世界の流れは、EV化(7)

先の論考に次のようなフレーズある。

 

CO2排出量の多い電源で生産し、EUに輸出するような電池は、基準をクリアできず販売できない恐れがある。

 

これはとても厳しい規制である。課徴金が掛けられるのではなくて、販売してはいけないというものである。とても厳しい。

 

この考えは、いわゆる「国境炭素税」という機能に行き着く。CO2を多く出して作られる環境に悪い製品だからと言って、すべてを輸入禁止には到底できない。その代わりに、できるだけCO2を出さないように工夫して作って貰いたいと言うことである。CO2を基準以上に排出して生産される製品には関税を掛けようというものである。

 

 

国境炭素税、すなわちEUの言う国境炭素調整措置(CBAM)として、実施されようとしている。

 

CBAMとは、Carbon Border Adjustment Mechanism で、気候変動対策が不十分な国からの輸入品に対し、生産過程で排出された炭素の量に応じて、自国と同等の排出負担を課す措置のことである。EUは他国との通商摩擦を起こしても、環境対策のためなら実施するつもりのようだ。

 

日本もうかうかしてはいられない。石炭火力発電なんぞは、早急に辞めなくてはならないことのなる。

そして石炭火力を補うものは、今のところ原子力発電(と再エネ)しかない。

 

 

EU脱炭素、日米と同床異夢 国境炭素税で摩擦辞さず

2021/8/2 23:00 (2021/8/3 4:57更新)
日本経済新聞 電子版

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EUの気候変動対策を発表するフォンデアライエン欧州委員長(714日、ブリュッセル=AP

欧州連合EU)の欧州委員会が域内の温暖化ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする目標実現に向けて包括案を公表した。掛け声だけでなく、具体案を出すのは主要国・地域で初めてだ。環境覇権を狙うEUの野心が透ける。

「欧州は(世界を)先導する準備ができている」。フォンデアライエン欧州委員長は714日、包括案を公表した記者会見の冒頭発言をこう締めくくった。EUが気候変動分野のトップランナーであり続けるには、他国との摩擦も辞さないとの決意表明でもあった。

なかでも強い姿勢を示すのが国境炭素調整措置(CBAMだ。EU関係者によると、環境規制の緩い国からの輸入品に事実上の関税をかけるCBAMについて、日米などの国から「EU単独で発表するのか」との問い合わせが相次いだ。自国のどの産業にどの程度の影響があるか、制度設計を尋ねる内容だった。

実際に導入されれば他国にとっては負担増になる。環境・通商摩擦が起きるのは明白だ。ケリー米大統領特使(気候変動問題担当)は3月、CBAMを「最後の手段とすべきだ」とけん制した。バイデン米大統領6月のEU首脳との会談で懸念を伝えた。

それでもEUは独自の発表にこだわった。CBAMの負担額は域内の排出量取引制度の価格をもとに算出する。05年から制度を導入したEUには「ノウハウが蓄積されている」(ティメルマンス上級副委員長)。

EUは、排出量取引など国レベルの炭素価格を持たない日米がCBAMを直ちに採用するのは難しいとみる。中長期で日米とCBAMで連携する「グリーン同盟」を組む可能性は排除しないものの、EUが主導権を握るとの意思表示といえる。

背景には米中のどちらかが環境覇権を握ることへの警戒感がある。IT(情報技術)を巡る技術覇権争いでEUは米中に後れを取った。欧州委がいち早く対策を公表したのもEUの温暖化ガスの排出量は世界の8%にすぎず、EUの存在感がかすみかねないとの危機感からだ。欧州政策研究所のエルカーバウト・リサーチフェローは「野心的な対策であり、他国に対してEUが(環境政策の主導権を握る)ゲームに参加していると理解させた」と語る。

中国が勝てば、世界の脱炭素化の首根っこを押さえられる。国際エネルギー機関IEA)によると、電気自動車(EV)の生産に欠かせないレアアース(希土類)の加工で中国は9割近いシェアを握る。リチウムとコバルトは6割前後だ。

米国はバイデン氏が大統領に就任し、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」への復帰を決めたが、将来にわたって国際的な指導力を発揮できるか不透明感を払拭できない。ブッシュ元大統領(第43代)が京都議定書の批准を拒否し、トランプ前大統領はパリ協定から離脱した過去があるからだ。共和党政権に戻れば歴史が繰り返される可能性は否定できない。

包括案はCBAMに加え、ガソリン車やディーゼル車など内燃機関車の35年までの事実上の販売禁止達成や、自動車や冷暖房の燃料に炭素価格を課すなど家計の負担増にも踏み込んだ。

ポーランド経済研究所などの試算では、EU低所得者層の平均年間負担額が自動車で44%、冷暖房で50%増える可能性がある。比較的所得の低い東欧などに不満がくすぶっている。

一部の業界団体も反発している。機械や電気、電子関連の団体はCBAM導入で、原材料価格が上昇する可能性への懸念を表明した。欧州自動車工業会内燃機関車の販売禁止を「単一の技術を禁止するのは現段階では合理的ではない」と批判した。

EUは内部に不満や反対論を抱えながらも、45千万人の市場を後ろ盾に域外の国や企業に新たなルール導入を迫る姿勢を鮮明にした。日本や米国とは共通の価値観に基づき、対中政策などで共同歩調をとるが、環境分野では日米と同床異夢の状況を強めている。

ブリュッセル=竹内康雄)

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https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR16EC10W1A710C2000000/

 


もし国境炭素調整措置(CBAM設定されれば、一番困るのは中国となろう。

 

中国からは日本をはじめ欧米に大量に輸出しているし、中国には欧米の企業がたくさん進出している。

 

しかもアメリカのバイデン大統領は、「パリ協定」の合意を満たせない国からの製品に「炭素調整料」を課すと公約しているようで、EUCBAMと同じような考えを持っているようだ。だからバイデンの米国は、EUと共同歩調が取れそうなのだ。


(続く)