世界の流れは、EV化(38)

水素エンジンの水素と共にCO2H2炭化水素化合物(合成燃料)を燃料とすることも、「脱炭素」の一手法である。この合成燃料に対しても、トヨタは相当興味を持っているようだ。かなり前から研究材料の重要な一つであったのであろう。

 

水素エンジンもレースで鍛えていったが、この合成燃料もレースで鍛えようとしているようだ。トヨタの開発陣は、それこそ「あれやこれや」の開発テーマで悪銭苦闘の状態であろうが、豊田章男社長は手綱を緩めるそぶりは少しも見せていないようだ。

 

合成燃料の新開発エンジンを「スーパー耐久レース」に参戦させる、と言うのだ。

 

 

 

 

豊田章男社長がいきなり発表、2022年は水素カローラに加え合成燃料使用の3気筒1.4リッターターボ搭載GR86S耐参戦へ

  • 編集部:谷川 潔 2021111322:19

  •  

記者会見で、いきなり3気筒1.4リッターターボ搭載GR86S耐参戦を発表するトヨタ自動車株式会社 代表取締役社長 豊田章男        

 

 1113日のスーパー耐久終戦岡山の予選日には衝撃的な発表が次々に行なわれた。トヨタ自動車 豊田章男社長、マツダ 丸本明社長、スバル 中村知美社長、川崎重工業 橋本康彦社長、ヤマハ発動機 日髙祥博社長の出席した記者会見では、マツダバイオディーゼル使用のデミオで、スバルが合成燃料使用のBRZで、2022年のST-Qクラスに参戦することが発表された(デミオは最終戦にも参加)が、2022年はトヨタの参戦体制も大きく変わることとなる。

 

 現在、トヨタST-Qクラスへの参戦は豊田章男社長がオーナーを務めるルーキーレーシングへ委託されている形になり、水素燃焼エンジンを搭載する「水素カローラ」はルーキーレーシングから参戦している。また、ルーキーレーシングでは、「GRスープラ」のGT4用先行開発も行なっており、28号車としてST-Qクラスに参戦している。

 変わらないのは、水素カローラの参戦のみで、そのほかは大きく変わることとなる。

 まず、前提としてST-Qクラスにマツダバイオディーゼルデミオが加わり、スバルが合成燃料使用の「BRZで加わることとなる。このBRZ2代目BRZと同じく2.4リッターの自然吸気水平対向4気筒エンジンを搭載。スバルとして水平対向4気筒エンジンのカーボンニュートラルを追求していくものとなる。

 トヨタも「GR86」でST-Qクラスへ参戦と発表されていたが、会見で豊田章男社長は搭載エンジンを「1.4リッターターボ」と発言。会場は一瞬ざわめき、記者自身も「トヨタに、今そんなエンジンあったっけ??」と頭の中がはてなマークだらけに。後ほど設定された、TOYOTA GAZOO Racing カンパニー・プレジデント 佐藤恒治氏の取材時に確認してみることにした。

サプライズだった、3気筒1.4リッターターボの発表

会見の後行なわれたスバル&トヨタ説明会。いわばディープダイブセッション。左から2人目がトヨタ自動車株式会社 TOYOTA GAZOO Racing カンパニー・プレジデント 佐藤恒治氏ラリージャパンの発表会後、かけつけた  

 

 TGRプレジデント 佐藤恒治氏によると、トヨタ&ルーキーレーシングは2022年のスーパー耐久3台体制で挑むことになるという。1台は、水素燃焼エンジン搭載カローラ。これは、今シーズン改良を加えれられているが、課題も見つかっており、その解決のために2022年もST-Qクラスに参戦していくという。

 そして、豊田社長が発表したST-QクラスのGR86は、GRスープラに代わってST-Qクラスに参戦するものとなり、豊田社長の発言どおり1.4リッターターボ、しかも3気筒エンジンとのこと。

 佐藤TGRプレジデントはじめトヨタスタッフは、この会見で発表することを誰も聞いておらず、完全にサプライズの発言であったとのこと。この1.4リッターターボの真意は、「ターボ係数をかけて、2.4リッターの自然吸気のエンジンと同クラスに収まるもの」(佐藤TGRプレジデント)とのこと。つまり、同じ合成燃料を使うスバル BRZの自然吸気水平対向エンジンに対し、ダウンサイジングターボで戦うというチャレンジになる。

注目のエンジンストロークは?

 このエンジンブロックは水素カローラにも転用されているGRヤリスのG16E-GTSエンジンを流用したものになるとのことだ。で、GRヤリス用G16E-GTS型エンジンのボア×ストローク87.5×89.7mm、単気筒あたりの排気量は約539.1ccとなり、3気筒で1618ccと発表されている。

 このブロックを転用するとのことで、その後あれこれ聞き回ってストロークの短縮で対応することが分かった。1400ccの排気量に納めるべく逆算していくと、87.5×77.0mmのボア×ストロークであると単気筒あたり約462.8ccに収まり、3気筒で約1388.3ccになる。この辺りのストロークになるのだろうか。

 というのも、トヨタエンジンで記憶しておきたい名エンジンとしては、2.0リッターの3S-Gエンジンや、1.6リッターの4A-Gエンジンがある。3S-G型エンジンのボア×ストロークはスクエアの86.0×86.0mmと覚えやすく記憶している人も多いだろう。一方、GR86のご先祖さまであるAE86に搭載されていた4A-G型のボア×ストローク81.0×77.0mmショートストロークエンジンとして知られていた。一般にエンジンの回転数限界はピストンスピードが大きく関わっており、ストロークの長さはピストンスピードに影響する。4A-G型エンジンはレースでも活躍しており、トヨタには77mmストロークに対する回転数限界ノウハウなどが蓄積していると思われるのだがどうだろうか? なにより、GR86がご先祖さまのAE86と同じストロークのピストンで走っているというのは、1つの内燃機関のロマンだろう(外れていたらごめんなさい)。

 いずれにしろ、87.5×77.0mmのボア×ストロークとなると、4A-G型を超える超ショートストロークタイプのエンジンとなる。近年はロングストロークタイプのエンジンが多く、ショートストロークエンジンをどうカーボンニュートラルにもっていくのか楽しみになる。

 そのほか現行のGR86S耐仕様も参戦。こちらはガソリンエンジンモデルで、新型となったGR86のパーツ開発やポテンシャル開発を通じて、次期型への進化を模索していくものだ。

(続く)