世界自動車大戦争(112)

燃料電池システムは中国のRe-Fire

 三菱ふそうトラック・バスは、ゼロエミッションの商用車という観点で、電気トラックにとどまらないさらなる取り組みを進めている。それを形にしたのが、今回初披露したVision F-CELLだ。電気トラックの場合、走行距離を伸ばすにはより多くのバッテリーを搭載する必要があり、その充電にも時間がかかるという課題がある。燃料電池トラックであれば、それらの課題を解決できるというわけだ。

 Vision F-CELLは、最高出力135kWのモーターで走行する7.5トントラック(最大積載量は3トン)だ。燃料電池システムは中国メーカーのRe-Fire発電力は46kW走行距離は200k300km以上で、水素ステーションでの水素補充は約2分で完了する。コンセプトカーではあるものの走行可能な試作車であり、シック氏は報道陣に向けて「近いうちに試乗のご案内をできることを楽しみにしている」とコメントした。

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Vision F-CELL」の燃料電池システムのイメージ(クリックで拡大) 出典:三菱ふそうトラック・バス

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赤丸で示した箇所に燃料電池システムを提供するRe-Fireのロゴがある(クリックで拡大)

https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1910/28/news035.html

 

この「Vision F-CELL」は、既に「eCanter F-Cell」として開発が進んでいると言う。何と言ってもEVeCanterの航続距離がたったの100kmでは、誠に物足りない訳だ。

 

そのためにはFCトラックが必要てとなる。それが「eCanter F-Cell」で、航続距離は300kmだと言うので、三菱もそれ相応に実用化へのステップを踏んでいるようだ。

 

 

ダイムラートヨタ燃料電池にシフト、商用車を電動化

久米 秀尚

日経クロステック/日経Automotive

2020.03.31

 ゼロエミッションを実現しなければならないが、電気自動車(EV)だけでは不可能――。乗用車以上に電動化の難しさを実感しているのがトラックやバスなどの商用車だ。ドイツ・ダイムラーDaimler)グループトヨタ自動車グループという日欧の商用車大手が、EVに次ぐ一手として燃料電池車(FCV)の開発に注力し始めた(1)。

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1 三菱ふそうが開発した燃料電池FC)トラックの試作車

eCanter F-Cell」と名付けた車両で、1回の水素充填で300kmの航続距離を確保することを目指す。(画像:三菱ふそうトラック・バス[画像のクリックで拡大表示]


 市場調査会社の富士経済によると、全世界における商用車のFCV市場は2030年度に、2018年度比で38.4倍の15392億円になるという。なおこの数字は、燃料電池FC)をパワートレーンとするトラックやバスに加えて、フォークリフトも含む。

商用車はFCVEVの二択に

 「2039年までに日本で投入する全ての新型トラックとバスを、二酸化炭素CO2)を排出しない車両にする」。こう宣言したのは、三菱ふそうトラック・バス社長のハートムット・シック氏である。同社は商用車市場で世界最大手のダイムラー傘下で、グループの電動化戦略と歩調を合わせる。

 同社は2020326日にオンラインで記者会見を開き、「EVFCV2つ(のパワートレーン)に絞って開発を進めることでゼロエミッションを達成していく」(同氏)方針を明らかにした。同氏によると、「走行中にCO2を排出するハイブリッド車HEV)の開発を中止しており、天然ガス車も(将来的に)製造していかないことを決めた」という。

 三菱ふそう2017年に小型のEVトラック「eCanter」の量産を始めた(2)。現在、日米欧で150台程度が稼働しているが、その中でEVトラックの限界も見えてきた。最大の課題は積載量で、「ディーゼルトラックに比べて最大で400kg減る」(同社)。理由は電池が重いからだ

 

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2 三菱ふそうEVトラック「eCanter

セブン-イレブン・ジャパン仕様。1充電当たり航続距離は100kmである。(撮影:日経クロステック)
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関連記事:“世界初”のEVトラック、電池はベンツと共同開発

 eCanter航続距離は約100kmで、都市部の決まったルートを配送する用途では充電せずに1日使える。だが、より長距離を走る用途では電力が不足し、電池をより多く積めば最大積載量をさらに削らざるを得ない。

 同社副社長で開発本部長を務めるアイドガン・チャクマズ氏は、「最大積載量を考えると、EVトラックが活躍できる航続距離は200kmが限界」と分析した。200kmを超える航続距離を備えるゼロエミッションのトラックを実現するためには、FCに頼る他ないという。

 こうした判断の下、三菱ふそう2020年代後半までにFCトラックを量産すると決めた。量産するFCトラックの車格などは「今後数カ月で検証し、決定していく」(シック氏)。ダイムラーグループはトラックに先行して、FCバスを2022年に量産する計画。FCスタックや水素タンクなどの主要部品や開発資産は、乗用車を含めてグループで共用しながらコストを低減していく。

 

(略)

 

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/03818/?n_cid=nbpnxt_mled_dm

(続く)