世界の流れは、EV化(48)

では、試作車について伺います。VISION-S 01がクーペスタイルのスタイリング、今回のVISION-S 02SUV(多目的スポーツ車)です。これはどんな狙いからですか。

川西 今回、SUVにしたのは、最初に構築したEVのプラットフォームの上で、より居住性の高いSUVを造れることを検証するためです。別の言葉でいうと、上物は変わっても、同一のプラットフォームが可能かの実証です。ここでは広い室内空間を用いたエンターテインメント体験やフレキシブルな乗車定員による空間創造などを通して、ライフスタイルへの対応を見ていきます。車体構造は(2020年の発表時から)時間がたっていますから、各種、改良されていますし、今後もバージョンアップしています。このSUVCES 2022ではデザイン的にも評価されたと認識しています。

とっても上質で、かっこいいと思います。EVのプラットフォームですから、これから商品化に当たっては、クーペ、SUVだけでなく、セダン、スポーツカーなど幅広い展開ができそうですね。

川西 はい、上側の車体は交換できるよう初めから設計してあります。EVはフロア下にバッテリーを設置しますので、車高の低い車は難しいのです。その意味ではSUVは車高が高いので、ゆとりを持って造ることができました。これからも、今持っているEVプラットフォームを生かしていきたいと思います。

ついでに商品企画もお聞きします。発売の折には、どんなクルマになりますか?

川西 それは、今は言えませんよ(笑)。

今回披露した「VISION-S 02」の俯瞰(ふかん)イメージ

今回披露した「VISION-S 02」の俯瞰(ふかん)イメージ
(出所:ソニーグループ)   [画像のクリックで拡大表示]   

どこが造る、どうやって売る、サービスする

それはそうですね。でも2つの試作機は、エンドユーザーも大歓迎すると思いますよ。さて、次はビジネスモデルをお聞きします。クルマを造るとなるとどこが開発するのか、製造するのか、どうやって売るのか、どうやってサービスするのかという関門があります。まず開発ですが、家電業界では、デザインから製造まで、お任せするODM(相手先ブランドによる設計・製造)という手法があります。製造も含め、今はオーストリアMagna Steyr(マグナ・シュタイヤー)とお付き合いされていますね。

川西 確かに家電では、設計、開発まで外注するやり方が盛んですが、簡単に家電商品のように完全分離ができるわけではないことも認識しています。「走る・曲がる・止まる」のクルマの基本部分は協業が必要です。ここは慎重に、ある程度切り分けをしていくようなアプローチを考えていきます。2020年にVISION-Sプロジェクトを発表してから、さまざまな企業からお話をいただきました。パートナーさんもたくさんいらっしゃいますので、幅広く考えています。基本方針として、アセット(資産)はなるべくライト(軽く)にしたいと思っています。

販売ですが、基本的にはソニーストアに商品が置いてあって、そこで販売ができ、さらにネット販売するというイメージでしょうか。

川西 販売の形態まで具体的に今の段階で申し上げられないですけれど、そういう可能性は当然ありますね。いずれにせよ、一番お客さまがお求めやすい形をご提案させていただくことになるかなと思います。これだけというわけではないです。また当然アフターメンテナンスは必要になりますから、全国の整備工場と連携することになるでしょう。

競合問題はイメージセンサーXperiaの関係に似る

BSの番組を見るとソニー損保のCMが目立ちます。グループとしてVISION-Sを推していこうみたいな動きも期待できます。

川西 われわれが今持っているエレクトロニクス、半導体、ゲーム、音楽、映像コンテンツ、金融、保険というソニーグループの事業をかなり生かせる部分は、とても多いです。ソニーグループのビジネス的には出口としては非常に良い素材だと思います。

なるほど、ソニーグループはVISION-Sを生みだし、育てるために、これまで事業を拡大してきたという言い方もできますね。さて、社内的にはそのとおりですが、社外へのセンサーなどの部品販売という点では、競合問題はどうなのでしょうか。というのも朝日新聞デジタル202217日付の日本電産永守重信会長インタビュー記事に「モーターを納めている自動車メーカーはお客さんであり、競争しないのが原則。モーターという部品をいろんなメーカーに供給した方がシェアが取れる」という発言がありました。つまり、日本電産EV用のモーターは力を入れるけどEV自体はやらない。なぜならモーターの最大の顧客である自動車会社と競合するからということだと思います。

川西 それはサプライヤーさんとしての立場だと思うのですけど、これまでもわれわれのスマートフォンのビジネスでいえば、最終的なお客さんに提供する商品を造っていますし、そこに搭載されているイメージセンサーも部品として販売させていただいているので、そういう意味では同じようなことだと思いますね。最終形態の商品は車のモビリティーだと考えていますので、それをエンドユーザーさんにお届けするのがメインになります。

ありがとうございました。販売開始の折には、ぜひ1号ユーザーになりたいと思います。とても期待しています。

CES 2022でのソニーグループのプレスカンファレンスからC
ES 2022
でのソニーグループのプレスカンファレンスから

(出所:ソニーグループ) [画像のクリックで拡大表示]   

 

https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01911/00027/?P=2

(続く)