静岡県川勝平太・悪逆無道(2)

リニアの夢を砕く~川勝平太静岡県知事は ズブズブ親中派【白川 司】

  • 公開日:2021527

  • 更新日:2021527

東京~名古屋間を40分間で行き来できるリニアモーターカーに待ったをかける川勝平太静岡県知事。リニア事業の頓挫は、日本経済発展の有力な材料を失わせるとともに、中国に稀少な技術を横取りされる危険性を高めるものだ。いったい知事の目的は何なのか―(『WiLL20217月号初出)





白川 司:リニアの夢を砕く~川勝平太静岡県知事は ズブ...

白川 司:リニアの夢を砕く~川勝平太静岡県知事は ズブズブ親中派 

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打ち砕かれたリニアの夢

 「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」──これは箱根街道で人や荷を馬で引く馬子が歌う「箱根馬子唄」の冒頭の歌詞である。現在、この歌詞のとおりのことが、「日本人の夢」と呼ぶべきリニア計画に起こっている。

 宮崎県の実験場でリニアモーターカー時速500キロを突破したのは、今から40年以上前の1979だった。それ以後、リニア計画は国鉄の分割・民営化による経済状況に翻弄され続け、この世界一の技術は実現しないままに時が過ぎた。それでもJRは、国鉄の技術と魂を引き継ぎ、リニアの安全性を高めることに腐心して、総額9兆円を超える一大プロジェクトは東京・名古屋間2027年開業予定にこぎつけた。

 ところが、これに待ったをかけた人物がいた。静岡県川勝平太知事である。トンネル工事によって大井川が減水するという理由で準備工事の着工を認めず、時速500キロを達成してから半世紀近い2027年の開業すら絶望的になっている。

 川勝知事はなぜリニア開業を認めないのか──彼が20208月に朝日新聞に寄稿した手記がある。約4千字のその手記に川勝知事は「リニア中央新幹線vs水・南アルプス・流域住民」というタイトルをつけている。

 「○○対××」といった単純な二元論でしか物事をとらえられない浅薄さが、川勝平太という政治家の本質を如実に浮かび上がらせる。手記の内容も予想どおり浅薄なものだった。

 「自分はもともとリニア推進派であり、それが静岡県のために良かれと思った。中国の朱鎔基首相(当時)が来日の際、『リニアの中国移転を提案する』という情報があり、技術者の意見を聞いてそれを拒むように小渕首相(当時)にも提案した。だが、大井川流域の歴史と住人とのつながりを調べて、大井川の『命の水』を守ることにした」などといった「政治家・川勝平太の成長物語」が描かれている。

 興味深いのは、川勝知事に〝葛藤〟がまるで感じられないことだ。川勝知事には県民の利益を守るとともに、日本国民としての立場もあるはずだ。ところが、環境にまつわる感動物語でいとも簡単にリニア推進派の過去を捨て、どれだけの国益を損ねるかわからないリニア反対派に宗旨替えする。いったん環境派になってしまうと、〝環境破壊者〟であるJR東海や国交省を相手にヒーローのように闘う。これまで国に逆らうような首長を輩出してこなかった静岡県民からすれば、胸のすくような〝英雄〟に見えるのも理解できないことはない。

 だが、葛藤がない政治家は危険である。川勝知事はリニア開業に対して「リニア工事凍結を促す」の一点張りなのである。政治はお互いの利益を最大化するために妥協点を探るものであるが、川勝知事には「自分の正義」しかない。そのため、正義に反対するものはすべて「成敗すべき悪」なのである。いまや「工事一時凍結」を平気で口にしているが、一時凍結とは自分が知事である間は絶対に認めないということだろう。



白川 司:リニアの夢を砕く~川勝平太静岡県知事は ズブ...

白川 司:リニアの夢を砕く~川勝平太静岡県知事は ズブズブ親中派 
リニアの夢はこのまま砕かれるのか? via ガリレオX ウェブサイト

言いがかりの反対案

 問題となるリニアの静岡県のトンネル工事はわずか11キロメートルであり、そのうち静岡工区の工事は8.9キロメートルである。国鉄JR東海が半世紀もの時間をかけてつくり上げたものが、このわずかな工区が許可されないために立ち往生している。この工区は大井川の源流部にあたり、地下深くにトンネルを掘ると大井川の水量が減り環境が悪化しかねないというのが反対理由だ。だが、その理由は「最終的に行き着いたもの」であって、あくまで反対ありきだった。

 というのは、20196月に「(新駅の建設費用)全体の平均ぐらいは、(県への支援金の)額(約8百億円)の目安になる」「それが無理であれば、新幹線空港駅の新設や、のぞみの静岡駅や浜松駅の停車を求める」と述べて、県民のためのことをやってくれるなら工事を認めることを示唆しているからである。

 ところが、県民の利益よりリニアを認めたくない」という気持ちが強くなったのか、今度は「(工事で減水する毎秒2トンの水量は大井川流域の)静岡県62万人の命の水である」「(トンネル湧水を)一滴たりとも失うことがあってはならない」などと運動家まがいのことを主張し始めた。

 この「減水する毎秒2トン」については、JR東海が「覆工コンクリート等がない条件で」と出した最大値であるため言いがかりに近い。しかもJR東海はトンネルから出た湧き水はすべて大井川に戻す対策を実施するとしているので、住民が利用する水は失われずに済むと考えられる。そもそも100キロメートル以上離れたトンネル工事が生活に支障を来すほどの影響を与えた例はない。



白川 司:リニアの夢を砕く~川勝平太静岡県知事は ズブ...

白川 司:リニアの夢を砕く~川勝平太静岡県知事は ズブズブ親中派
川勝知事が問題視する大井川

環境活動家のような知事

 サイエンスライターの河崎貴一氏は、静岡県が大井川上流の田代ダムから毎秒4.99トンの水を山梨県側の発電所に送って、富士川に放流させるのを認めていることを指摘している(ITmediaビジネスオンライン2019101'21.2.10の当ブログ”日本学術会議」は親共・容共組織”のNO.50~参照のこと)。

 トンネル工事で失われる「命の水」は許さず、その2.5倍の水が山梨にいくのは許すというのだ。その水は最終的に富士川に戻されるので、「大井川が減っても富士川が増えてとんとんになるならいい」ということでもないだろう。つまり、大井川の減水も反対のための理由を見つけ、工事を頓挫させたというだけなのだろう。

 前沖縄県知事翁長雄志氏(故人)は、「辺野古の珊瑚は一本も折らせない」などと言いながら、中国便などを増やすための那覇空港の拡張工事を推進して、那覇沖の珊瑚礁が破壊されることに何も言わなかった。「ゼロリスクでないならやめろ」と言いながら、自分側の矛盾した行動は気にしないという点で、両者は似ている。言い換えると、政治的妥協などせず、己の正義に酔っているだけではないのか。
 
 ただし、沖縄県は反米軍基地運動を続けることで国から果実を得ているが、静岡県は「命の水」という想像上の産物を守っているに過ぎずほとんど利益がない。安全保障に関わるという点を除けば、県民の利益のために働いている点では翁長氏のほうがはるかにマシだろう。

 いや、この問題は「県民の利益」だけみて済む話ではない。というのは、20204月に中国の浙江省政府が「上海市から杭州市を経由して寧波市と結ぶリニア建設を総額36千億元(60兆円)もの巨額を投じて2035年の開業を目指す」と発表したからだ。

 ということは、川勝知事のためにすでに2027年の開業が困難になった日本のリニア開発と、中国のリニア開業にわずかの差しかなくなり、川勝知事が6月の静岡県知事選で再選してリニア反対をさらにつきつければ、もしかしたら中国のほうが先に開業することになるかもしれない。

 リニアは単に東京と名古屋・大阪間を短時間で往来するためのものではない。リニア自体が強力な輸出品になる可能性を秘めているのである。中国が先に開業してしまえば、リニア輸出は中国に横取りされて、半世紀以上の国鉄JRの技術者の夢が砕かれるだけではなく、国益を大きく損なうかもしれないのである。

(続く)