続続・次世代エコカー・本命は?(84)

F それはクルマには載せたくないって、いまケルティーさんもおっしゃったじゃないですか(笑)。

 

ケルティー そうですね(笑)。まぁ、そういうことになって、いろんな会社にいきました。最初は皆ネガティブな反応でした。そこでやっと三洋電機が話にのってくれて、最初のロードスターができたのです。

F
 三洋電機しか選択肢がなかったということですか?

ケルティー そうです。ロードスターを発売できたことで、もう一度パナソニックと話す機会ができました。相手は私の元上司で、じっくりと説明してようやく分かってもらえました。

F
 やはりアメリカでテスラが売れてきて、これは商売になるなという思いがあったんじゃないでしょうか?

ケルティー 実はその時はまだ売れておらず、テスラの販売実績はわずかなものでした。ですからパナソニックと一緒に事業をやりましょうという話になったとき、彼らにとってこの決断はかなりギャンブル的なものであったことは間違いありません。英断だったと思いますね。

F
 それが今となっては逆に電池メーカーからウチのを買ってください、と来るんじゃないですか?

ケルティー はい。我々は色々な国の電池メーカーの話も聞きますしテストもしています。比較したうえで、今はパナソニックパフォーマンスも値段もトータルで見て1ということです。

F
 電気自動車にとって1番大事なものはやはり電池ですか?

ケルティー 私は電池畑の人間ですから、そういう答えになりますね(笑)。

F
 インバーターは?

ケルティー インバーターも内部で開発しています。充電器、モーターも自社開発です。モーターの場合は銅を買ってきて、ワインディングまで自社で行っています。全て自分たちでやりたいわけではなく、もともと作ってくれる会社がなかったのです。私たちは高いところを目指しており、ギアボックスも色んな会社にお願いしましたがどこもできなくて、最後は自分たちで作ることになりました。

 

F それは意外です。テスラはサプライヤーから色んな部品を買って、組み合わせている会社だと思っていました。

ケルティー 我々は他社に比べて、かなりバーティカルインテグレーション(垂直統合)を行っています。いまは多くを自分たちで作っています。もちろん、将来的にはもっと安く作れるところがでてくると思いますが、今は自分たちでやるしかない。さらに言えば、我々自身でテスラの性能を評価する設備も開発しています。なぜなら、市場にそのようなものがないからです。

F
 なるほど。世にはまだガソリン車向けの評価設備しかないのですね。

ケルティー たとえば、このテスラの450ボルト85kwの電池を評価したり、充放電できるような設備はないのです。
最初はある会社の設備を使ってみましたが、我々の求めるものとは機能が違っていた。それで自社で開発することにしたんです。

F
 さぞかし初期投資は大変だったでしょうね。

ケルティー そう!お金は結構使ってます(笑)。初期の頃はダイムラーからも、トヨタからも投資がありましたからそれでなんとか賄いました。

F
 それはやはりこれまでの自動車メーカーも何らかのかたちでEVとの関係を持っておきたいということだったのでしょうか?

ケルティー どうでしょうか。ダイムラーが出資したのは2009年のことでした。一方でスマートEVの電池パックや、メルセデス・ベンツBクラスのEVのパワートレインはすべてテスラが作って納品しました。トヨタRAV4EVの駆動部分はテスラが作りました。

F
 へぇ〜そうだったんですね。RAV4EVトヨタが作ったわけじゃなかったんだ。

ケルティー もちろんボディはトヨタが作ってましたよ(笑)。

F
 そういえば、テスラは今アメリカにギガファクトリーというリチウムイオン電池工場を作っていますが、あれはパナソニックとの合弁会社なのですか?

ケルティー 合弁ではなく、完全に別会社です。テスラが土地や建物などを用意して、パナソニックは設備などに投資しています。日本のパナソニックからも数百人が来ていますし、テスラからも人を派遣し、さらに現地でも数千人を採用し、合計で6,500人くらいの規模になると発表しています。

(続く)