世界自動車大戦争(80)

また言い方を変えれば、「100年に一度の変革期」であるので、仲良く協力して新しい「モビリティ社会」を造ってゆこうではないですか、と言った気持ちであろう。環境社会を乗り切るためには、多くの仲間HVを使ってもらいHV環境対策車であると言う認識を深め、更には各種のデータを収集出来ればと思っている、と言う事である。

 

もう一つの理由は、VWへの対抗策である。VWは自社のEVのプラットフォームを販売すると宣伝している。いわゆるMEBModularer Electro Baukasten)と言う奴である。しかも将来的には、年間半分が電動車になると予想されていて、その台数は5,000万台だと言うので、トヨタとしてもVWにその3割の1,500万台も持っていかれたら、この世界自動車大戦争に負けてしまう。そして欧州でもアメリカでもHVは環境車の枠から外されてしまっているので、燃費が良いことを武器に環境対策車であることの証としても、仲間を増やしていこうと言う魂胆なのであろう。

 

トヨタ2030年(最近5年前出しして2025年)の年間販売台数の約半分の550万台を電動車にすると言っているので、単純比較すれば、トヨタVWの3分の1の規模となってしまう。これではトヨタとしても、立つ瀬がない。

 

だからHV技術を販売して、VWに対抗しようと考えた訳だ。

 

 

 

ニュース解説

トヨタHEV技術外販の真意、フォルクスワーゲンEVへの焦り

2019/04/08 05:00 清水 直茂=日経 xTECH/日経Automotive

 

 トヨタ自動車が、ハイブリッド車HEV)技術を他社に本格的に販売する方針を掲げた。2万件以上の特許を無料にして、安さを訴求する。意識するのは、ドイツ・フォルクスワーゲンVWが電気自動車(EV)専用のプラットフォームPF)を他社に販売するとぶち上げたことだ。世界がEVに染まる前に、トヨタは迎え撃たねばならなかった。

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 [画像のクリックで拡大表示] プリウスのハイブリッド技術(出所:トヨタ) 

 VW20193月に、同年末から生産を開始するEV専用PFModular Electric ToolkitMEBを他社に販売すると表明した。「電動車時代」になるはずの2020年代。VWは主役に立つパワートレーンとして、トヨタが強いHEVではなく、EVにするための具体策を示したわけだ。

 MEB拡販の布石が、VW20191月に発表した自動車部品の新ブランド「フォルクスワーゲン・グループ・コンポーネンツ(Volkswagen Group Components)」である。他社への部品販売をにらんだものとみられ、VWは「世界最大規模の部品メーカー」と豪語する。

 新ブランドで扱う部品は幅広い。エンジンやシャシー、シートなどあるが、最大の使命はMEBの販売だろう。VWが掲げるMEBの販売目標は壮大で、「1500万台規模」に達する。

 トヨタにとって、とても見過ごせない規模感である。乗用車の世界販売台数は大体、年間1億台。2030年の厳しい環境規制を想定すると、「半分の5000万台が電動車になる」(トヨタ副社長の寺師茂樹氏)。VWは、そのうち3というとてつもないシェアをMEBで握る目標を掲げたわけだ。

 トヨタ2030年に550万台超を電動車にする目標を掲げるが、3倍の差。ハードウエアの販売競争では、規模がとりわけ重要になる。何も手を打たなければ、トヨタHEVVWEVに完敗する。

 寺師氏がVWに対抗したかのように強調するのが、「システムサプライヤーになる」ことである。トヨタが単独で1500万台超のHEVを販売するのは、さすがに無理だ。VWと同様にトヨタ以外の完成車メーカーに“サプライヤー(部品メーカー)”としてHEV技術を販売し、MEBと同等以上の規模を狙う。

https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00001/01931/?n_cid=nbpnxt_mled_dm

 

 

 

それに、モビリティ社会のサプライヤーとしての役割を果たせば、Maas対応のための多くの仲間と各種のデータが手に入ると言う事である。

 

 

 

トヨタ、特許開放で求めるもの
編集委員 渋谷高弘

2019/4/7 18:00
日本経済新聞 電子版

 トヨタ自動車ハイブリッド車(HV)などの電動車関連特許2万3千件の無償開放という、異例の判断に踏み切った。自社技術を広げコスト削減を狙うだけではない。クルマの特許と引き換えに、次世代移動サービスに欠かせない仲間やデータを手に入れるという深謀遠慮も見え隠れする。

 「特許開放の成果は長い目で見ている」。2017年、トヨタ知財関係者が語っていた言葉だ。その2年前、同社は燃料電池自動車(FCV)の普及を目指し関連特許約5700件の無償開放を始めたが、目立つ成果はなかった。普及期が到来していないFCVの特許では、他社へのインパクトは小さかったようだ。

 その反省もあってか、今回のトヨタの決断は大胆だ。30年末まで無償開放する特許の内訳は、システム制御関連が約7500件、モーター関連が約2500件など。HVだけでなく、電気自動車(EV)やFCVなどにも応用できる技術であるところがミソだ。

 

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トヨタ自動車のHV「プリウス

 トヨタ20年以上のHVの開発を通じて、電動車全般の高性能化、コンパクト化、低コスト化に役立つ特許を蓄えてきた。その技術の粋を無償で使えることは、スズキSUBARUなどHVの導入を決めた既存メーカーだけでなく、新興EVメーカーにも魅力に映る可能性は高い。

 

 今回、トヨタが行うような特許の無償提供を通じて製品の普及を狙う策は知財分野で「オープン&クローズ戦略」と呼ばれる。貴重な知財を単に無償開放するお人よしはいない。オープン戦略には必ず引き換えが伴う。そして中長期に自社を有利な状況に置く「クローズ戦略」が潜む。

 例えば米アップルは2000年代、iPodやiPhoneの基本ソフト「iOS」を除いた携帯機器の仕様や製造ノウハウを中国企業に無償提供した。低コストで製造できる調達網を手に入れ、アップルの営業利益率は30%にも達した。

 では、今回のトヨタの特許開放にはどんなうまみが潜んでいるのか。短期的に見えるのは、HVシステムの外販や有償の技術支援サービスだ。特許は書類だけを見て使いこなせるものではなく、導入に向けたノウハウの提供が必要。特許は無償といってもトヨタには一定のカネが入る。

 中長期には技術提供をテコに他社の動向やデータを入手できる。トヨタソフトバンクと組み、無人宅配など移動手段をサービスとして提供する「MaaS(マース)」事業への参入を決めている。人工知能(AI)や電動車が使われるため、検証のためのデータはいくらあってもいい。

 特許の無償提供にあたってトヨタは「(導入企業の)具体的な使い方などを確認し契約する」としている。もしかすると技術提供と交換に、相手企業のデータを入手し利用できる権利を確保するかもしれない。

 環境対応車の本命とされるEVに出遅れたトヨタに危機感があるのも事実だろう。ただ、虎の子の特許を使い、次世代サービスに欠かせない「仲間」「データ」を手に入れようとする発想は、日本企業の知財戦略では新境地。新たな事業モデルを模索する他の日本企業にも参考になる。

 

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43422460W9A400C1TJC000/?n_cid=NMAIL006

 

 

 

ここ数年、環境規制が日ごとに強化されて燃費が問題となってきているので、ある意味HVは有利に働くわけである。CAFE(中国ではCAFC)と言う厳しい規制があるので、自動車燃費の改善は必須事項となってきている。だから、HV技術が注目されるわけである。



(続く)