それではバイオ燃料やe-Fuelとはどんなものであろうか。
その前に、『あくまでもデモンストレーションであって、本気で考えているとは思わない。保有車のCO2削減を考えれば、水素ではなくバイオ燃料、e-Fuelが現実的だ。』と書かれているが、水素エンジン車とはどんなものか、概略してみたい。
先ずは、このバッテリーの欠点と雇用問題を避ける意味で、既存設備が使える水素エンジンが注目されている。バッテリーの革新、例えば全個体電池などの話は後に譲るとして、まずは水素エンジンについて、まとめてみた。
(1) EVの最大の欠点は「航続距離が短い」と言うことである。長距離輸送にはEVは向かない。
(2) 大型~小型トラック、船舶、鉄道、バスなど長距離輸送には、『水素エンジン、FCV』が最適。
(3) 2020/7月、欧州委員会ECは水素戦略は発表、水素に巨額の投資をすると発表した。
中国は燃料電池(FCV)トラックに興味、米国はGreenH2に興味、G7も水素の商業化に言及
https://president.jp/articles/-/46422
(4) 水素は最も豊富な元素で、再エネと水でどこでも生産できる。最近は「光触媒」で水を分解して水素を取り出す方法も試されている。
(5) 水素を燃やしてもCO2を排出しない。再エネも限りなくコスト低減が進むであろう。
(6) 欧州委員会ECは、世界に先駆けて「水素サプライチェーン」の構築を企画している。
(7) カーボンニュートラルには、EVと水素H2のどちらも必要となる。バッテリーの希少金属には限りがあるが、水素は豊富に存在する。
(8) 水素エンジンは、従来の内燃機関を活用できる。内燃機関でもCO2フリーが達成できることを示すために、トヨタは5/22~23の富士スピードウェイでの24時間耐久レースに参戦して、世界で初めて水素エンジン車で完走した。但し24h中実走行時間は12hで、半分はピット作業と水素の充填時間(4h、35回)であった。
https://response.jp/article/2021/05/24/346061.html
(9) 水素エンジンとは、ガソリンエンジンの
『インジェクターとプラグ』と『燃料供給システムと水素タンク』を変えたもの。
↑デンソーとともに開発 ↑FCV・ミライのものを水平展開 水素タンク4本搭載
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/10437/
トヨタ自動車が自動車レースの参戦車両に搭載する「水素エンジン」のイメージ=トヨタ提供
水素ガス噴流が拡散する前の塊に点火して燃焼。産総研の資料を基に日経クロステックが作成。
噴射量は相当多くしている。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/mag/at/18/00006/00301/
(10) 水素エンジンの課題は、「ブレイグニッション・早期着火」の抑制。高温部に接すると自着火。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/10437/
(11) 水素エンジンは、低純度の水素が使える。FCVは純度99.97%と非常に高価だ。
排気量当たりの出力、トルクはディーゼルを上回る。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01537/00051/?n_cid=nbpnxt_mled_fnxth
(12) 24h耐久レースでの燃費は、およそ0.33km/L,H2 と燃費は非常に悪い。
1周4.563km、13周で水素充填、満タンで180Lで計算。
初期型ミライ、650km/122.4L(水素タンク)=5.3km/L
https://response.jp/article/2021/05/24/346061.html
(13) と言うことだが、トヨタとしては、「脱炭素社会に向けた選択肢を広げる第一歩を示せた」と
強調している。まあ今後の技術革新を期待したいところ。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021052300369&g=eco&p=20210523atG2S&rel=pv
24時間耐久レースを完走したトヨタの水素エンジン車(23日、静岡県小山町で)
と言ったところが『水素エンジン』の状況なのであるが、水素・H2は燃費が悪すぎる。しかもそのため水素タンクを沢山積む必要があり、パッセンジャーシートはタンクで満杯となってしまう。これでは、いくらCO2を排出しないからと言っても、クルマとしての機能が半減されてしまう。
従って、水素エンジン車は当分の間、モノにはならないであろう。先の論考にもそんなことが書かれている。
(続く)