現状、主要国でウェル・ツー・ホイールを基に規制をしている例はない」(マツダ国内広報部)。

 自らの強みである内燃機関を強化しながら、規制に対応するために電動化を使い分ける。マツダの両面戦略が功を奏するかにも注目が集まる。

(寺岡 篤志日経ビジネス20161128日号 1213ページより

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/NBD/15/depth/112200442/

 

 

トヨタの新組織の狙いは開発の加速と、グルーブ各社の力を効率よく束ねて遠回りなどせずに一直線にEVを開発することのようだ。トヨタハイブリッド車は基本形であり、バッテリーを強化してエンジンを無くせば、すぐにでもEVになると豪語していたし、そのバッテリーをFuel Cellに置き換えればすぐにでも(と言ったかどうかは知らないが)燃料電池車が出来る、と思っていた様だ。

(続く)