続続・次世代エコカー・本命は?(103)

 

高まる英国生産のリスク

 だが足元で状況は変わりつつある。昨年からの英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジットを巡って、外資系企業が現地生産を続けるリスクが顕在化してきた。米ゼネラル・モーターズ(GM)が英国に2拠点を構える子会社の独オペルを売却した一因だ。今度は英国の脱ガソリン・ディーゼル車のリスクが加わり、国内で売れないエンジンを生産し続ける意味は大きく低下する。

 一部企業は動き出している。BMW25日、傘下の英国ブランド「ミニ」初のEV19年から英国で組み立てると発表した。JLRは昨秋、18年から1回の充電で500キロメートル走行できるEVを販売する計画を明らかにした。

 日本勢はどうか。トヨタは足元のHV販売が欧州でも好調で、4割近い伸びが続く。だが英政府の方針ではHVも禁止対象になり、長期戦略の見直しを迫られそう。HV主軸だったホンダも似ている。一方、日産は欧州ではEV販売で先行し、提携先の仏ルノーと足並みをそろえシフトはしやすい。日本車3社の株価は26日そろって上昇した。まだ株式市場は影響を注視している段階のようだ。

洋上風力のコスト低下、方針転換を促す

 英政府の新方針はエネルギー問題とも密接に絡む。政府は25年まで石炭火力発電所の運転を停止する方針を決めている。日本では日立製作所が参画する原子力発電所に注目が集まるが、石炭の代わりに原発を強く推す声は少数派。最近の話題は洋上風力発電所だ。遠浅の北海で建設しやすく、原発並みの安定した発電量が見込め、コストも下がってきた。

 英政府などがまとめたリポートによると、1516年に最終的に投資が決まった洋上風力8事業の平均発電コストは、1214年実績から2割低下。12年時点に政府が掲げた「20年に1000キロワットあたり100ポンド」という目標を4年前倒しで実現した。

 EV普及には充電インフラの整備が不可欠だが、蓄電池価格が低下し分散型の電源の使い勝手も増した。EV普及には電力システムの変革が並行しており、発電時も車の走行時も温暖化ガスを出さない社会の実現に近づくかもしれない。

 次の焦点はドイツの動き。ドイツでも脱ガソリン・ディーゼル車の議論は根強く、フォルクスワーゲン(VW)など3強はそろってEVシフトを打ち出している。EUは加盟国の基礎票28票を使い、旧植民地などを巻き込みながら国際会議の議論を主導。グローバルに企業活動も規定する「デジュール・スタンダード(公的標準)」づくりは得意技で、化学品規制などの先行例はある。EVの経済性の議論だけでなく、政治力のある欧州主要国がEVシフト・脱石炭に動き出した深謀にも目をこらす必要がある。

(加藤貴行)

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ26HHH_W7A720C1000000/?n_cid=NMAIL002

 

 

 

アメリカは、トランプが石炭産業を擁護しても、シェール革命が進行しているためにアメリカの石炭産業は衰退してゆくのではないか、と次の論考は言っている。そして価格の安いシェールガスに、黙っていても火力発電用燃料はシフトしてゆくので、トランプが「パリ協定」から脱退すると言っても、アメリカのCO2排出量は自然と減少しているとのこと。

 

何もトランプの妄言には心配はいらないようだが、ではなぜフランスICEVの販売禁止を言い出したのか。

 

先ず一つには、フランスがCOP21ホスト国であり、「パリ協定」の言い出しっぺであること。だから地球温暖化に対しては、世間が「アッと驚くこと」を発表する必要があった、訳だ。

 

そんな気まぐれで自動車の禁止を言い渡されては堪(たま)ったものではないが、フランス自動車業界では、主要な存在であるディーゼル乗用車の技術的限界に突き当たっており、次の世に自国の自動車産業を向かわせる必要を政府としては感じていた、と言うのが第二の理由である。

 

禁止でもしない限り、電動化に乗り遅れてしまいかねないと、政府は危惧したかもしれない。

 

第三の理由は、フランスの電力事情が原子力発電が中心であった事である。フランスでは電力の大半が原子力発電で賄われているという。原子力77%、石炭・石油が5%再生可能エネルギー17%と、化石燃料5%に過ぎないからである。

 

だからいくらEVが電気を使っても、その電力はCO2フリーに近い形で供給されるからである。

 

そのため環境保全とエネルギー確保に対しては、両立させることが出来るのであり、温暖化対策を強化しても経済発展に対しては、何の制約ももたらさないのである。

 

日本の場合は、経済を成長させるためには電気が必要であり、それは石油を燃やす火力発電に頼らなければならないことに、現状ではなっている。そうするとCO2を大量にばらまくことになり、環境問題を引き起こすことになる。

 

日本は現在、EnvironmentEnergyEconomy3E」のTrilemmaトリレンマに陥っているが、フランスは3Eトリレンマからは解放されているのである。

 

そしてまた、電気自動車の拡大やそれに伴う原子力発電、再生可能エネルギーの利用拡大は、中東産油国にとっては、重大な関心事項となっていると言う。

 

次の論考を参照願う。

 

 

フランスがガソリン車の販売を禁止する真の理由

石油「新三国志

産油国は低価格戦略で対抗するしか道がないのか

2017727日(木)

橋爪 吉博

 

フランスのマクロン大統領は最大の政治的効果を狙って、仏米首脳会談の直前に内燃機関自動車の販売禁止方針を打ち出した。その背景には自国の自動車産業電源構成を冷静に見極めた深い戦略がある(写真:Sipa USA/amanaimages

 76フランスのユロ・エコロジー大臣(環境連帯移行大臣)は、2040年までに二酸化炭素の排出削減のため、国内におけるガソリン車およびディーゼル販売を禁止すると発表した。

 具体的内容やそこに至る道筋など詳細は明らかにされていない。また、EV(電気自動車)の走行距離やバッテリー寿命など技術的課題、そして給電インフラや産業構造転換など社会経済的課題が現時点では解決されていないことから、実現は難しいとする見方もある。

 しかし、フランス政府の発表は、G7の先進国政府として初めての、内燃機関自動車の販売禁止方針の表明である(726には英国2040年までにガソリン・ディーゼル車の販売を禁止する方針を打ち出した)。そして、パリ協定離脱を宣言した米トランプ大統領が初めて出席するG207月上旬にドイツ・ハンブルグで開かれた20カ国・地域首脳会議、以下G20ハンブルグ会議)とフランス訪問の直前という絶妙のタイミングで、最大の政治的効果を狙って打ち出された、マクロン仏新大統領の決断であった。

 本稿では、このフランスの発表の狙いと背景を分析するとともに、今後の産油国、特に三大産油国の対応について検討してみたい。


(続く)