続続・次世代エコカー・本命は?(85)

F ここではクルマ用の電池を作るのですか?

ケルティー クルマ用と蓄電用の両方です。それぞれの電池は全く同じでもなく、全く違うというものでもありません。用途が違います。例えばクルマ用の電池は、振動や熱にも耐える必要がありますし、ある日は100km走ったり、翌日は20kmだったりと、走行距離も毎日異なります。蓄電用の電池は11回放電しますし、耐久性が求められます。蓄電用であれば、放電の波数と充電の波数はそれぞれ固定ですが、クルマ用はスピードを上げると放電の、急速充電する際には充電の波数が高くなるなど変動しますから、そこに対応する難しさがあります。ですからリチウムイオンという材料は同じなのですが、いろいろな違いがあります

F
 テスラの電池のエネルギー密度は世界的にみて最高レベルと呼べるものなんでしょうか?

ケルティー エネルギー密度は、Wh/L 又はWh/kgで測定しますが、我々の電池はクルマ用としてはもっともエネルギー密度の高いものを使っています。クルマはスペースにも重さにも限りがあります。密度を高めたことでテスラは500km以上走行できるのです。他社のEVで航続距離が短いものであれば、それはたくさんの充放電回数に耐える特性が求められます。我々はエネルギー密度が1番重要だと考え、他社では何度でも充放電できることを重視している。そのすべての特性を備えた電池というものはまだありません。

F
 いま日本ではテスラは何車種を展開しているのですか?

ケルティー 2008に発売したテスラロードスターは世界で2,400台が販売されました。それが2012に販売を終了しており、その後モデルSを投入しました。

F
 ということは日本ではいまモデルSだけですか?

ケルティー 世界でもそうです。ここ数ヶ月以内にはアメリカで先行してSUVモデルXを導入予定です。日本への導入は遅れてしまいますが、既に北米では現車を見ずに買われた方がたくさんいます。実は価格もまだ発表していないのですが、来年の春生産分まで米国では売り切れの状態です。

F
 それはすごい。アメリカだとどこで売れているのですか?西海岸もしくは東海岸

ケルティー 全米で売っていますが、1番売れているのはカリフォルニアです。その最大の理由は環境を大事にする人が多いということです。

F
 カリフォルニアには優遇税制があるとかではないのですか?

ケルティー そうではありません。それは東海岸でも同じ傾向で、ワシントンD.C.とかマサチューセッツなども同じ理由でたくさん売れています。

F
 それはつまり環境意識の高いインテリジェンスのある人が買われているということですか?

ケルティー 私はそうは言いません(笑)。たとえば私は、ベジタリアンで肉は食べないんです。その理由は環境を大事にしているからです。15年間ずっと肉を食べていません。多くの日本人の皆さんには理解できないと思いますが。アメリカでは全然不思議なことではありません。

F
 えーーー! おいしいのに。魚は食べるんですか?

ケルティー 魚は食べます。でも肉は食べない。肉を1パウンド食べたら2,000ガロンの水を消費したことになります。もったいないし、効率もあまりよくない。農薬使って植物を栽培して、それを牛が食べて・・・となるわけですから。

F
 体のためではなく、環境のために食べない?

ケルティー そうです。ですから環境のためにテスラを買うことは珍しくありません。我々のお客様には環境を大事にする方が多いということです。その一方でパフォーマンスも他のクルマには負けていません。0-100km/hの加速は3.0秒です。これを達成したセダンは他にはありません。速いし、電池を非常に低いところに搭載してあるので、重心が低くなり、ハンドリングも良い。そしてデュアルモーターのAWDモデルであれば、すべてをデジタルでコントロールしているので反応が速い。素晴らしいパフォーマンスです。ですからお客様がテスラを選ぶ理由は2つ、環境を大事にしていること、そしてクルマが高性能であること、です。

(続く)