世界の流れは、EV化(1)

2021714日、EUのヨーロッパ委員会(EC)の「ウルズラ・フォン・デア・ライエン」委員長は、「欧州グリーンディール法案を発表した。

 

EU2019.12.11に、欧州グリーンディール政策の最終目標として2050年にカーボンニュートラルCNとする、CO2排出ゼロ目標を発表している。

 

今回の欧州グリーンディール法案はその中間目標であり、その内容はCO2などのGHGを「2030年までに1990年比で少なくとも55%削減するという厳しいものであった。

GHGGreen house Gas 温室効果ガス

 

2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組みは、2015年にバリで開かれた「国連気候変動枠組み条約締約国会議COP21」で合意されたもので、「バリ協定」と呼ばれている。

 

パリ協定で決められた世界共通の長期目標は次のようなもので、2050年にはGHG温室効果ガス)を実質ゼロとすることも決められている。

 

パリ協定長期目標

 

(1)世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする

 

(2)その他、できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる

 

https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/tokushu/ondankashoene/pariskyotei.html

 

というもので、2050年には森林などが吸収するCO2の量にまで世界の排出量を減らさなければならない、ということである。実質CO2の排出量はプラスマイナスゼロとなる。

 

そしてすべての締約国に対して、GHGの削減目標と進捗状況を報告してレビューを受けることが定められています。

 

1997年のCOP3京都議定書が先進6カ国だけに削減義務が課せられていたものが、締約国187カ国・地域をカバーするものとなり(101912月時点)、不平等感はなくなったものの世界の気候変動は収まる気配がない。

 

 

そのため、EC の自動車にたいするCO2削減もそれなりに厳しいものとなっている。

 

欧州委員会ECの自動車に対するCO2削減目標

 

(1)2030年までに2021年比でCO255%の削減 ← 当初は37.5%削減であった。

(2)2035年までにはCO2100%削減 HEVPHEVも販売できなくなる。

 

という厳しいものである。

 

2035年までにCO2100%削減ということは、エンジン車は販売することができないということで、EUでは、ICEInternal Combustion Engine内燃機関)であるガソリン車とディーゼル車の販売が禁止されると言うことになる。

 

トヨタの得意とするHEVハイブリッド車ICEとモーターを使用)も、販売することができなくなる。当然PHEVプラグインハイブリッド車)も販売できない。

 

すなわちEVFCVしか売れないことになるもので、トヨタとしてもEVへひた走らざるを得ないのではないのかな。今トヨタが盛んに宣伝している水素エンジン車は、当然、EVに含まれるが、現行エンジンの改良でH2・水素を燃焼させることができるので、雇用の維持などには好都合である。

 

2021年の「95gの壁」も、電気自動車だけのテスラとHEVと得意とするトヨタだけがクリアできたのであるが(他社は莫大な罰金を支払っている)、2035年規制にはICEが禁止されることになるので、HEVでも無理である。

 

トヨタとしてもHEVから、EVFCVにすべて転換しなければならないことになったわけである。EUのメーカーは(VWディーゼルゲートにより)それなりにEV化への準備を進めていたから、苦労はどのメーカーも同じく大変ではあるが、それほどの(心理的には)衝撃ではなかったのではないのかな。

 

 

 

EU2035年に全面禁止検討 エンジンは本当に消滅するのか 高根英幸 「クルマのミライ」
2021
07270700分 公開 [高根英幸ITmedia]

 7月中旬、EU欧州委員会2035年にEU圏内でのエンジン車販売を禁止する方針を打ち出した。これはバッテリーの電力で走れるプラグインハイブリッドは除外される可能性はあるものの、マイルドハイブリッドやフルハイブリッドも禁止される見込みだ。つまり、現時点ではバッテリーEVFCVしか認められない、という方向で検討されている。



 これが可決されれば自動車メーカー、特に日本の自動車メーカーにとって、非常に厳しい対応を迫られることは明白だ。

 

ポルシェは高性能EVスポーツ「タイカン」をデビューさせたが、その一方でeフューエルによるエンジンの存続にも力を入れている。35年のエンジン車販売禁止が可決されれば、方針転換をするのだろうか(メーカー提供)

 EV推進派の論理は、「クルマは電力を使うモデルに集中させて、後は電力をどう供給するかに専念すれば、環境対策は効率的に進む」というシンプルなものだ。中国はEVを主流にすることで日系メーカーの優位性を崩し、さらには輸出によって国際自動車市場でのシェアを獲得しようと目論んでいるから、欧州の電動化政策の強化は歓迎していることだろう。

 そう、EUがその圏内において課する規制は、必ずしも自らの圏内経済保護とは限らない。EUには圏内の自動車メーカーにも厳しい規制を強いる厳格さがある。そして欧州自動車メーカーの中には、今回の規制強化を喜んでいないところもある。

 それだけにEUは一枚岩ではないことを念頭に置いておくべきだろう。このまま法案がすんなり通るとは限らない。環境対策に頑なな強硬派もいれば、コストや地域の環境に応じて柔軟に導入すべきと考える現実派、気候変動は別の原因だと主張する懐疑派も存在する。これから数年は、どのような議論を経て最終的な目標設定や罰則が設けられるか、注目されるものとなりそうだ。

 そこでEU35年規制によって、自動車メーカーの勢力図や販売されるクルマはどう変わっていくのか、悲観的シナリオと楽観的シナリオも含めて、その行く末を占ってみたい。

(続く)