(11)モビリティ革命が始まっている。?
2015.12.12に採択された「バリ協定」とは、次の内容のものである。そして「バリ協定」は2016.11.4に発効している。先進国はもとより新興国や発展途上国と言われる国々も、この協定に拘束される。
2020年以降の温暖化対策の目標としては、
『地球の気温上昇を産業革命前に比べ2度未満とし、1.5度に抑える努力もする』というものである。
現在世界の各地で異常気象が報告されている。日本でも、大雨、旱魃、サンゴの白化、デング熱などの事象を見れば、それは明らかである。
そのうえ今後更に気温上昇が続けば、地球環境に壊滅的な打撃を与え元に戻すことが出来ない状態となってしまう、と言うのがこの地球気温の2℃上昇と言う事である。気温が2℃上昇すると、地球生態系や気象状況に大混乱が起こり、食料生産が出来なくなり地球上の人間を養えなくなってしまう、と言う事である。そのため世界各地に食料を求めて大紛争が起こり、人々は食料を求めて大移動をせざるをおなくなってしまう。今のシリア問題どころではない、と言う事である。
国連のIPCC(Intergovemmental Panel on Climate Change、国連気候変動に関する政府間パネル)は、2013.9月のストックホルムでの第36回総会及び第1作業部会の第5次評価報告書で「地球の気候システムは着実に温暖化しており、その原因は我々人間の活動によるものであることは疑う余地がない。これを抑制するためには、温室効果ガスの抜本的かつ持続的な削減が急務となっている。世界の平均気温の上昇とCO2排出量とは比例関係にあり、地球気温が何度上昇するかは、CO2の総排出量の累積に関係してくる。」と述べている。
これを受けて、国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)及び京都議定書第11回締約国会議(COP/MOP11)が、2015.11.30~12.31にパリで開催された。ここで上記の「パリ協定」が採択されたのである。
この目標を達成するためには、我々は2050年までには温暖化ガス排出量を実質ゼロにしなければならないのである。
2016.11.7~18のCOP22マラケシュ会議では、2020年からどのようにして「バリ協定」を実施してゆくかと言う仕組み(ルール)が議論されている。
まあ言ってみれば、全世界が地球の温暖化を遅らせよう(または止めよう)と、あがいていると言う事である。
日本の温室効果ガスの削減目標は、「省エネや脱CO2エネルギーへの転換によって、2030年度までに、2013年度比で、温室効果ガスの排出を26%削減し、2050年には、80%削減する」と言うものです。
トヨタは2015.10.14に「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表している。
これによると、トヨタは、2050年には新車のCO2排出量を、2010年比で90%削減し、新工場でのCO2排出もゼロにしてゆく、といっているので、もっといいクルマとはCO2を排出しないクルマのことであり、もっといい工場もCO2の排出がゼロ近くとなっていなければならないことになった訳だ。
(この話は、2017.7.7フランスや2017.7.25イギリスが2040年にはガソリンやディーゼルエンジン車の販売を禁止する、と発表する大分前に記載しているので、それでもすごいことを言うなあと少しは感心していたが、これでトヨタも10年は時代遅れとなってしまったことになる。「トヨタ環境チャレンジ2050」は「チャレンジ2040」としなければならなくなってしまったことになる。しかしながらこの「トヨタ環境チャレンジ2050」がフランスや英国の環境対策に大いに影響を与えた事には間違いないであろう。その点、トヨタは内心大いに誇ってもよいのではないのかな。)
ここに「モビリティー革命2030、自動車産業の破壊と創造」(デロイト トーマツ コンサルティング著、日経BP社発行)と言う本がある。
それによると、この気温上昇を2℃に抑制するためには、乗用車のCO2の排出量を2050年には、2015年比で90%削減することが必要だ、言っている。
そして世界のCO2排出量は、成り行きでは2.5倍程度までに増加すると予測している。そのため全世界での自動車のCO2の排出量を90%削減する(1/10に抑える)と言う事は、1/25に削減する必要があると言う事である。
このためデロイトは、2030年の全世界新車販売の4台に1台、2050年にはすべての車両が次世代車でなければならない、と試算している。
(これでも先の仏・英の販売禁止の話よりも10年遅れていることになる。)
その次世代車の2050年の内訳は、ZEV(EV,FCV)が86%、PHEVが14%必要だと試算している。
日本での運輸部門でのCO2排出量は、日本の全排出量の2割を占め、その9割が自動車から排出されている、と言う。これは2005年の「京都議定書目標達成計画」に掲げられているものであるから、現在2017.6.11では少しは変わっているかもしれないが、傾向としてはいまだにこんなものであろう。即ち日本のCO2の排出量の18%は、自動車が排出している、と言う事である(2017.6.14 NO53参照のこと)。
このためトヨタの言う「もっといいクルマを作ろうよ」は、「限りなくCO2を排出しないクルマをつくろうよ」と言う事になってしまったと言う事なのであろう。
「もっといいクルマは操れるモノ」といつまでも思っているようであれば、これは早急に修正して貰わなければならない。これももちろん「いいクルマ作り」には優先事項であるが、それと同じくらい、いやそれ以上に「CO2を排出しないクルマ作り」が重要な目標となっているのである。トヨタも大変である。
(続く)