現在テスラのEVは、カリフォルニア州のフリーモント工場で、生産されている。フリーモント工場は昔のNUMMIである。言わずと知れたGMの遊休工場だったものを、トヨタとの合弁でコンパクトカーを生産するNUMMIとして再生された自動車工場である。カローラ(スプリンター)をベースにしたシボレー・ノバをGMに供給し、カローラをトヨタに供給していた。1984年12月にシボレー・ノバの1号車がライン・オフしている。
しかし2009年にGMが破たんしNUMMIを手放してしまったため、トヨタも2010年4月1日にNUMMIを閉鎖してしまったものである。工場としては年産50万台規模の能力は持っていたようなので、テスラのEVも50万台くらいは生産できるキャパシティは残っているのではないのかな。
なおNUMMI(New United Motor Manufacturing Incorporated)については「続・次世代エコカー・本命は?(35~)」(2016.5.20~)に解説されているし、NUMMI閉鎖については「番外編・プリウス急加速問題(4)(41)」 (2010.3.19、2010.5.28)等で少し述べている。
しかしギガファクトリーと言う巨大工場が出来た以上、そこで車の生産をしようと思えば出来る筈なので、いくら隣接州とは言え、わざわざネバタからカリフォルニアまでバッテリーを輸送するまでもないのではないのかな、と普通考えるのが常識である。
従ってこの巨大工場でも車を組み立てるのではないのかな、とは誰でも考えることであろう。ここにはそんなことも記述されている。ということは、50万台どころかイーロン・マスクは本当に100万台のEV生産・販売を考えているのかも知れない、と驚きを禁じ得ない。
そう、もう一つ指摘しておきたいことがある。
この記事の冒頭では「米Tesla Motors (テスラモーターズ)」と記述している。この記事は[日経ものづくり2017年2月号の記事を再構成]と注書きされているので、たぶん1月以前に記述されたことと思う。1月時点では、テスラはテスラモーターズが正式社名であった。
しかし「テスラモーターズ」の社名は、2017.2.1付で、「テスラ」に変更されている。だから記事は1月だったかもしれないが、3月に掲載するのであれば、中身を吟味して「社名は2.1にテスラに変更されている」くらいの注書きを付けてもしかるべきではないのかな。
ではなぜ社名を変更したかと言うと、
テスラは「ソーラーシティ」と言う太陽光パネルの販売・施工・設計を行う企業と、家庭用・法人用の蓄電池を扱う「テスラエナジー」と言う企業持っているからである。
ソーラーシティは、イーロン・マスクのいとこであるリンドン・ライブとピーター・ライブが2006年に設立した太陽光発電のベンチャーで、イーロン・マスク本人も会長として経営に参画している。その会社を、2016.11月に買収したものだが、テスラとソーラーシティのシナジー効果を期待してのことである。イーロン・マスクは「テスラは自動車メーカーではなく、エネルギー革新企業である」と述べているように、ソーラーシティが作った電気を「テスラエネルギー」が販売する蓄電池に貯めて、店舗やオフィッス、家庭、更にはテスラのEVなどでも使うことが出来るようになる。
テスラは、もともと自社が開発した家庭用や業務用の蓄電池「Powerwall 2」「Powerpack 2」を2015年から「テスラエネルギー」から販売している。だからギガファクトリーで生産される「2170」と呼ばれる直径21×長さ70mmの円筒型電池は、当初はこの蓄電池への搭載用バッテリーとして供給されたのである。
従って、「ソーラーシティー」の太陽パネルで発電した電気は、テスラの「ギガファクトリー」で生産される「2170」と呼ばれるリチウムイオンBatteryを搭載する「テスラエネルギー」が扱う蓄電池「Powerwall 2」や「Powerpack 2」に貯められて、家庭や商店、工場などで使われることになる。
テスラは創エネから蓄エネまでを一社で完結できる世界でも珍しい企業となった訳で、だからテスラは、自社を「統合された持続可能なライフスタイルのためのソリューションを提供する複合企業体」と、称していると言う。自動車だけを作る会社ではなくなっている、ということを誇示したいのでTesla Motors(テスラモーターズ)からMotors をとったのである。しかしその主力は、やはりMotorsであろう、と言うのがもっぱら噂である。。
社名から「自動車」をなくしたテスラ、しかし実態はまだ自動車メーカー
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Feb. 07, 2017, 11:20 AM
Justin Sullivan/GettyImages
先週、テスラは正式に社名を「Tesla Motors」から「Tesla Inc.」に変更した。(http://www.businessinsider.com/tesla-year-in-review-again-2017-2)
すでにウェブサイトのURLから「Motors」をなくしていた同社。2017年の財務報告は、複雑なものになりそうだ。自動車メーカーの範疇を超えて、エネルギー関連やソーラーシティの買収により、ソーラービジネスにも進出、事業を拡大しているためだ。
時価総額400億ドル(約4兆5000億円)の「an integrated sustainable-lifestyle-solutions conglomerate(統合された持続可能なライフスタイルのためのソリューションを提供する複合企業体)」と称するテスラだが、その中身はまだ固まってはいない。むしろ、「自動車メーカー以上」と考えるのは、長期的な企業経営の「健全性」の観点からは危険だ。
株式価値0%
モルガン・スタンレーの自動車産業アナリスト、アダム・ジョナス氏は昨年、ソーラーシティについて、「同社の財務状況と最近の株価を考えると、テスラにおけるソーラーシティの株式価値はゼロとみなしている」と述べた。同様にバッテリー事業を行うテスラエネルギーについても「価値はゼロ」とした。
随分と手厳しい評価だが、2つの会社に投資している投資家にとっては、価値は「ゼロ」という見方は妥当な意見だろう。テスラは企業統合を図りたいわけだが、テスラエネルギーはまだ始まったばかりの事業であり、ソーラーシティのせいで巨額の負債を負った。
テスラのソーラールーフ
Tesla
SpaceX同様、もともとイーロン・マスク氏が所有していた自動車関連以外の事業は、テスラの企業価値を低下させるという懸念を拭えない。たとえ、「人類の化石燃料の時代を終わらせ、万一の際には火星居住を可能にする」という彼の壮大な理念を実現するためのものだとしても。
(続く)