世界の流れは、EV化(22)

リチウムイオン2次電池が発火する原因を、次のように羅列している。

 

(1) 製造工程で混入した金属異物がセパレーターを破り、内部短絡が発生し火災となる。

 

(2) 充電時に「デンドライト」という金属リチウムの針状結晶が生成され、セパレーターを破り
  内部短絡が発生し火災となる。

 

(3) 衝突などの外部衝撃で電池が破損し、燃えやすい電解液が発火して火災が発生する。

 

(4) 過充電などで部材が熱を帯び、場合によっては熱暴走を引き起こし火災なる。そのため
  燃えやすい電解液を無機系の固体電解質に置き換える研究が進んでいる。

 

(5) そんな訳で、保管しているうちに発火する場合もある。

 

 

だから車載電池の開発には、日本の自動車メーカーは、独自に厳しい安全基準と試験規格を設けて開発や評価試験を繰り返しているのである。だから今までに一件もの火災事故を起こしていないのである。

 

これに対して、欧米韓中の自動車メーカーは、日本の自動車メーカー各社の厳しい基準とは乖離したゆるい基準で開発などが進められていた、と言うことである。

 

例えば、正極材では、コバルトの価格が近年高騰しているので、安価なニッケルを多量に使用してコストダウンを図る、などというリスクのあるコスト低減を、特に中韓の電池メーカは実施している。

 

正極材には、ニッケル、コバルト、マンガンの三元素を1:1:1で使用することが、性能と安全性を確保するための条件であったが、価格が高騰するコバルトの比率を下げて、ニッケルを多用するハイニッケル化が進んでいる、と言う。

 

ニッケル、コバルト、マンガンの比率は、6:2:2、そして8:1:1までに、中韓の電池メーカーでは進められている、という。

 

まあ、中韓のバッテリーがこんな状態であれば、容易に火を噴くのは当たり前となっているようだ。まことに怖い話である。

 

そんな中LG Chemの子会社・LGエネルギーソリューションは、ステランティスと北米で合弁会社を設立して、EVの車載電池を生産すると、(欧州ステランティスが)'21.10.18に発表している。

 

総投資額は4000億円に上るという。このリコールなどの混乱期に、重大な経営上の決断が、よくできるものだ。この点は、日本の経営者も見習わなければならない事案だ。と言っても、EV化は世界の趨勢となっているので、バッテリーをどうやって確保するかは以前からの経営上の課題であったわけで、それなりの検討は以前から進んでいた、と言うことではないのかな。

 

しかもLGは、現在、ドイツ、フランス、および米国で2か所、さらにはインドネシアポーランドでも、単独ではないが、電池工場の建設を進めているという。この迫力は大したものだ。

 

そんな状況なので、品質問題も発生してしまった、と言うこともできる。人材不足なのか。

 

 

 

ステランティスLG、北米でEV電池合弁 4000億円投じ

2021/10/18 17:27 (2021/10/18 17:58更新)
日本経済新聞 電子版

ステランティスは、GMとも合弁を組むLGと北米で電池を生産する=ロイター

ステランティスは、GMとも合弁を組むLGと北米で電池を生産する=ロイター 

【フランクフルト=深尾幸生、ソウル=細川幸太郎】欧州ステランティス18日、韓国LG化学の電池子会社、LGエネルギーソリューション合弁会社を設立し、北米で電動車用の電池を生産すると発表した。年間生産能力は40ギガワット時で2024年の生産開始を目指す。関係者によると総投資額は4000億円規模になるという。バイデン米政権が求める電気自動車(EV)シフトを加速する。

 

両社が覚書を結んだ。建設地は現在検討中だが、22年半ばに建設を始めたい考えだ。工場で生産する電池の中核の「セル」やセルを組み立てた「モジュール」を、「ジープ」などステランティスが米国やカナダ、メキシコで生産するEVプラグインハイブリッド車PHV)に搭載する。EV換算で40万~80万台分に相当するとみられる。

 

ステランティス7月、北米の新車販売の4割以上をEVPHVにすると発表。全世界で25年までにEV分野に300億ユーロ(約4兆円)を投じ、30年までに年間260ギガワット時の生産能力を確保するとしていた。

 

欧州では仏トタルエナジーズとの合弁でドイツとフランスに電池工場を建設しており、車載電池世界2位のLGと組むことで北米での電池調達も確実にする狙いだ。

 

LG22年と23のそれぞれの稼働を目指してゼネラル・モーターズGM)と米国の2カ所で合弁工場を建設中。さらにインドネシアでは23年稼働予定の韓国現代自動車との合弁工場、ポーランドでは自社工場の増設を進めている。

 

各工場の同時立ち上げで人材不足が指摘されるなかで、品質問題も表面化している。GMと現代自のEVのリコール(回収・無償修理)のためにLG側がそれぞれ1000億円規模の負担金を支払うことで合意した経緯がある。EV需要の急拡大で一部の電池メーカーに増産要請が集中する課題も生まれている。


https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1860R018102021000000/

 

 

国際的なEV化の流れの中で、自動車メーカー各社はバッテリーの確保に躍起となってきているようだ。脱炭素化の流れの中では、まずはEVを作って売らなくてはならないから、当然のことである。

(続く)