この法律の細かな解説は、この論考を参照されるとよい。
日産自動車とルノーの資本関係
knak (2018年11月22日 08:37) | コメント(0)
カルロス・ゴーンの逮捕により、今後の日産自動車とルノーの関係が問題となる。
ルノーの筆頭株主はフランス政府であり、マクロン大統領は国内の雇用創出のためルノーに対して日産との合併を働きかけていた。
ゴーン会長は両社の経営統合を計画しており、日産側が強く反対していたとされる。
現在の出資関係は下記の通り。
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フランス政府は2014年に国内の産業を守る目的でフロランジュ法を制定した。2つの柱から成る。
① 大企業に対して、工場など生産拠点を閉鎖する場合は事前に売却先を探すよう義務づけ。
アルセロール・ミタルが2012年、フランス北東部フロランジュにある高炉を閉鎖したが、今後のこれら事態への対策とした。
② 株式を2年以上持つ株主に、2倍の議決権を与えること。株主の3分の2が反対すれば、この「2倍ルール」の適用を免れる。
フランスには政府が大株主の企業が多く、2倍ルールは仏政府の影響力が増すことを意味する。
2015年4月30日のルノーの株主総会で、ルノー経営陣は「2倍ルールの適用除外」を決めようとしたが、仏政府はルノー株を一時的に買い増してこれを否決に持ち込んだ。
この結果、仏政府の議決権は15%から28%に増えた。
日産自動車はルノーに15%出資するが、子会社のため、議決権を持たない。
以前には、仏政府の動きに対し、日産自動車は、保有するルノー株の比率を15%から25%以上に引き上げるとルノーが持つ日産への議決権が消滅する日本の会社法をちらつかせ、仏政府を退けた。
付記 契約上、日産がルノー株を買い増しできるのは、不当な介入があった時のみとのこと。 買い増しは2015年の改定アライアンス基本契約書で追加した。
フロランジュnissan-runault-2
会社法第308条は次の通り規定する。
株主(株式会社がその総株主の議決権の四分の一以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主を除く。)は、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の株式につき一個の議決権を有する。
この解釈:
株主は、株式一株につき一個の議決権を有する。
株式会社(日産自動車)が株主(ルノー)の議決権の1/4以上を有することで、株式会社(日産)はその(ルノーの)経営を実質的に支配することが可能な関係になる。その株主(ルノー)を除く。
すなわち、ルノーは日産の議決権を有しない。
相互保有株式と呼ばれる。
議決権の1/4 以上の株式を持っていると、実質的に会社の経営を支配できる。
ルノーは1/4以上の議決権を持つ日産を通して、ルノーの1/4以上の議決権を持つ日産に、ルノーの思う通りに、ルノー自身の議決をさせることができることとなり、不正な議決が行われる可能性が出る。
付記 フランス会社法では、ルノーの日産持株が40%未満の場合には、日産はルノーの議決権を持つことができることが判明した。
フロランジュnissan-runault-3
ルノー持株が40%以上なら、日産にルノー議決権なく、40%未満なら議決権がある。(フランス会社法)
日産持株が25%以上になれば、ルノーの日産議決権はなくなる。(日本の会社法)
http://blog.knak.jp/2018/11/post-2111.html
興味ある方は次の論文を読まれるとよいが、小生には難しすぎて、トンと理解できなかった。
研究ノート
フロランジュ法と二倍議決権
─例外から原則へ
上 田 廣 美
まあ、「フロランジュ法」などと、実際には浮かれている時では、今はない。それ以上に日産と日本の経済にとっては、切迫している状況なのである。
マクロンの真意は、日産をフランスの企業とすることである。事実、そう言って大統領に当選している。
愈々フランスが牙をむきだした訳だ。恥も外聞もなく、マクロンの意を汲んだルノーの取締役の「マルタン・ピアル」氏が、「持ち株会社方式による経営統合」を日本政府に突き付けてきた。
当然この持ち株会社はルノーの支配下に置くことになる。こんなことになったら、日産の工場は日本から無くなってしまう、可能性がある。
仏政府「日産とルノーの経営統合を」日本政府に
毎日新聞2019年1月20日 20時55分(最終更新 1月20日 22時25分)
フランス政府が、仏自動車大手ルノーと日産自動車の共同持ち株会社方式を通じた経営統合の意向を日本政府に伝えていたことが20日、明らかになった。日産のカルロス・ゴーン前会長の逮捕により両社の対立が表面化する中、ルノー筆頭株主の仏政府は経営統合で日産への影響力を強める狙いがあるとみられ、日本側は警戒を強めている。
仏政府出身のルノー取締役マルタン・ビアル氏や政府幹部が今月中旬に訪日し経済産業省に伝えた。日産への支配力を一段と強めるため、ルノー主導で持ち株会社を設立するもので、マクロン仏大統領の意向を受けた構想という。関係者によると、仏側は数カ月以内の方針決定を見込んでいるという。
ルノーは日産に43・4%、日産はルノーに15%をそれぞれ出資するが株主総会での議決権はルノーのみが持つ。資本関係ではルノーが上位だが販売台数や技術力では日産が上回る「逆転状態」にあり、ルノーの日産依存度は高い。日産は前会長逮捕を契機にこうした資本関係を「不平等」だと見直しを求め対立が表面化している。
仏政府の統合構想には、両社連合を巡りルノーの主導権を強固にする狙いがあるとみられる。ルメール仏経済・財務相は20日付の仏紙「JDD」のインタビューで「資本関係の均衡回復や両社による相互の資本参加の修正は俎上(そじょう)に上っていない」と述べた。
統合構想に日産は「両社の資本バランスが対等にならないような話は受け入れられない」(関係者)と警戒を強めている。
仏政府は日本側に日産会長をルノーから出す意向も示したが、日産は拒否する考え。両社の主導権争いはさらに激しくなりそうだ。【和田憲二、松本尚也、パリ賀有勇】
https://mainichi.jp/articles/20190120/k00/00m/020/176000c
果たしてそうなったら、日産は、日本政府は、防ぐことが出来るのか。はなはだ疑問である。フランは山賊・海賊の国であるから、日本政府が反対すれば、あらゆる手段を駆使して日産を奪いに来るであろう、とつぎの論考は言っている。
(続く)