Ghosn,Gone with the Money(32)

かく申すゴーン自身も、フランスでは人種差別を受けていたのである。以下は「週刊ダイヤモンド」の2018.12/15に載っていたものであるが、サマリーを紹介しよう。

 

ミシュランでの実績を買われて、「フランソワ・ミシュラン会長」からは絶大な信頼を得ていたものの、それでも、フランスの政財界を仕切るエスタブリッシュメント(支配階級)との違いを、ゴーンは実感せざるを得なかった。そのための疎外感は、他人の思い知るものではなかったものと、思われる。

 

カルロス自身は、「生粋のフランス人ではない」ことを痛感したのではないのかな。

 

既にご承知のように、ゴーンはレバノン人の両親から、ブラジルで生まれている。

 

だからカルロス・ゴーンフランス国籍を有しているとはいえ、いつもアウトサイダーであった。祖父ビシャラ・ゴーンは、レバノン人移民としてブラジルに渡って事業を起こし、カルロスの父ジョージを育てた。カルロスの母ロゼットも、レバノンからナイジェリアに渡った移民の家に生まれている。ゴーンの両親はレバノンで知り合い、結婚してブラジルに渡り、カルロスを生んだ。そんなわけでカルロスにとっては、ブラジルが唯一無二のホームであった。そんなこんなで、カルロス・ゴーンはブラジルに戻ることを常に夢見ていたと言う。

 

多分ゴーンは、ブラジルでは、変な疎外感は一切感じることがなかった、ものと思われる。

 

しかしルノーに転じた後も、いやおうなしに出自がついて回った。ルノーの上級副社長に就任した時も、フランスメディアからは「ルノーの再建は”火星人”カルロス・ゴーンに委ねられた」と表現されている。

 

 

日産でのゴーンの金集めは、多分にブラジルでの大統領選に出馬するための資金集めであったのであろう、とは小生の推測である。だから日産では、もっと金集めをするつもりであったものと思われる。

 

事実、2016年のリオデジャネイロオリンピックパラリンピックでは、日産自動車はローカルスポンサーとなってかなりの資金を支出させられ、ゴーン自身も聖火リレーを走っている。ゴーンは、まさに故郷に錦を飾ることを夢見ていたものと思われる。

 

と言った内容であるが、この頃が、幸か不幸か、ゴーンの最盛期だったのではないのかな。

 

 

何はともあれゴーンは、(2019.1月)11に、再び追起訴されてしまった。
会社法違反(特別背任)金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の罪での追起訴だ。だからまだ拘置所の中だ、保釈されてはいない。

 

そのためゴーンの弁護人は保釈請求をするも、すげなく断られている。

 

2019.111日 追起訴されるが、保釈を請求

2019.115日 保釈請求を却下。

2019.117日 弁護側の準抗告も即日却下

2019.118日 再度保釈を請求。

2019.1日  この請求も早々に却下される筈である。何と言っても保釈した途端にゴーンは、証拠の隠滅に走るだろうからである。海外逃亡もあり得る。

 

(注、2018.01.22東京地裁はゴーンの二度目の保釈請求を却下している。
従ってこの1月✕日は、1月22日となる。追記1/22。)

 

人質司法」だとか何とか言われようが、きちんと日本の法律に従って判断してゆけばよいことである。何と言ってもゴーンは、リオの日産名義の自宅マンションから、制止を振り切って書類などの証拠物を持ち去ってしまった経緯があるから、おいそれと保釈するわけにはいかないのだ。

 

 

ゴーン元会長の保釈却下 起訴内容や影響力を考慮か

2019/1/15 17:27
日本経済新聞 電子版

 東京地裁15日、日産自動車元会長、カルロス・ゴーン被告(64)の保釈請求を却下したことで、ゴーン元会長の早期保釈の可能性は低くなった。裁判所はもともと起訴内容を否認する被告の保釈に慎重。起訴された罪や本人の影響力を踏まえて従来の実務に沿った判断をした形だが、海外メディアなどからは勾留長期化への批判が一段と強まりそうだ。

ゴーン元会長が勾留されている東京拘置所(15日午前、東京都葛飾区)

ゴーン元会長が勾留されている東京拘置所15日午前、東京都葛飾区)

 起訴後の勾留は刑事訴訟法に基づき裁判所が職権で行う。被告側は保釈を請求できるが、証拠を隠滅したり事件関係者を畏怖させたりする恐れがあると判断された場合は認められない。

否認だと勾留長期化

 司法統計によると、2017年に一審判決までに保釈された被告は約3割にとどまり、特に否認すれば起訴後も勾留が長引く傾向にある。

 文部科学省元幹部の汚職事件でも、捜査時に収賄罪の起訴内容を認めていた元同省国際統括官、川端和明被告は起訴の翌日に保釈されたが、別の受託収賄罪で起訴され、起訴内容を否認した同省の元科学技術・学術政策局長、佐野太被告が保釈されたのは起訴から5カ月後と差がついた。

ケリー役員と差

 日産の元代表取締役、グレッグ・ケリー被告(62)はゴーン元会長と共に金融商品取引法違反で起訴され、起訴内容を否認していたが、1812月に保釈された。

 他方、ゴーン元会長は、事件を巡る関係者や証拠がより複雑となる会社法違反の特別背任罪でも起訴されたことに加え、ケリー役員と比べてより大きな影響力を持っていると考えられる。こうした点を踏まえ、地裁は現時点での保釈は認められないとの判断に至ったとみられる。

「特別扱い」避けた?

 否認すると起訴後も勾留が長引くという状況は、国内の弁護士などから長年「人質司法」と批判されてきた。ただ、海外からの批判などを考慮して特例的に早期保釈を認めれば、今後、国内の他事件での運用にも影響を与える可能性がある。裁判所は従来の姿勢を維持し、ゴーン元会長の「特別扱い」を避けたともいえそうだ。

 弁護人はゴーン元会長の初公判が始まるまで少なくとも半年程度はかかるとみており、その間も保釈請求を続けるとみられる。公判前整理手続きで争点や証拠が絞り込まれた段階、初公判で罪状認否が終わった段階などで、裁判所が「証拠隠滅などの恐れが低下した」と判断すれば保釈を認める可能性はある。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40023110V10C19A1CC1000/?n_cid=SPTMG053

 

 

東京地裁に改めて保釈請求=ゴーン被告側

201901181041

 日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告(64)側は18日、東京地裁に改めて保釈を請求した。保釈請求は何度でもできる。1回目の請求は地裁に却下され、準抗告も棄却された。(2019/01/18-10:41

https://www.jiji.com/jc/article?k=2019011800483&g=soc

 

 

そんなわけでゴーンの勾留は長期化することになる。この記事を読む限り、少なくとも6月までは拘置所の中にいることになろう。

 

日産としても、おいそれとゴーンに出てきてもらっては困るのである。まあ保釈されてもあれやこれやの条件が付くものと思われるので、ゴーン子飼いの役員なんぞと策を巡らされることは無いと思われるが、日産にとっては、証拠隠滅などされては厄介なことに違いなかろう。

 

ゴーンを訴えたのには、いろいろとゴーンが悪事を働いたからではあるが、何と言ってもルノーと日産の経営統合を画策されたことも、主要な原因の一つであろう。

 

ゴーンも、当初はルノーとの経営統合には賛成ではなかった。

 

2014に 仏社会党オランド政権のもと、「2年以上保有する株主の議決権を2倍にする」と言う「フロランジュ法」が制定される。雇用不安にあえいでいた当時の経済産業デジタル相(大臣)だったエマニュエル・マクロンは、2015にこの法律を盾に、ルノーと日産を経営統合させようとした。ルノーと日産を合併させれば、英国のサンダーランドにある日産の組み立て工場をフランスに移転させることは、簡単に行えることになる。そうすればフランスの雇用が増えて、現在は大統領となっているマクロンの大手柄となり、毎週続いている「マクロン反対」の「黄色いベスト」デモもなくなると言うものである。

 

これに抵抗したのが、カルロス・ゴーン日産会長であった。オランドやマクロンは生粋のフランス人であり、ゴーンに対して、フロランジュ法をめぐる交渉では、厳しく対立している。

 

もちろん企業文化の異なる企業同士の経営統合はうまくいっていないことはわかっていたが、更にはゴーン自身の最高意思決定権者としての影響力がそがれることを恐れて、大反対したのであった。

 

しかしその甲斐あって、201512には日産は、ルノー・フランス政府との間で経営の自主性を維持することで、合意することが出来た。何かあれば、日産は15%しかないルノー株を買いますことが出来るようになったのである。仮にフランス側から不当な干渉があれば、15%25%までルノー株を買い増せば、日本の法律で、ルノーの日産への議決権が停止され日産への影響力を遮断できることになった。

 

しかしそのマクロンが、20175大統領に当選してしまう。そしてゴーンの行く末は、マクロンの手に握られてしまった。ルノーの会長でもあったゴーンは、ルノーの最大の株主でもあるフランス政府の意向に従わざるを得なくなったのである。

(続く)