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トヨタ、20年に超小型EVを発売
2019/06/13 05:00 安井 功=日経 xTECH/日経Automotiveトヨタ自動車は、軽自動車よりも小さい、超小型電気自動車(EV)を2020年に発売する(図1)。国内専用のモデルとして事業化することを決めた。EVはコストが課題としてあるが、小容量の電池でも使える近距離移動用の車両とすることなどで、競争力のある価格設定を目指す。
2019年6月7日に同社が開催した、EV普及に向けた説明会で、副社長の寺師茂樹氏が明かした。
図1 2020年に販売開始予定の超小型EV
乗車定員は2人。サイズは、全長が約2500mm、全幅が約1300mm、全高が約1500mm。最高速度は60km/hとする予定だ。1回の充電で走行できる距離は約100kmを想定している。(出所:トヨタ自動車)[画像のクリックで拡大表示]
EVは電池の価格が高いことが、普及の足かせになっている。トヨタはEVを普及させるために、超小型車の用途を設定するとともに、電池を2次利用できるようにすることで、初期コストを抑えることを狙う。
同社が描くのは、EVを売った後も関係を保つビジネスモデルだ。電池の再利用や中古自動車の販売なども視野に入れる(図2)。そのために、様々な分野の企業と協業する方針だ。今回トヨタが発表した超小型EVは、その試金石となりそうだ。
図2 トヨタが考えるEVビジネスモデルトヨタ自動車の資料を基に日経Automotiveが作成。[画像のクリックで拡大表示]
トヨタは超小型EVの市販に当たり調査を実施して、EVに対する顧客のニーズを洗い出した。その結果「毎日長い距離は乗らない」「乗るときは1人か2人」「乗りたいときに乗れたら十分」「家に持っていなくてもよい」といった要望が浮かび上がったという。
これらの声を踏まえ、今回トヨタが発表した超小型EVの主な利用者は、免許を取得したばかりの人や高齢者などを想定。買い物などの日常的な利用で、近距離を移動するといった用途がメインだ。売り切りだけでなく、マンションなどに複数台備え付けて利用者が共有するといったシェアリングサービスも視野に入れる。
電池の再利用では、家庭向け蓄電池としての再利用が念頭にあるようだ。トヨタが販売を予定している超小型EVに搭載する蓄電池について説明員は、「住宅向けの蓄電池に適した大きさ」と述べる。1回の充電で走行できる距離は約100kmを想定している。
ただし、これらの新たなビジネスモデルの構築には、耐久性が高い電池が欠かせない。トヨタは長期間使用しても電池容量が減りにくい技術開発に注力する方針だ。
全長は軽自動車より900mm短い
国土交通省は、超小型車両(超小型モビリティー)の量産化を見据えて、型式指定車の諸元づくりを進めている。車両安全対策検討会のワーキンググループで内容を議論し、結果を2019年3月1日の同会で示した。
同諸元によると、最高速度は60km/h。車両寸法は、全長が2500mm以下、全幅が1300mm以下、全高が2000mm以下。軽自動車の規格サイズと比べると、全長が約900mm短い。保安基準は、軽自動車とほぼ同等だ。今回トヨタが市販車として発表した超小型EVも、この諸元に従ったものと考えられる。
このようなサイズの超小型EV開発において、車内空間を確保するためには、インホイールモーターを採用する方法も考えられる。だが、今回トヨタが販売を予定している超小型EVでは、インホイールモーターを採用しない方針だ。「採用できる製品がまだない。また、ばね下重量が重くなることから乗り心地が悪くなる」(説明員)というのが主な理由だ。
今後は、一般利用者向けだけでなく、法人向けを対象とした超小型EVも開発する方針だ(図3)。例えば、近距離の巡回や訪問介護といった利用形態を想定している。
図3 法人向け超小型EVのコンセプトモデル (写真:日経Automotive)[画像のクリックで拡大表示]
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/02349/?ST=print
世界の情勢は、環境規制の強化で、あちこちでEVの導入が急務となってきている。世界に幅広く展開しているトヨタとしては、EVでもフルライン体制を進めざるを得ないのである。だから超小型EVとしても、単なる便利な電動車としてではなくて、そのフルラインを構成する一部としての役割を担うことになろう。
(続く)