世界自動車大戦争(109)

それにしても今の10倍売ったとしても、高々年5~6,000台どまりだ。それでも現在のFCVにとっては一大事なのであろう。

 

 

2020年版の「間違いだらけのクルマ選び」で、著者の島下泰久氏は「問題は水素ステーションの整備が進まないことなどではなく、先進層に買ってもらう事の意義と利点への理解が薄いことではないかと思う。」と書いている。

 

しかも島下氏は現行「ミライ」のオーナーである。そして、トヨタのオーナー対策が、全くなっていないと警告している。売りっぱなしだと言う。販売店からは何のコンタクトもなかった、と怒っている。

 

と言う事は、この「ミライ・コンセプト」の開発に際しては、既存ユーザーの声は一切反映されていない、と言う事ではないのかな。

 

普通のクルマ」にする、とトヨタサイドは息巻いている様だが、これって単にチーフエンジニアの田中義和氏の頭にあった考えだけであったのであろうか。

 

まあ間違いではないが、ユーザーの声の中には、もっと違った声もある筈である。

島下氏も「・・・クルマには色々悪態付きつつもまずまず満足していた。」と言っている。この悪態の中には、きっとミライのためになる言葉が存在しているのではないのか。島下氏はクルマの専門家なので、尚更ではないか。

 

そして、「カッコ良くて走りが良くて、その上で未来に繋がる何かを感じさせてくれるクルマとして、次期型MIRAIが世に出ることを望みたい。」と締めくくっている。

 

小生はこの「未来に繋がる何か」に注目したい。島下氏も、いっぱしの自動車屋として、単にハードのクルマとしてのミライを購入した訳でもなかろう。

 

当然「燃料電池」や「FCV」に対する深い興味から、このFCVのミライと付き合ってきたことには間違いはないのであろうが、もう一つ、明確には言及していないが、ミライでいくばくかでも環境対策に貢献していると言う「自負」があったのではないのかな。

 

小生は、この「未来に繋がる何か」に、そんなことを感じるのである。

 

普通のクルマ」もよいけれど、FCVのミライは、CO2を一切出さない燃料電池なのである。れっきとしたZEV環境対策車」なのである。だから、当然「普通のクルマ」ではないのである。

 

しかも電気自動車にはない航続距離と、3分で水素が注入できるガソリン並みの便利さを持ち合わせているのである。

 

ガソリンと違い環境にやさしく、しかもガソリン車並みの便利さを有していることに着目して、トヨタもこんな難しい燃料電池車を開発したわけだ。単に「普通のクルマ」を目指した訳でもなかろう。

 

CO2を排出しない、と言う事に、もっともっと力点を置いてPRしてもよいのではないのかな、と言うよりも、もっと力点を置くべきである、と小生には思われるのである。

 

「普通のクルマ」にする目的は、CO2を排出しないクルマとして、環境対策車として、もっともっと世の中に受け入れてもらいたいためにするものである。このことをトヨタや、チーフエンジニアの田中義和氏は、もっともっとPRすべきではないのかな。ミライと言う普通のクルマ」は普通のクルマであって、普通のクルマではないのである。このことを田中義和氏はもっと自覚すべきであろう。

 

ミライは、CO2フリーのれっきとした世に誇るべき「環境対策車・ZEV」なのである。このことを前面に出して、普通のクルマとしてPRして貰いたいものである。普通のクルマとして一般の人でも扱える、特殊なFCVの環境対策車・ZEVなのである。これがミライの売りなのである。そのために、トヨタが必死になって開発したわけだ。開発者が涙した意味がここにある、と小生は感じている次第である。

 

先の論考にもあるように、福島県浪江町では、大規模な太陽光発電による水素づくりが行われている。この水素を使ってミライが走れば、全くのCO2フリーである。それこそLCAでのCO2フリーとなるのである。

 

そんなわけで燃料電池車は沢山走ってこそ、環境対策車なのである。そんな意味で一回り小さいFCVもあっても良いのではないか、とも思っている。そうすれば愛車にしたい人は、沢山いる筈だ。

 

FCVは長距離を走れるし、その後水素の充填も数分で終わる。長い時間を充電に費やされなければならないとなると、私の使い方と気性には一寸向かない。FCVは私にぴったりの次世代エネルギー車なのだ。」とは、2019年版「間違いだらけのクルマ選び」での島下氏の言葉である。

 

「普通のクルマ」にする以前に、FCVCO2フリーの「特別なクルマ・ZEV」なのである。ことことを忘れてもらっては困るのである。特別なクルマだからこそ、普通のクルマとしたいと言う事は理解できるが、元はと言えばあくまでも特別なクルマで、燃料電池車なのである。CO2フリーの完全な環境対策車・ZEVZero Emission Vehicleなのであることを、忘れてはならない。

 

 

さて再生可能エネルギーである太陽光で発電した電気を使い、水を電気分解して水素を生成する「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R」が、この3月7日に開所式を迎えた。

 

この水素製造拠点は、世界最大級だと言う。本格稼働は今年の7月だと言うが、これはCO2を発生させない今のところ唯一の水素製造設備である。大事に育ててゆきたいものである。

 

 

 

福島の水素拠点開所式、首相「世界最大の拠点、水素コストを10分の1に」

2020.3.7 16:26 経済 産業・ビジネス

首相、震災9年を前に視察 「福島水素エネルギー研究フィールド」の開所式であいさつする安倍首相=7日午前、福島県浪江町

 

 福島県浪江町にある世界最大級の再生可能エネルギーを活用した水素製造拠点「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」の開所式が7日行われた。

 

 拠点内の太陽光パネル約6万8000個で発電した電気を使って水を分解し、水素を製造する。年間最大900トン規模水素の製造と貯蔵が可能で、需要予測に基づき作られる。本格稼働は7月を予定。利用までも含めたシステムの検証を目的としている。東京オリンピックパラリンピックでもバスの燃料や聖火台の燃料などとして使われる。

 

 開所式に参加した安倍晋三首相は「世界最大のイノベーション拠点になる。2030年までに水素の製造コストを10分の1以下にする」と述べ、普及に意欲を示した。

 

 FH2Rは新エネルギー・産業技術総合開発機(NEDO)の技術検証プロジェクトとして、東芝エネルギーシステムズ、東北電力岩谷産業らが協力して開発を進めた。

 

 環境問題が叫ばれる中、二酸化炭素(CO2)を使わない水素製造方法に多くの注目が集まっており、東京五輪以外にも、サッカー練習施設「Jヴィレッジ」をはじめ、県内外のスポーツ施設などで浪江町で製造された水素が広く使われるほか、地域の街づくりに利用される予定だ。

 

https://www.sankei.com/economy/news/200307/ecn2003070013-n1.html

 

 

 

更に詳しくは、ここも(https://motor-fan.jp/tech/10013888)参照されるとよい。

(続く)