東京新聞・「加計」疑惑記事の大疑惑(2)

さてこの記事でなんとなく疑問を感ずる箇所に言及してみよう。

 

(1) 県職員と学校法人「加計学園」(岡山市)の幹部も同席した場で、県と市に学園の獣医学部新設を進めるよう対応を迫ったという

 

この表現は、あたかも官邸サイドが「加計学園」ありきで、愛媛県今治市に新設を進めるように強制したかのような、書きっぷりだ。早く認可してくれ、と迫りたかったのは愛媛県今治市の方ではなかったかな。

 

官邸サイドも、「国家戦略特区」に関わる案件となる事案であったために、早く提案してくれるよう頼んだかもしれないが、「対応を迫った」と言う表現はあまりにもおどろおどろしい

 

敢えて読者に誤解与えるような表現を使って、官邸サイドに癒着の疑惑があると言う感触を与えるための表現であろう。次の「何で国は隠すんですか」と言う表現につなげている。

 

(2) かたくなに面会を否定する政府に対し、県幹部も苦言を呈する。「何で国は隠すんですか

 

 

本当に愛媛県の幹部が、そう言ったかどうかは知らないが、明らかに官邸サイドに疑惑がありそうだと言う雰囲気を、この表現で醸し出させている。

 

(3)  政府関係者は言う。「四月二日が(3) 加計ありき』のキックオフだった」

「加計ありき」の表現は、加計学園の加計幸太郎氏と安倍晋三がお友達であったから、友達の加計に便宜を図った筈だ、と言う事を強調するために挿入されている。

 

最初から加計ありきではなく、他の都市も申請していたが、申請内容の精度では加計学園の数日の長があった。加計学園2007年から獣医学部の新設を文科省に申請していたもので、既に15回も申請し、却下を受けている。

 

しかも2010年の春には、獣医師会の権威で日大総長の酒井健日本獣医師会顧問の北村直人の二人が、愛媛県庁を訪れて加戸守行県知事に「獣医学部」の新設を止めよと迫っている。その時加戸知事は、「加計学園」で無くてもよいので、日大の獣医学部を持ってきて下さいと頼んだと言うが、2人からは返事はなかったと言う。

 

参考までに、そのことを述べている次に論考を示す。

 

加計学園 行政は歪められたのか(中)】日大総長「加計にろくな教育できっこない」 愛媛知事「じゃあ、あなた作ってくれるか?」

2017.7.19 01:00


http://www.sankei.com/premium/photos/170719/prm1707190003-p1.html

 

 第1安倍晋三政権当時の(2007)平成192。東京・赤坂の料亭「佐藤」で、日本獣医師会顧問で元衆院議員の北村直人は、学校法人「加計学園」(岡山市)理事長の加計孝太郎と向き合っていた。

 「愛媛で獣医の大学を作りたいんですよ。ぜひ協力してくれませんか?

 加計がこう切り出すと、北村は強い口調で「なぜそんなことを言い出すんですか?」と聞き返した。

 加計が「息子の鹿児島大獣医学科の入学式に行き、設備をみたら20億~30億円でできそうなんですよ」と説明すると、北村は怒気をはらんだ声でこう説いた。

 「そんな動機で獣医学科を作りたいなんて、とんでもない話だ。獣医学部創設には500億円はかかりますよ。教育を金もうけに使われたらたまらない。やめた方がいい!

 さらに北村が「親しい政治家はいるんですか」と問うと、加計はこう答えた。

 「強いていえば安倍首相ですが…

 北村の脳裏に、安倍への疑念が刻まれた瞬間だった。北村は今も「全ては加計学園ありきなんだ」と息巻く。

 だが、愛媛県今治市加計学園が運営する岡山理科大獣医学部を新設する構想は、安倍と加計の親交とは全く無関係の切なる地元事情から始まっていた。

× × ×

 昭和50今治市は高等教育機関を誘致する園都市構想を打ち出した。タオル産業の衰退などにより、人口減が続く地域を活性化させることが目的だった。松山大や東海大などの名も挙がったが、いずれも誘致には至らなかった。

 加計学園の名前が浮上したのは(2005)平成17の正月だった。今治市選出の愛媛県議、本宮勇は市内の友人宅で、小学校から高校まで同級生だった加計学園事務局長と久々に再会した。本宮はこう水を向けた。

 「今治市で大学を誘致しているがどこも来てくれないんだ。お前のところの大学が来てくれないか?

 だが、事務局長は「少子化の時代に地方に大学を進出させるのは難しい」と首を縦に振らなかった。それでも本宮はあきらめず、その後も説得を続けた。事務局長はついに根負けして「人気があり、競争率の高い獣医学部だったら考えてもいいよ」と応じた。

 同じ頃、知事の加戸守行は県内の公務員獣医師の不足に頭を悩ませていた。

 11年の知事就任後、鳥インフルエンザなどの家畜伝染病が相次いだ。22年に口蹄(こうてい)疫が発生した際には各港で検疫態勢をとり、四国への侵入は水際で阻止したが、獣医師たちに不眠不休の対応を強いねばならなかった。

 そんな中、本宮がもたらした加計学園による獣医学部新設の話は願ってもない朗報だった。加戸は「地域活性化公務員獣医師確保ができ、一石二鳥じゃないか」と小躍りした。

 加戸の大号令の下で愛媛県今治市獣医学部新設に向け、タッグを組んだ。目をつけたのが、元首相の小泉純一郎が肝煎りで創設した構造改革特区だった。

 愛媛県今治市19年に構造改革特区に獣医学部新設を申請したが、あっさり却下された。農林水産省は「地域・分野に偏在はあるが、獣医師は足りている」とにべもなく、文部科学省は、歯科医師や獣医師に関する大学設置を認めないとする15文科省告示」を盾に聞く耳さえ持たなかった。

× × ×

 愛媛県今治市はそれでもあきらめず、毎年のように特区申請を続けた。

 これに業を煮やしたのか、北村(2010)22年春、獣医師会の権威で日大総長の酒井健と連れだって愛媛県庁の知事室に乗り込んだ。

 「獣医学部を作るのなんかやめた方がいい。公務員獣医師の待遇をよくしたり、愛媛県出身の学生に奨学金を出したりした方が安上がりですよ」

 北村がこう言うと、酒井は「奨学金をつけて東京まで学生を送ってくれたら日大で立派に育てて愛媛にお返ししますよ」と合いの手を入れた。

 加戸は「こっちは手当たり次第、獣医師を採用しても足りないんだ」と説明したが、2人は納得しない。酒井は「加計学園獣医学部を作っても、どうせろくな教育はできっこないですよ」と言い放った。これにカチンときた加戸は怒りを隠さずこう迫った。

 「こっちは別に加計学園でなくてもいいんだ。じゃあ、あなたのところで愛媛に第2獣医学部を作ってくれるか?

 酒井と北村は押し黙ったままだった。

× × ×

 加戸が獣医学部新設にこだわったのは、獣医学部・学科が東日本8割、西日本2割と偏在しているからだ。加戸は旧文部省出身で官房長まで務めた人物だ。文科省日大、そして獣医師会の密接な関係は十分承知しているだけに、文科省や獣医師会の対応には怒りが収まらない。

 「(現在のように)定員を水増しすれば、少ない教授で安上がりな授業ができる。ドル箱じゃないか。自分たちの大学で定員を増やすのはよいが、他の大学にはやらせない。商売敵ができるとおまんまの食い上げになるからじゃないのか

 第2安倍内閣の国家戦略特区により、ようやく風穴が開き、10年越しの悲願がかなった。にもかかわらず、獣医学部新設にからみ、あたかも不正があったかのように報じられるのは我慢できない

 「『加計学園ありき』と言われているが、愛媛県今治市10年以上前から『加計学園ありき』でやってきたんだ。本質の議論がなされないまま、獣医学部がおもちゃにされるのは甚だ残念だ」

 文科省から流出したとされる「首相の意向」などと記された文書に関しても加戸は「安倍さんと加計学園理事長が友達だと知っていたら、直訴してでも10年前に獣医学部を作ってもらっていたよ」と一笑に付す。

 「行政が歪(ゆが)められたのではない。歪められていた行政が正されたんだ

=敬称略。肩書は当時

http://www.sankei.com/premium/news/170719/prm1707190003-n1.html



さて本論の続きに戻ろう。

 

(4) 規制改革の実効性が高まる半面、権力の私物化を招きかねない。国会では導入を巡り「あらぬ国民の疑念を招くのでは」と制度の危うさが指摘されていた。

友人のために便宜を図り、行政手続きをゆがめたのでは」。

安倍晋三首相が昵懇(じっこん)だったことから、国民の間に疑念が膨らんだ

 

これらの表現も、国民に対する誘導尋問の役を果たしている。そんな証拠は一つも示さずに、あたかも加計学園獣医学部の認可には、疑惑があると言う事をこれでもかと言わんばかりに、あげつらっている。

 

これこそ、新聞などのメディアは「ペンを持った大マフィア」の証拠ではないのか。

 

(5) 周辺の人たちの証言から浮かび上がるのは、二人の公私にわたる蜜月ぶりだ

これなども明らかに誘導尋問そのものである。友人だったから何をしたのか、と言う証拠は何もない。

 

(6) 「腹心の友」と公言する加計氏の計画を本当に知らなかったのか。

これも反論の手法であろう。腹心の友であるから知らなかった筈はない、と言う事を強調している。読者を暗示にかける手法なのである。

 

腹心の友であっても、知らないものは知らないのである。

 

(7) 総理の意向」などと早期開学を迫る複数の文書が流出、特区選定の妥当性が疑われている。

これなどは、安倍総理と加計幸太郎氏との仲を癒着だとする、為の文書として使われたに過ぎないものであった。

 

と言うのもこの文書の日付は「平成28926」であり、この時点では獣医学部新設の議論は決着してしまっており、安倍総理の意向が働く隙間はすでに無くなっていたのである。

 

国家戦略特区WGでは、「成長戦略につながる高度な研究や創薬など新たな部門に携わる獣医師の需要があるのではないか検討せよ」と文科省に宿題を出していた。その回答期限は「平成283月末」であった。しかし文科省からの回答はなかった。そのためWGは「平成28916」にその会議を開催、文科省を攻め立てた。文科省からはその回答がなく、需要の推計を内閣府に委ねてしまった。愛媛県獣医学部の新設が必要である、との結論である。

 

だから総理のご意向と言うこの文書も、明らかに文科省の状況説明の内部メモであったわけである。

 

政府もこういうことをしっかりと説明して、文科省日本獣医師会との癒着状況を白日の基に晒す必要があったのではないのかな。

 

上記のことに言及した論考を次に示そう。

(続く)