戦争の7領域に入る生物学
新時代の防衛分野でもっとも重要なのは生物工学の分野だ。生物の多様性と技術革新は、生物工学的軍事革命を再定義するだろう。2016年以来、中国中央軍事委員会は軍事脳科学、高度な生物模倣システム(バイオミメティクス)、生物学と生体素材、そして新時代の生物工学技術に資金を提供してきた。
さらに重要なことは、第一線から引退した将官で人民解放軍国防大学の前学長、張仕波は2017年の 『戦争新高地』(国防大学出版局)で、生物工学が戦争の新たな7領域のひとつだと言明。現代の生物工学の発展が、「特定の民族への遺伝的攻撃(特定種族基因攻撃)」へとつながる兆候を示し始めていると訴えている。
最近では、国防大学が発行した権威ある書物である2017年版『戦略学』に、軍事闘争の領域としての生物学に関する新たな章が導入された。そこには、「特定の民族への遺伝的攻撃」を含む、将来的な生物工学的戦争について説明されている。
現代の生物工学と遺伝子工学における進歩は、憂慮すべき影響を軍事情勢に与えているのだ。同書は、生物学の進歩が戦争の形態、及び性格に変化をもたらしていると一貫して主張、戦略分析と研究を通して、中国軍のこの分野への関心をうかがい知ることができる。
中国の第13次5カ年計画
軍事と民間の融合に関する中国の国家戦略(軍民融合)は、生物工学を優先事項にあげている。その結果、2017年9月の軍事と民間の統合開発に関する第13次5カ年特別計画が、党中央委員会、中華人民共和国国務院、中央軍事委員会で策定され、中国は軍事と民間の統合開発戦略の完全な実施に向けて動き出した。
この2017年の計画の主な課題は、主要な技術―軍事―民間統合プロジェクトの実行にある。
軍民融合に携わる一連の企業は、国家研究開発計画にしたがって生物工学の分野でいくつかの展開を行っている。それらの技術はデュアルユース(軍事と民間の双方に用いることのできる技術)が可能であり、研究開発は益々加速している。科学的、技術的成果における新しい生産性と、軍事的有用性が形成されている。
この計画はまた、軍民双方の科学技術革新を後押しし、基礎研究と最先端の技術研究のバランスを調整することを目的としている。したがって、国防研究プロジェクトの支援に重点をおきながらも民間の基礎研究を行うため、基礎研究の軍民統合特別基金が設立された。生物工学的な学問の領域を超えた研究や、軍事に応用するための破壊的技術(disruptive technologies)の研究結果が期待されているのだ。
この記事で詳しく言及したように、この20年ほどの間、中国では軍事思想家と研究者によって戦争における生物工学的分野の重要性が指摘されてきた。現在のCOVID-19の状況と、この背景を考慮すると、中国軍の生物工学に対する関心を研究することは、ますます重要になっている。
中国の軍事戦略家たちが「遺伝子兵器」と「無血の勝利」の可能性に言及していることは確固たる事実だ。中国の研究活動とその倫理観への疑問、不透明性のために、この問題はますます難しいものになっている。
上記で引用、言及した資料は、化学兵器や生物兵器などの「国際法および戦争の規則によって許可されていない兵器」を含め、可能な限り多くの兵器を保有し、使用をためらわない中国の動きを擁護するものだ。
これらの文献が主張し求めている危険な提案は、禁止された化学兵器と生物兵器に関する中国の将来の行動について、私たちに警鐘を鳴らしている。
筆者:モニカ・チャンソリア(日本国際問題研究所上級海外フェロー・インド)
https://japan-forward.com/japanese/中国はこの%ef%bc%92%ef%bc%90年、生物兵器開発に注力/
下記は正論の紹介文である。ご参考までに。
「モニカ・チャンソリア氏 インド・ニューデリー生まれ。ジャワハルラル・ネルー大学院で国際関係論の博士号取得。インド陸軍のシンクタンク、陸上戦闘研究センター上級研究員。2017年から日本国際問題研究所上級海外フェロー。月刊「正論」2018年12月号に「沖縄の地方政治より日本の安全保障」を寄稿しています。」
だからなおの事、トランプやポンペオが中国武漢・新型コロナウイルスが人工のものではないなどと言っていることが、空々しく聞こえてくるのであり何かやましいことがあるのではないかと、勘ぐってしまうのである。
アメリカが、Japan Forwardのこのモニカ・チャンソリア氏の寄稿を知らない筈がないのである。
この論考の要旨は、次のようなものだ。順を追って、要点を羅列してみた。
1.
1996年3月の台湾総統選挙で李登輝総統が、地滑り的勝利で当選しているが、中国は台湾の独立阻止の名目で、この台湾総統選挙の妨害に出た。これが「台湾海峡ミサイル危機」である。
台湾有事
台湾海峡ミサイル危機[編集]
1996年に行われた台湾総統選挙で李登輝優勢の観測が流れると、中国軍は選挙への恫喝として軍事演習を強行した。基隆沖海域にミサイルを撃ち込むなどの威嚇行為を行ない、台湾周辺では、一気に緊張が高まった。人民解放軍副総参謀長の熊光楷中将は、アメリカ国防総省チャールズ・フリーマン国防次官補に「台湾問題にアメリカ軍が介入した場合には、中国はアメリカ西海岸に核兵器を撃ち込む。アメリカは台北よりもロサンゼルスの方を心配するはずだ。」と述べ、アメリカ軍の介入を強く牽制した[1]。
アメリカ海軍は、これに対して、台湾海峡に太平洋艦隊の通常動力空母「インデペンデンス」とイージス巡洋艦「バンカー・ヒル」等からなる空母戦闘群(現:空母打撃群)、さらにペルシャ湾に展開していた原子力空母「ニミッツ」とその護衛艦隊を派遣した。その後米中の水面下の協議により、軍事演習の延長を中国は見送り、米国は部隊を海峡から撤退させた。その後中国軍(1996年当時、主力戦闘機はSu-27やJ-8やJ-8II)は軍の近代化を加速させている。
この時の総統選挙は結果、台湾独立志向の李登輝が台湾人特に本省人の大陸への反感に後押しされ地滑り的な当選を果たしたため、中国軍のミサイル演習は童話「北風と太陽」で見られる典型的な逆効果だったと結論付けられている[要出典]。
https://ja.wikipedia.org/wiki/台湾有事
この結果、中国は何も出来なかった。結果として、ただ台湾島の北と南の近海に、大量のミサイルを撃ち込んだだけであった。これで中国の台湾進攻の内容の一端が明らかとなった訳だ。
2.
このため、この台湾進攻の軍事演習に参加していた中国人民解放軍の空軍の将校2人が、「如何にして米軍の戦力に勝利するか」の研究を始めた。その結果、「超限戦」と言う概念をひねり出した。
これは、現在の戦争や人間としてのルールを無視しても、アメリカに勝たなければならない、と言うものであり、その手段として、「すべての境界と規制を超えた戦争」を実行しなければならない、と言うものであった。彼らは、1999年に「超限戦:対全球化時代戦争与戦法的想定」と言う本を出版している。
3.
それは「一切の手段を選ばない戦争」を意味し、地理・政治・経済・資源・宗教・文化・情報・環境・宇宙が対象であり、現在禁止されている「化学兵器、生物兵器、地雷」なども、中国の国益に合致していれば使ってもよい、とするものであった。国益に合致していれば、何をやってもよいと考えたものであった。
(続く)