これもクルマの売り先を確保するためなのか。それとも来たるへき「モビリティ革命」に乗り遅れないための情報収集のためなのか、先ずは「ライドシェア」がどんなものか、トヨタはどう取り組むべきかの勉強のためなのであろう。トヨタはこれを「戦略的提携」と呼んでいる。
トヨタとUberが提携、米国で加熱する「ドライバー獲得競争」
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中田 敦=シリコンバレー支局
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2016/05/25 18:20 シリコンバレーNEXT http://techon.nikkeibp.co.jp/svnext
トヨタとUberが提携、米国で加熱する「ドライバー獲得競争」
トヨタ自動車と米Uber Technologiesが2016年5月25日、戦略的提携を発表した。提携内容は今後協議するとしているが、注目すべきはトヨタがUberドライバー向けの自動車リースを提供するとしている点。このようなドライバー支援策を巡って、Uberと米Lyftがしのぎを削っているからだ。
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Uberの主力事業である「UberX」は、個人が自家用車を使ってタクシーとしてのサービスを提供するもの(写真1)。個人の自家用車をシェア(共有)するという点で「シェアリングエコノミー」を象徴するサービスだが、最近はその姿が大きく変わり始めている。なぜならUberやLyftが、自家用車を持たない個人あってもドライバーとして働けるよう、さまざまな「ドライバー支援策」を始めているからだ。
例えばUberが2015年7月に本格的に始めたドライバー支援策「Uber Vehicle Solutions Programme」では、通常よりも有利な条件の自動車リースサービスやレンタカーサービスを提供している。自動車リースであれば、「走行距離無制限(通常のリースには走行距離の上限がある)」「解約自由(通常のリースは3年間などの契約期間がある)」といった点が、通常のリースよりも有利だ。
Uberドライバー向けの自動車リースは「Uberドライバーとしての稼ぎ」がリース料金の支払い原資として見込めるため、本来であればローンを組んだりリースを利用したりできないような信用力の低い個人でも利用できる。
米国ではクレジットカードの利用履歴などの「クレジットスコア」によって個人の信用力が算出されるため、留学生や移民は信用力がそもそも無い。しかしUberがこのような自動車リースを提供しているため、米国では渡米したばかりの留学生がUberのドライバーとして働いていたりする。
トヨタのリースは「Uberの稼ぎ」から支払う
さらにトヨタが子会社のトヨタファイナンシャルサービスを通じて提供する自動車リースでは、Uberドライバーとしての「稼ぎ」からリース料金が支払われるという仕組みが導入される。初回のリース料金すら払えないようなドライバーでもリースが可能になるわけだ。
Uberドライバー向けのレンタカーサービスは、米国の大手レンタカー会社、Enterprise Rent-A-Carと提携して提供している。料金は「トヨタカローラ」クラスの自動車で1週間210ドル。「自家用車は無いけれども1週間だけUberで稼ぎたい」という人でも、Uberドライバーになれるというわけだ。
LyftはGMと提携して「自動車はタダ」
写真2●2016年1月の「CES」でLyftとの提携を発表する米GMのMary Barra CEO(最高経営責任者)
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Uberの最大の競合であるLyftは、Lyftに5億ドルを出資する米GMと連携することで、よりアグレッシブなドライバー支援策を提供している(写真2)。LyftとGMが2016年3月に発表した「Express Drive Program」では、Lyftのドライバーが「乗客を週に65回以上乗せた場合」、GMの自動車を無料でレンタルできるのだ。
「乗客を週に40回以上乗せた場合」でも「1週間82ドル(中型セダンの「Chevrolet Malibu」の場合)」と安価。「乗客を週に乗せた回数が40回未満の場合」は、1週間82ドル(同)に加えて、「1マイル当たり20セント」を支払う必要があるという仕組みだ。
LyftがExpress Drive Programを提供するのは、シカゴ、ボストン、ワシントンDCなどの限られた都市だけだが、Lyftドライバー専業として働くのであれば自動車は無料で提供してしまうという積極策を展開することで、Uberに対抗している。
UberやLyftがドライバー支援策に力を入れているのは、ドライバーの数が売り上げに直結するためだ。また現時点では両社とも、「需要」よりも「供給」を増やすことを最優先にしている模様だ。シリコンバレーでは「Uberに乗ろう」という広告に接する機会はまったく無い一方で、「Uberドライバーになろう」といったラジオ広告やWeb広告には頻繁に接する。
今回の提携によって「Uber・トヨタ連合」対「Lyft・GM連合」という構図も明確になった。LyftとGMは自動運転車の開発でも提携している。巨大自動車メーカーを巻き込んだUberとLyftの競争は、今後も過熱する一方になりそうだ。
http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/425482/052500137/?P=1
(続く)