ホワイト国 外れてどんな 実害が?
山川:冒頭でも触れましたが、改めて輸出管理について。この件、よく日本の説明を聞いて理解すれば、韓国にそれほど実害がないことは明らかなんですよね。
図に示しました通り、グループAからグループBに落ちて、「一般包括」という許可がなくなっても、「特別一般包括」という枠組みが残ります。管理がしっかりしている日本の事業者なら、一度許可を取ればこれまで通り3年間は輸出できるなど、言ってしまえば、いろんな"抜け道"があります。
半導体材料の3品目についてもサムスン向けなどで一部の輸出は再開されました。これからも輸出許可が下りていくでしょう。こうした点を踏まえれば、韓国人がここまで怒っている理由が分かりません。
実は私も先日、韓国に行って、現地の人たちとこの点について議論したのですが、「これは安倍政権がやった経済報復だ」と言って譲ろうとしない。知日家、あるいは親日家と言われる人たちでも、この点についてはかたくなでした。
西野氏:先ほど申し上げた通りで、韓国の人にとっては、最初の認識が重要なのです。その意味では、日本政府の最初の説明がうまくなかったと思います。
菅義偉官房長官は、輸出管理の強化に踏み切った理由について、徴用工問題を挙げて「信頼関係が損なわれた」と説明しました。結果として、韓国側は「徴用工問題に対する報復措置」と受け取りました。その認識が固着してしまったのです。
それと「Bグループに降格しても、実態が同じで実害がそれほどない」と言うのなら、そもそもそうした措置を取らなければよいではないか、というのが韓国側の考えです。
山川:ただ、実態が同じというのは、輸出管理がしっかりしているところには今まで通り輸出するという話であって、実態が同じだから、審査を厳格化する必要はないという話ではないと思います。審査を厳格化しますと言っただけで、ここまで怒ることが、多くの日本人には理解できません。
西野氏:私もこの点については、お互いに冷静に、とりわけ韓国の方々に冷静に考えていただきたいと思っています。
ただ、私は韓国政府の代弁人ではないですが、韓国側の認識をあえてお伝えするならば、だったら韓国政府が求めている協議をしてくれればいいじゃないかと。不適切な案件があるならば、きちんと話し合って自制する措置を取ればいいではないかと考えているわけです。
にもかかわらず、協議に応じてくれる気配がない。あまりにも冷たいというのが韓国の中で広がっている認識だと思います。23日の青瓦台によるGSOMIA破棄の説明も、対話を求めたのに、日本政府は全く応じてくれなかったという気持ちがかなり出ていました。
山川:あえて聞きますが、それだったら韓国側には「輸出管理をしっかりやります」という気持ちはあるということですか?
西野氏:そうだと思います。
山川:それが一度もメッセージとして出てこないですよね。
西野氏:今回の件はお互いにきちんとしたシグナルが発せられていない、あるいは、メッセージをきちんと受け止めていないことからくる誤解が、かなりあると思います。
韓国側でも、日本が言っている「3年間、全く協議が行われなかった」「日本が要請しても受けなかった」という点については、「もう少しきちんと対応すべきだった」というような声は実は出ています。
山川:出ているのであれば、それを日本側に伝えればよかったのでは。そう言ってくれれば、まだ折り合えたんじゃないかという気がします。
いずれにせよ今回の件は、お互いにあまりにも譲り合う姿勢がなくてここまで来たんじゃないかと感じます。
複合的な危機の解決は?
西野氏:もう一つ韓国側の気持ちを説明すると、「貿易の運用が改善されれば、グループAに戻してくれますか」という思いがあります。おそらくそうではないだろうと。なぜならばこの問題は徴用工と関わっているので、両方解決しなければいけないでしょうと。
山川:確かに安倍総理は、輸出管理の話を振り向けられると、「対抗措置ではない」としながらも「国と国との約束を守ってほしい」と徴用工の話を持ち出します。
西野氏:だから、そこを切り分けて考える必要があります。輸出管理、徴用工、GSOMIAと、それぞれの問題ごとに意思疎通を図っていかなければなりません。今回の危機は、経済、安全保障、人的交流にまで影響が及んでいる複合的かつ深刻なものです。一つひとつ解いていくことが必要です。時間がかかるでしょう。
西野:話が今後に向いてきましたので、最後の疑問です。
南北の 統一ほんとに できますか
(続く)